今回は宇宙船地球号の構造についてご紹介します。
アメリカの思想家は地球を宇宙船地球号（Ｓｐａｃｅｓｈｉｐ Ｅａｒｔｈ）と呼びました。
地球は宇宙を漂う一隻の船であり、私たち人類はこの船に乗り合わせた運命共同体だというのです。
でも、私たちは日々の暮らしの中でそこまで意識していません、
このままの時間が続くような気がするからです。
その結果、地球温暖化や資源の枯渇など地球は人類の存在を脅かす問題を抱えるようになりました。
さて、宇宙空間から地球を見つめる宇宙船地球号という考え方は１９６０年代に広まりました。
建築家、エンジニアでもあったアメリカの思想家、バックミンスター・フラーによるものです。
この時代は米ソ冷戦の真っ只中、世界は東西２つに分断され、対立を深めていました。
両陣営は核兵器開発競争を加速させ、東西冷戦の緊張は核戦争寸前にまで達しました。
地球をも壊しかねない力を人間が持ったこの時代に宇宙船地球号という考え方は生まれたのです。
フラーさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「人類は今転換の時期を迎えています。」
「未来は予測不能でどこへ向かっているのかも分かりません。」
「人類は長い間一つの宇宙船で暮らしていることに気づかずにいました。」
「しかし、この船に乗り合わせた仲間だと分かれば意識は変わるはずです。」
フラーさんの考え方に今また注目する科学者がいます。
宇宙物理学の第一人者、千葉工業大学・惑星探査研究センターの松井 孝典博士です。
松井さんがフラーさんの考え方を知ってから４５年、今あらためて地球を俯瞰して見つめ直す必要があると感じています。
きっかけとなったのは東日本大震災でした。
津波によって引き起こされた原子力発電所の事故は首都圏への電力供給を直撃、電力を大量に消費する暮らしの危うさが浮き彫りとなりました。
ところが今、私たちはエネルギーを大量に消費する暮らしに戻ろうとしています。
松井さんは今こそ震災の経験と向き合い、未来について考えるべきだと言います。
未来について考えるに際し、松井さんは独自の宇宙船地球号像を描き出しました。
そこには以下の３つの部屋があります。
�／祐屬�暮らす客室
��客室維持装置
客室の暮らしに欠かせない水、大気、生物が存在する場所
�Ｇ確船織鵐�
石炭や石油などが貯蔵されている場所
約１万年前、狩猟採集をしていた人間が農耕を開始、森を伐採して畑に変えるなど、自然に手を加えるようになったのが客室誕生の瞬間で、人間は自然の循環システムから独立した存在となりました。
そして、１８世紀後半、客室は産業革命をきっかけに一気に膨張を開始しました。
石炭を使った蒸気機関の発明により、より速くより多くの物資を手に入れることが出来るようになったのです。
この時、客室に新たな部屋、機関室が出来ました。
それまで機関室に相当するものは地球や太陽が持っていました。
機関室とは燃料タンクから石炭や石油を取り出し、エネルギーに変える装置です。
人間は化石燃料を使うことによって思うがままに快適さを追求出来るようになったのです。
宇宙船地球号の客室は、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの先進国によって膨張を続けてきました。
２１世紀、ここに中国、インド、ブラジルなどの新興国が加わり、その膨張は加速しています。
このように宇宙船地球号、そしてそこには３つの部屋があるという考え方は、今地球の置かれている問題を考えるうえでとても分かり易い考え方だと思います。
このままの状態で新興国や途上国での経済成長、都市化が進めば、世界規模でのエネルギーの消費が加速化し、間違いなく地球環境は破滅されてしまいます。
ちなみに、２００８年、都市に暮らす人は世界人口の半分を超えたといいます。
また、メガシティと呼ばれる人口１０００万人以上の巨大都市が誕生しています。
その数は２３に昇り、２０２５年までには３７ヶ所にまで増えると見込まれています。
だからと言って、先進国は新興国や途上国での経済成長を止めることは出来ません。
というよりも自らの更なる経済成長のために先進国は新興国や途上国での経済成長の手助けをしようとしています。
だからこそ、資源小国、技術大国である日本には是非持続可能な社会を目指し、先頭を切って突き進んでいただきたいと思います。
そして、２０２０年開催の東京オリンピックではその成果を世界に向けて発信して欲しいと思います。
