そこで、以下のような流れでこれまでご紹介してきました。
１月１７日（金）放送の「スペースシップ
アースの未来」（ＮＨＫ ＢＳ１テレビ）のテーマは「『客室維持装置』に異変あり」でした。
建築家、エンジニアでもあったアメリカの思想家、バックミンスター・フラーさんは地球を宇宙船地球号（Ｓｐａｃｅｓｈｉｐ
Ｅａｒｔｈ）と呼びました。
地球は宇宙を漂う一隻の船であり、私たち人類はこの船に乗り合わせた運命共同体だというのです。
そして、そこには以下のように３つの部屋があると、宇宙物理学の第一人者、千葉工業大学・惑星探査研究センターの松井 孝典博士は考えています。
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そこで、今回は水や大気といった生命に欠かせない環境を維持してきた客室維持装置が異常を来している状況についてご紹介します。
２０１３年１１月、フィリピンを襲った巨大台風（台風３０号）、最大瞬間風速は９０ｍ（時速約３２０ｋｍ）、観測史上最大となったこの台風で６０００人以上が死亡、大被害をもたらしました。
巨大台風の出現は地球温暖化が原因だと考えられています。
海が暖まり、台風のエネルギーとなる熱が大気へ大量に放出されるようになったからです。
海が暖かくなったことは、台風の巨大化だけでなく、様々な異常気象を引き起こしていると考えられています。
中でも注目されているのがアメリカやヨーロッパ、日本などで発生している大寒波です。
これまで比較的温暖だった場所で毎年のように異常な寒波が頻発するようになっています。
北極の大気が暖まったことがアメリカやヨーロッパで頻発している大寒波の原因ではないか、そう考える研究者がいます。
アメリカ海洋大気局のジェームズ・オーバーランド博士です。
４０年にわたって北極の海と大気について研究しています。
オーバーランドさんが北極上空の大気を過去に遡って調べたところ２０００年以降にある変化が起きていることが分かりました。
オーバーランドさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「北極の海が暖まり、北極上空の大気が暖かくなったことによって、そこに元々あった冷たい空気（気圧の低い部分）が周辺部へと移ってしまいました。」
「その結果、冷たい空気がこれまで暖かかった南の地方にまで押し寄せ、大寒波が起きるようになったのです。」
「北極の海がほんの少し暖まるだけで上空に大きな影響が出ます。」
「その結果、北極が暖まり周辺部が寒くなるという奇妙な現象が起きるのです。」
「これを”暖かい北極”、”冷たい大陸”と『呼んでいます。」
暖まる海がもたらす異常気象、地球温暖化が長年安定してきた気候システムを壊し始めているのです。
人類が引き起こした地球温暖化、そのきっかけは１８世紀の産業革命にあります。
エネルギー源として石炭を使うようになったことでＣＯ２が大気中に大量に排出されるようになったのです。
以来、少しずつ増えていったＣＯ２排出量は第二次世界大戦後の１９５０年代から急激に伸び始めました。
石油や天然ガスなど、人間が新たな化石燃料を使うようになり、排出量が止めどもなく増えていったからです。
環境問題の専門家、ヨルゲン・ランダース博士は、化石燃料を大量に消費する現代文明は自然環境の破壊を招くと長年警告し続けてきました。
ランダースさんは、１９７２年、世界的なシンクタンク「ローマクラブ」の求めに応じて他の専門家たちと共に２つの報告書を発表しました。
「成長の限界」です。
科学的なデータに基づいて地球の未来を予測したこの本で、ランダースさんたちはＣＯ２の排出量が急激に増えていることをいち早く指摘しました。
ちなみに、私は大学時代に社会学の授業で「成長の限界」を読んだ覚えがあります。
でもその当時は、ほとんどこうした問題に関心が無く、遠い将来のこととして危機感も感じませんでした。
今になって、その分とても強い関心を持っているところです。
ランダースさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「『成長の限界』で訴えることは、この小さな地球で人口が増え続けることによって環境への負荷も増していくということでした。」
「当時のペースで人口が増加し、経済成長を続けた場合、大量のＣＯ２が排出され、２１世紀には深刻な問題を抱えるようになると警告したのです。」
「あれから４０年が経ち、私たちはあの本で予測したとおりの未来を迎えています。」
「右肩上がりで続いた経済成長は大量のＣＯ２の排出を招き、今や異常気象を引き起こすほどです。」
「あの時、すぐに対策を打たなければならないと訴えたのに誰も耳を傾けませんでした。」
「それが今の事態を引き起こしているのです。」
ランダースさんが警告を発した後も便利で快適な暮らしを追い求める人間たちによってＣＯ２の排出量は増え続けました。
その結果、産業革命前と比べるとＣＯ２排出量はおよそ３０００倍に膨れあがりました。
いかにＣＯ２排出量を削減するか、１９９２年にブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催されて以来、国際社会はその削減を目指して話し合ってきました。
ところが、国同士の利害が対立し、２０年以上経った今も合意に至っていません。
ランダースさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「私たちは問題を先送りし過ぎてきました。」
「たとえ今ＣＯ２排出量の削減を始めたとしても２０５０年の地球の平均気温は今よりも１℃以上上昇してしまいます。」
「問題はこの状態を解決する方法が分かっていながら行動する意志を持てないことにあります。」
「私たちのスペースシップ
アースのために歩調を合わせることが出来ないのです。」
「目先の利益にばかり目を向け、長期的な視点を欠いてしまったことが地球の未来を危うくしているのです。」
「地球の環境は既に持続不可能な領域に入っています。」
「これ以上問題の先送りをすることは出来ません。」
スペースシップ
アースに乗っている人間の数は産業革命以降増え続け、今や７０億人を超えています。
そして、今も人々の消費への欲望は膨らみ続けています。
その結果、燃料タンクにある化石燃料は猛烈な勢いで減っています。
人間の後先を考えない行動が客室維持装置を破壊しているのです。
地球温暖化は気温を上昇させ、何千年もの間安定していた気候システムを壊してしまいます。
そして今、温暖化によって誰も想定していなかった新たな事態が起き始めています。
科学者の中には、生物の大破滅につながると警告する人もいます。
地球環境を破壊したことで私たち人間にはどんな未来が待っているのでしょうか。
私たち人間の多くは、どうしても未来の人類のために、というよりも眼前の暮らしや経済を優先してしまいがちです。
でも、ランダースさんは、地球の環境は既に持続不可能な領域に入っており、これ以上問題の先送りをすることは出来ないとおっしゃっています。
ですから、今からでも本腰を入れて地球温暖化対策に取り組まないと本当に取り返しの事態を迎えることになってしまうのです。
そのためには、国の指導者にばかり頼らず、志を高く持つ人たちが率先してそれぞれの立場で行動に移すことが求められるのです。
利害関係のある複雑な国際社会において、地球温暖化問題の解決を各国の指導者にばかり頼るには無理があることを今までの取り組みが示しているのですから。
