2014年02月23日
No.2694 ちょっと一休み その425 『宇宙船地球号 その6 アメリカで進むシェール革命の落とし穴!』
昨年11月29日(金)から今年1月24日(金)まで4回にわたって「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)が放送されました。
そこで、以下のような流れでこれまでご紹介してきました。
 
今回は、「燃料タンクは枯渇する」というテーマの昨年12月6日(金)放送の「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)から、アメリカで進むシェール革命の落とし穴についてご紹介します。
 
同じ船に乗り合わせた人類がエネルギーを求めて争い合うスペースシップ アース、新たに手にしたエネルギーも大きな問題が浮上します。
非在来型エネルギーの革命とまで言われるアメリカのシェール開発に思わぬ落とし穴がありました。
 
2013年6月、全米を揺るがす衝撃的な報告書が発表されたのです。
アメリカ有数の学術機関、アメリカ科学アカデミーでの最新の研究によると、シェール開発に欠かせない水圧破砕法によって飲料水汚染の可能性が極めて高いというのです。
この研究を指揮するのはノースカロライナ州のデューク大学・生物学部のロバート・ジャクソン教授です。
シェールガス掘削現場の周辺住宅の井戸水、140ヶ所以上で水質検査を行いました。
ジャクソンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「我々が分析したマーセラスというシェール層の上にある井戸水は汚染されていました。」
「メタン、エタン、プロパンなどが検出され、掘削現場から周囲1km以内では特に高濃度です。」
 
井戸水は通常に比べてメタン濃度が6倍、エタンに関しては23倍にも昇ります。
環境汚染が懸念されるマーセラス・シェール、その上に広がる大地、酪農が盛んなペンシルベニア州サスカハナ郡、民間業者によるシェールガスの掘削が始まったのは2006年のことです。
掘削現場から800m先に暮らすマニングさん夫婦のお宅では、親の代から90年近く使ってきた生活用の井戸水はもう飲むことが出来ません。
井戸からくみ上げた水にはガスが混入しており、火を近づけると炎が上がります。
 
マニングさん夫婦が井戸の異変に気付いたのは2011年のことです。
マニングさん夫婦は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
12月6日に水が変色していることに気がついたわ。」
「水に空気が混じっていると思ったらそれはガスだった。」
「調査員が濃度を測ったら、高レベルのガスが蛇口から出ていたよ。」
「プロパンだから爆発の危険があるの。」
「蛇口の近くでレンジを使っていたら吹っ飛んでいたよ。」
 
マニングさん夫婦はこの実態をシェールガス開発会社に報告、猛烈に抗議しました。
ところが、会社側は水圧破砕による水の汚染を認めませんでした。
代わりに、掘削現場周辺の3世帯に給水タンクを設置、水は無償で提供することを約束しました。
 
夫のマニングさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「それでも開発会社は自分たちの行為じゃないって言うんだ。」
「昔は本当に「きれいな水だった。」
「開発会社は絶対に非を認めないんだ。」
 
納得のいかない住民たちはペンシルベニア州に調査を依頼しました。
そして、2013年4月、環境保護局の調査報告書により州が出した結論はガスの採掘と井戸水との因果関係は認められないというものでした。
 
シェール開発をめぐるトラブルは今アメリカ各地に広がっています。
水圧破砕と環境汚染の関係性をジャクソンさんは次のように分析しています。
「水圧破砕によって採取したシェールガスやオイルは地中奥深くから鉄製のチューブを通って地表へ出てきます。」
「このチューブは何本もつなぎ合わせているためにつなぎ方がずさんだとそこからガスが地層に漏れ出す可能性が高い。」
「また、チューブ自体が古くて腐食している場合も同様です。」
「更に、通常は井戸へ通じる帯水層を守るためにチューブと地層の間をセメントで固めることが決まりです。」
「そのセメントがうまく密閉されていない場合、ガスが漏れて飲料水に溶け込む可能性が高いわけです。」
 
更に、ジャクソンさんはずさんな採掘作業の背景に天然ガスの価格破壊があるといいます。
2008年に比べ、アメリカの天然ガス価格は4分の1、少しでも安く掘らなければガス開発会社は利益を確保出来ないのです。
「低価格競争は、利益を追求する開発会社に強くプレッシャーを与えます。」
「その結果、手抜き作業によってコストを節約しようとする企業が出てきます。」
「あるいは、一つの油田を採掘し終えたらすぐ次の油田に移動、という具合に時間のプレッシャーも企業には重くのしかかります。」
「つまり、コストと時間の節約、これが環境に悪影響を及ぼしているのです。」
 
なお、先日の報道によれば、シェールガス開発には当初の見込みよりもコストがかかるので開発にブレーキがかかるかもしれないといいます。
また、今回お伝えしたように、飲料水への影響や今後の更なる開発により地盤沈下などが起こる可能性も否定出来ません。
ですから、何度も繰り返しお伝えしているように、一刻も早安定供給が出来、安全で低コストのく再生可能エネルギーへのシフトが必要なのです。

 
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