2014年03月09日
No.2706 ちょっと一休み その427 『宇宙船地球号 その8 求められるエネルギーの多様性と省エネ!』
昨年11月29日(金)から今年1月24日(金)まで4回にわたって「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)が放送されました。
そこで、以下のような流れでこれまでご紹介してきました。

No.2700 ちょっと一休み その426 『宇宙船地球号 その7 原発の抱える事故リスク、そして核廃棄物の処分問題!』

今回は、「燃料タンクは枯渇する」というテーマの昨年12月6日(金)放送の「スペースシップ アースの未来」(NHK BS1テレビ)から、求められるエネルギーの多様性と省エネについてご紹介します。

今までお伝えしてきたように、化石燃料には枯渇問題、そして原発には事故リスク、あるいは核廃棄物の処分問題があります。
ですから化石燃料にも原発にも今後これまで通り頼ることは出来ません。
ところが人類は欲望のままにエネルギー消費を拡大し続けています。

今、かつてない危機に直面する人類、人類が築き上げてきたこの文明は成り立たなくなってしまうのでしょうか。
40年以上にわたってエネルギー問題を多角的に分析してきた、ケンブリッジ・エネルギー研究所のダニエル・ヤーギン博士は番組の中で次のようにおっしゃっています。
「需要ショックが始まっています。」
「中国やインドなどに見られる新興国の経済成長が加速化、それに伴い地球のエネルギー需要が急上昇しているのです。」
「従来の予想を完全に覆すペースです。」
「この危機を乗り越えるにはエネルギー資源を増やすこと、エネルギーの多様化が不可欠です。」
「今こそ変革の時なのです。」

オランダのハーグに本社を置く国際石油資本、ロヤル・ダッチ・シェルは100年以上にわたり世界各地の石油を開拓、供給してきました。
その巨大資本が今エネルギー源の多様化に向けて動き出しています。
増え続ける需要に石油だけでは応えきれないと、より地球環境に優しいとされる化石燃料、天然ガスの生産に力を入れています。
マーティン・べツェラー上級副社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「石油は今後も必要とされていくと思います。」
「ただ、環境への影響と残りの埋蔵量のことを考えると今ほど有利な立場ではいられないでしょう。」
「熟慮の結果、天然ガスが最適なエネルギーだと私たちは見ています。」
「埋蔵量が豊富でCO2の排出量が少ないからです。」
「エネルギー需要が高まる中、新しい天然ガス採掘システムを開発し、この先数十年間にわたって供給していきます。」

開発しているのは、海底ガス田をターゲットにした世界初の浮体式天然ガス液化施設です。
従来では採算が合わず、開発が困難だった遠洋のガス田へこの施設を配置します。
採掘した天然ガスは洋上で直接液化してタンカーに供給、未開拓だった海底のガス田を開発しようとしています。
ガス採掘の技術革新に力を入れる国際石油資本、そのガス生産量は石油の生産量に匹敵するまでになっています。

更に、この国際石油資本では天然ガスへの期待が世界で高まらなかった場合に備えて、別の選択肢も検討しています。
これはより長期的視野に立った未来のシナリオです。
昨年発表された「オーシャン」と名付けられたシナリオです。
天然ガスの生産量が予想したほど伸びない世界を描いています。
世界は別のエネルギー源を求め、再生可能エネルギーが台頭すると予測します。
太陽光発電や風力発電などCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。
現在は、発電コストも比較的高く、世界の電力総量に占める割合は4%足らずです。(IEA 国際エネルギー機関 2012年 水力発電は除く)

ジェレミー・ベンサム副社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「技術革新が進んでいけば、再生可能エネルギーのコストをどんどん下げていくと思っています。」
「例えば、2030年までには太陽光発電にかかるコストが現在の半分、場合によっては3分の1くらいになるかもしれません。」
「再生可能エネルギーは未来のエネルギーを構成するうえで極めて重要なものなのです。」
「風力、太陽光、そしてバイオ燃料には大いに期待を寄せています。」

エネルギー多様化に舵を切った国際石油資本、その技術開発はバイオ燃料の分野にも及んでいます。
サトウキビの茎や葉、稲わら、廃材などこれまでは捨てられてきた植物原料です。
これらのバイオ燃料は比較的安く、簡単に精製出来ます。
1970年代のオイルショック以降、ブラジルやアメリカなどで開発が進みました。
自動車や航空機の燃料としても需要は拡大します。
反面、エネルギーとして使われる分の作物が食料に回されなくなってしまうと批判されていました。
そこで、捨てられてきた植物原料から安く大量にバイオ燃料を生産することは出来ないのか、この国際石油資本では化石燃料に代わるエネルギーを一つでも多く開発しようと模索を続けています。

今こそ変革の時だと説くヤーギン博士、私たち人類はエネルギーの供給についてだけ考えるのではなく、その使い方にも意識改革が必要だと訴えます。
「私たちはスペースシップ アースという宇宙船に乗り合わせています。」
「燃料タンクはいつ枯渇するか分かりません。」
「将来のエネルギー需要は今後増々高まっていくことでしょう。」
「供給を続けるためにはエネルギー源を多様化する戦略が必要不可欠です。」
「そして、私はもう一つ人々があまり話題にしない大切なエネルギー源があると思っています。」
「それは”もったいない”という日本の考え方です。」
「これはスペースシップ アースを未来へ前進させるためのエネルギーを生み出す人類全体で共有すべき考え方だと思っています。」

前回、、”脱原発”や”脱化石燃料”による持続可能な社会の実現には、原発や化石燃料と比べて明らかに低コストの再生可能エネルギーの開発・実用化の道しかないとお伝えしましたが、今すぐというわけにはいきません。
ですから、ヤーギン博士のおっしゃるように、あるいは既に国際石油資本、ロヤル・ダッチ・シェルが取り組まれているように過渡的にはエネルギーの多様性とより一層の省エネが求められるのです。
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