2021年04月10日
プロジェクト管理と日常生活 No.688 『オーストラリアへの経済制裁に見る中国の脅威とその対応策!』

No.4908 ちょっと一休み その766 『中国経済の光と影!』で中国の強大なパワーに対してアメリカ以外の国は個別で対抗することは出来ず、中国に従わざるを得なくなってしまうと伝えしました。

そうした中、オーストラリアがまさにそうした状況に追い込まれていることについて「ワールドビジネスサテライト(テレビ東京)の4番組で取り上げていたのでご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

(昨年11月17日(火)放送分より)

 

オーストラリアのモリソン首相は帰国後に2週間の隔離生活になるにも係らず、菅総理との会談のためにあえて来日しました。(昨年11月17日、18日の両日)

こうした状況について、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「それだけ中国から受けている圧力が強いということの裏返しでもあるんですね。」

「まずこのグラフ(添付参照)を見ていただきたいんですけど、これは「中国を好意的に感じない」人の割合なんですけども、一番右の紫色がオーストラリアなんですけど、年々高まってきています。」

「一番左のオレンジ色が日本なんですけども、ほぼ同じところまで来ているんですね。」

「なぜこれほど好意的に感じない人が増えたか、その背景にあるのが今年春なんですけど、モリソン首相がコロナに関してその発生源を解明する独立調査が必要だとかなり強調したんです。」

「で、それを受けて、中国側は様々なオーストラリアの商品(食肉、大麦、石炭など)を買わないぞと言って圧力を続けている最中なんです。」(参照:アイデアよもやま話 No.4780 中国・武漢で今起きていること!

「(その分、オーストラリアは日本との関係を強化したいということなのかという問いに対して、)アメリカと日本ですね。」

「安全保障でも経済でも関係を強化したい。」

「ただ、アメリカは現在大統領選が確定していませんから、まずは日本に駆けつけたということです。」

 

(昨年11月27日(金)放送分より)

 

中国は関係が悪化しているオーストラリアの農産物などを対象に事実上の輸入制限を次々と打ち出しています。

新たに標的としたのはオーストラリア産のワインです。

中国政府は今日、オーストラリアから輸入しているワインが不当に安く販売されているとして、制裁措置を発表しました。

明日から輸入業者に一定の補償金を納めさせるとしています。

オーストラリアにとって、中国は最大の貿易相手国ですが、オーストラリアが香港問題や中国の海洋進出を巡る問題でアメリカと足並みをそろえて批判的な態度を取っていることに中国は反発していて、今回の措置で圧力を強めたかたちです。

 

発表を受けてオーストラリア政府は、「中国の主張には根拠や証拠がない 深刻な懸念をもたらす動きで、精力的に戦っていく」との声明を発表しました。

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「経済を使った圧力を加えることで、“エコノミック・ステイトクラフト”というわけですよね。」

「まさにパンダの国からのオーストラリアへの圧迫ですから、“パンダミックス”そのものですね。」

 

「日本にとってもう一つの要素があるんですね。」

「12月1日に施行される法律、輸出管理法なんですけども、例えば中国から部品を輸入して日本で製品を作って輸出する場合に、この法律によると中国の許可が必要になってくるんじゃないかと、そういう法律なんですね。」

「(中国製の部品を使っている製品はかなり多岐にわたっているが、)電気(家電)、自動車といった主力製品は相当影響を被ると思いますよ。」

「(こうした中国の動きに対して、日本政府は何か中国に対して訴えかけをしているのかという問いに対して、)この法律の草案は2017年なんですけども、経済団体を中心に「善処してくれ」とかなり言っていたのですが、中国はまさに馬耳東風の感じなんですよね。」

「で、冗談ではなく、日本政府も企業と一緒になって二人三脚で言うべきことは言ってもらいたいと思います。」

 

(昨年12月11日(金)放送分より)

 

中国商務省はオーストラリア産の輸入ワインに対し、臨時の相殺関税を課すと発表しました。

中国は先月にもオーストラリア産ワインへの反ダンピング(不当廉売)措置を打ち出していて、通商面で更に圧力を強めたかたちです。

相次ぐ制裁関税には新型コロナウイルスの発生源調査を巡り、対立を深めるオーストラリア政府をけん制する狙いがあると見られています。

 

(昨年12月16日(水)放送分より) 

 

オーストラリアは中国がオーストラリアの大麦に80%の高い関税を課し、輸入を制限したのは不当だとWTO(世界貿易機関)に提訴しました。

中国は、オーストラリアが新型コロナウィルスの発生源を巡って独立捜査を要求したことに反発し、大麦の他にもワインや牛肉などの輸入を制限していて、オーストラリアは追加の提訴も示唆しています。

 

以上、4つの番組の内容をご紹介してきました。

 

まず以下にこれらの番組の内容をまとめて整理してみました。

・昨年の春にオーストラリアのモリソン首相はコロナに関してその発生源を解明する独立調査が必要だとかなり強調したが、それを受けて、中国側は様々なオーストラリアの商品を買わないと圧力を続けてきた。

・昨年11月27日、中国政府はオーストラリアから輸入しているワインが不当に安く販売されているとして、制裁措置を発表したが、その具体的な内容は昨年11月28日から輸入業者に一定の補償金を納めさせることだという。

・オーストラリアにとって、中国は最大の貿易相手国だが、オーストラリアが香港問題や中国の海洋進出を巡る問題でアメリカと足並みをそろえて批判的な態度を取っていることに中国は反発していて、今回の措置で圧力を強めたかたちである。

・発表を受けてオーストラリア政府は、「中国の主張には根拠や証拠がない 深刻な懸念をもたらす動きで、精力的に戦っていく」との声明を発表した。

・オーストラリアは中国がオーストラリアの大麦に80%の高い関税を課し、輸入を制限したのは不当だとWTOに提訴した。

・中国は、オーストラリアが新型コロナウィルスの発生源を巡って独立捜査を要求したことに反発し、大麦の他にもワインや牛肉などの輸入を制限していて、オーストラリアは追加の提訴も示唆している。

・昨年12月1日に施行された輸出管理法は、中国から(特定の)部品を輸入して日本で製品を作って輸出する場合に、この法律によると中国の許可が必要になるという法律である。

 

なお、中国の輸出管理法による日本企業への影響について、昨年12月3日(木)付けネット記事(こちらを参照)ではより詳細に取り上げていました。

ここでは、その狙いについてのみご紹介します。

 

その狙いは、アメリカによるファーウェイへの制裁に対する反撃であるといいます。

なお、半導体などの戦略物資の輸入について、各国が規制の強化を急ぐ背景にはAI(人工知能)などの高度な技術が軍事転用されるなど安全保障上の懸念があるためだとしています。

 

また、2月26日付けネットニュース(こちらを参照)では中国による台湾産パイナップル輸入停止について取り上げていたので、その内容の一部を以下にまとめてみました。

・中国税関総署は2月26日、台湾産パイナップルの輸入を3月1日から停止すると発表した。2020年以降、何度か有害生物が見つかったためと説明している。

・中国は台湾産パイナップルの主要な輸出先(全輸出の約9割)で、禁輸措置は台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)政権への揺さぶりとの見方もある。

 

また、2月18日付けネットニュース(こちらを参照)では「クワッド」会議について取り上げていますので、その内容の一部を以下にまとめてみました。

・会議はクアッド(QUAD)と呼ばれる4カ国(アメリカ、日本、オーストラリア、インド)の協力体制の一環として開かれる。

・クアッドは、中国の軍事・経済的影響力拡大に対抗する非公式な枠組みである。

・クアッドは昨年10月、日本で対面方式による外相会議を開催。その翌月にインド東方のベンガル湾で合同の海上訓練を行った。

・アメリカは2月18日、フランス、ドイツ、英国の外相とも国際的な共通課題について電話会談を行うという。

 

さて、中国の覇権主義の世界的な展開、および人権侵害とそれへの対抗措置を講じるアメリカを軸とした自由主義陣営国との覇権争いという枠組みであらためて以下にまとめてみました。

・中国の覇権主義の世界的な展開

  南シナ海や東シナ海における海洋進出

一帯一路政策の推進

中国に批判的な態度を取る国に対する制裁措置

 オーストラリアの商品の輸入制限や高関税

台湾産パイナップルの輸入停止

アメリカの輸出管理規制への対抗措置

・中国による人権侵害

  香港の民主化運動や台湾の独立志向に対する強力な締め付け

  ウイグル族の弾圧

・自由主義陣営国による対抗措置

  アメリカによるファーウェイなどへの制裁

  アメリカによる輸出管理規制

  日米豪印のクワッドによる協力体制

  アメリアによる他の自由主義陣営国への協力の呼びかけ

 

なお、中国は経済的、軍事的にアメリカに追いつきつつある中で、覇権主義を振りかざし、その勢いが衰える様子は見えません。

そして、自国に不利な動きを見せた国に対してはピンポイントで制裁をしかけてきます。

ですから、日本においても今や中国は最大の貿易相手国ですから、中国により経済制裁を受けるようなことがあれば、その影響は無視出来ません。

また、以前にもお伝えしたように、いずれ香港や台湾との決着がつけば、その次は尖閣列島、更に沖縄まで中国は自国の領土にしようとするとも言われています。

 

ですから、日本は日米安保条約があるからといって、いざとなればアメリカが日本を守ってくれると安心してしまうのではなく、日本独自に自国の経済、および軍事安全保障について真剣に取り組むことがとても重要なのです。

そこで、専門家ではありませんが、私の考えるこうした経済的、および国家安全保障上のリスク対応策について、断片的にはこれまでプロジェクト管理と日常生活 No.680 『激しさを増す米中の経済覇権争いと軍事衝突リスクの回避策!』プロジェクト管理と日常生活 No.664 『覇権国家の横暴を許さない仕組み作りの必要性!』などで既にお伝えしてきました。

しかし、あらためて以下にまとめてみました。

・世界人権宣言やSDGsなど国連(国際連合)の取り決めを拠りどころに、様々な外交問題の是非を判断し、その結果を世界各国に訴えること

・日米安保条約やクワッドといった仕組みをベースに、単に自由主義陣営国という枠組みではなく、国連の取り決めを順守する国に協力を仰ぎ、中国のように国連の取り決めを無視して覇権主義にまい進する国に対してその非をあらためさせること

・オーストラリアや台湾のようにピンポイントで中国による制裁を受けた国に対しては、これらの国々が協力してその被害を最小限にするようにし、中国の制裁を無効にすること

・こうした仕組みを平和憲法を有する日本が世界各国に積極的に働きかけること

 

なお、日本だけが中国の覇権主義の非を訴えれば、経済的な制裁を受けてしまいますが、このようにより多くの国々が協力して国際的な取り組みの順守を訴え続けて中国に対抗すれば、さすがの中国も軌道修正せざるを得ないと思うのです。

ですから、是非菅総理はこうした考え方で日本独自の外交政策を展開していただきたいと思います。


添付)


DSCN9247.jpg

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています