2022年05月11日
アイデアよもやま話 No.5265 味を吹き付ける“調味家電”!
前回は豆腐の新たな食べ方を提供する商品「TOFU BAR」についてご紹介しましたが、その一方で食べ物の味そのものにおける根源的な取り組みが進められております。
1月25日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で味を吹き付ける“調味家電”について取り上げていたのでご紹介します。 

明治大学 総合数理学部の宮下芳明教授が用意したのは味がついていない白米のおにぎり、マシンに載せると、何かが吹き付けられます。
そのおにぎりを食べてみると、梅干し味がします。
何が起こったのか、中を覗くと食塩水やクエン酸水、砂糖水など、人間の舌で感じられる複数の味が液体になって入っていました。
実は、事前に食べ物の味をセンサーで数値化していて、それをもとに液体を調合することで味が再現出来るといいます。
例えば、豆腐に辛みや塩味、うま味の液体をブレンドし、吹きかければ、四川風の麻婆豆腐の感じがするといいます。

宮下教授は今後、食べ物に写真を印刷するフードプリンターを使って、見た目を本物に近づけたり、香りを加えたりすることで、再現性をより高めていきたいと話していました。
将来的には味に関する情報をデータ化し、レストランなどの味を各家庭に配信したいといいます。
宮下教授は次のようにおっしゃっています。
「映像をダウンロードして見る、音楽をダウンロードして聴く時代と同じで、味や食べ物もダウンロードして食べる、味わうという時代はもう来ると思います。」

味の再現性はかなり高いのですが、見た目や香りが全く別物なのでちょっと不思議な感覚だといいますが、そこをフードプリンターなどを使って補えるようになれば、もっと再現性が高くなっていくと思われます。
将来的に、自宅で世界中の絶品を楽しめる日が来るかもしれませんし、アレルギーのある方はアレルギー性の食べ物を食べなくても味を楽しめる日が来るかもしれません。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今回ご紹介した“調味家電”について、その特徴を以下にまとめてみました。
・事前に複数の食べ物の味をセンサーで数値化して、それらをもとに液体を調合して吹きかけることで味が再現出来ること
・開発した宮下教授は、今後、食べ物に写真を印刷するフードプリンターを使って、見た目を本物に近づけたり、香りを加えたりすることで、再現性をより高めていきたいと考えていること
・更に宮下教授は将来的には味に関する情報をデータ化し、レストランなどの味を各家庭に配信したいと考えていること

なお、これまで以下のようにどんな味でも忠実に再現出来る“味覚センサー”についてお伝えしてきました。

アイデアよもやま話 No.2798 人を幸せにする味覚センサー!

アイデアよもやま話 No.3735 “味覚センサー”で食の未来を変える その1 食品メーカーの間で急速に普及する“味覚センサー”!

アイデアよもやま話 No.3736 “味覚センサー”で食の未来を変える その2 “味覚センサー”の開発秘話と食の未来を切り拓く可能性!

今回ご紹介した“調味家電”の技術はこの“味覚センサー”の進化版と言えます。
また、宮下教授が指摘されているようにセンサーにより味をデジタル化することにより、音楽や動画をダウンロードするように、どんな高級レストランの料理もオリジナルの味をデータ化さえすれば、限りなくその味を再現出来てしまう時代がしばらくすればやってくるのです。
更に、こうした技術は既存の味の再現のみならず、これまでにない全く新しい味の開拓にも活用出来ます。
ちなみに、これまでアイデアよもやま話 No.4521 広がる代替肉のマーケット!などで代替肉についてお伝えしてきましたが、これまでの製造方法とは全く違うプロセスで代替肉を製造することが可能になります。
また、アイデアよもやま話 No.4264 ”カニカマ”の本物にない4つの健康パワー!でお伝えしたように本物の魚介類に似せて、しかも本物以上に栄養価のある食品を新たに作り出すことも可能になるのです。

なお、こうした味の開拓と並行して、香りや見た目の再現、あるいは新たな開拓も求められるようになります。
なぜならば、食を存分に楽しむうえで、味、香り、見た目の3つの要素の適切な組み合わせが必須だからです。
更にこうした基本的な考え方は食のみならず、ドリンク商品についても適用出来ます。
こうした取り組みは飲食産業にとって画期的なことで、まさに“飲食革命”と言えます。
また飲食におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とも言えます。
こうなると、飲食業界における知的財産権保護の問題が浮き彫りになってきます。
いくら革新的な食品やドリンクの味を開拓してもすぐに他社に真似されてしまうからです。
このようにいろいろな課題を抱えながらも、飲食におけるDXへの取り組みは今後急速に進むと思われます。

 
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