2014年03月02日
No.2700 ちょっと一休み その426 『宇宙船地球号 その7 原発の抱える事故リスク、そして核廃棄物の処分問題!』
昨年11月29日(金)から今年1月24日(金)まで4回にわたって「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)が放送されました。
そこで、以下のような流れでこれまでご紹介してきました。
 
今回は、「燃料タンクは枯渇する」というテーマの昨年12月6日(金)放送の「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)から、原発の抱える事故リスク、そして核廃棄物の処分問題についてご紹介します。
 
環境を破壊し、人類の生活を脅かしかねないシェール開発、世界が期待するだけの供給が見込めない可能性もあるのです。
いずれは枯渇する化石燃料に代わって人類が大きな期待を寄せてきたエネルギー、原子力、その原子力も供給が途絶える事態が起こりました。
2011年3月に起こった福島第一原発事故です。
化石燃料と違いCO2を出さずにコストも安定していたはずの原子力発電、その巨大エネルギーを使うことがいかにリスクが高いことなのかを世界に露呈しました。
 
福島第一原発事故の後、40年以上にわたってエネルギー問題を多角的に分析してきた、ケンブリッジ・エネルギー研究所のダニエル・ヤーギン博士は考え続けてきました。
そして今、原子力という巨大エネルギーの存在意義そのものが問われているといいます。
 
ヤーギンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「原子力の復権と呼ばれた原子力ルネサンスは原子力パッチワークの時代に変わったのです。」
「開発を進める国と廃止する国が混在した状況にある数年前に世界が原子力に抱いた熱意はしぼんでいます。」
「フクシマの事故は原発のエネルギー供給システムがいかにリスクが多く、脆弱であるかを世界中にまざまざと見せつけました。」
「今後、原子力がクリーンな巨大エネルギー源としてこれまで通りの役目を担うことはあり得ないでしょう。」
 
原子力発電に頼る国と頼らない国が混在する原子力パッチワークの時代、原子力を使い続けるにはもう一つ普遍的な問題が残されています。
原発の稼働に伴って発生する高レベル放射性廃棄物をいかに処分するか、いわゆる核のゴミ問題です。
北欧、フィンランド、現在地球上で唯一最終処分場の建設が具体的に進行しています。
国内の核廃棄物を地下420mに埋める計画です。
運用開始は2020年を予定、放射性廃棄物の害が無くなるまで10万年にわたって貯蔵し続けなければなりません。
 
世界最大の原発大国、アメリカでは2009年、それまで進められていた最終処分場の計画が見直されました。
最終処分場の建設計画は撤回、1980年代、アメリカ政府は最終処分場の建設予定地をネバダ州のユッカマウンテンに決めていました。
日本円でおよそ1兆円をかけ、工事を半分程度進めたうえでの撤回でした。
現在、全米各地に留め置かれている使用済み核燃料はおよそ7万トン、これはフィンランドで埋める予定量の約6倍に相当します。
 
最終処分場の建設計画が撤回された際にアメリカの原子力規制委員会の委員長だったのはグレゴリー・ヤツコさんでした。 
なぜ撤回に至ったのか、当時の真相について、ヤツコさんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「核廃棄物の最終処分場問題は解決されずに残っています。」
「地下に埋めるという方法は多くのリスクを含んでいます。」
「一定期間を超えると、浸水したりコンテナが不足したり、最終的には燃料が漏れ出して地下水を汚染することは十分にあり得ます。」
「それを地上でモニターしていれば異変に気が付きますが、完全に埋めて人間社会から隔離すれば汚染の実態が分からなくなってしまうことだって考えられるのです。」
「現存の技術では本当に核のゴミを最終処分出来るのか非常に難しい問題だと思います。」
 
「最新のコンピューターを使い、ユッカマウンテンに雨が降って何十万年かけて浸透したらどうなるかを再検討しました。」
「計画当初よりも多くの雨が施設内に浸透していくことがわかりました。」
「更にもう一つ、ネバダ州知事も議会も地域住民との信頼関係を築くことを怠っていました。」
「深い議論をおろそかにして地域の同意を得ない見切り発車だったのです。」
「にもかかわらず、そこに何十億ドルも費やし、何十年も継続していました。」
「国家プロジェクトの観点から厳しく見れば、完全に失敗したプロセスですね。」
 
オバマ政権は地下水が汚染される可能性があるとしてユッカマウンテンの最終処分場計画を白紙に戻しました。
それでも政府は2030年に国内電力の20%を原発に依存する方針です。 (アメリカ・エネルギー省 2012年)
アメリカで稼働する原発は100基(2013年11月現在)、2012年2月には34年ぶりとなる新たな原発の建設を決定しました。
今後も核のゴミは毎年2000トンずつ増え続けるとアメリカのエネルギー省では見込んでいます。
 
日本だけでなく、アメリカでも核廃棄物問題は先送りのようです。
それでもアメリカでは今後とも新たに原発を建設し、核のゴミは増えるばかりです。
その根底に流れているのは、現世を生きている人たちの暮らしの維持、更なる豊かさ、そして経済優先です。
ですから、”脱原発”や”脱化石燃料”による持続可能な社会の実現には、原発や化石燃料と比べて明らかに低コストの再生可能エネルギーの開発・実用化の道しか残されていないのです。

 
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