2021年04月03日
プロジェクト管理と日常生活 No.687 『GoToトラベルで感染拡大!?』

昨年12月1日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でGoToトラベルにおける対応について取り上げていたので、プロジェクト管理の観点からご紹介します。

 

番組コメンテーターで東京大学教授の渡辺 安虎さんは次のようにおっしゃっています。

「コロナの感染をGoTo(トラベル)が広げているかどうかっていう話があると思うんですけど、これは水掛け論にしかならないっていう面があって、あえて書くと「データで政策の影響把握を」で、データがないので、GoToをせっかくこういうふうにやっているわけですから、政府が、本当は個々の利用者が何日にどこからどこに向かって使ってどこのホテルに泊まって、って集めようと思えば集められたわけですよね。」

「で、こういうデータの基盤をきちんと整えておけば、これと実際の感染状況のデータを照らし合わせて統計的に処理すれば、どういうかたちで影響が及んでいるか、きちんと把握出来たはずなんですよね。」

「で、GoToに関しては予算規模は1兆数千億円ですから、予算規模の0.1、0.05%ぐらい(5億円〜10億円)をそういうことに割いているだけで全然やれることが違って、もっと機動的な対応、「これは東京は止める、止めない」ってことはもっとはるかにきちんとデータに基づいて出来たと思うんですよね。」

「で、これやっておけば、次にも使えるわけですよね。」

「(他の政策でも同じではという指摘に対して、)そうですね。」

「持続化給付金とか、他の低額給付金についても、やっぱりこういう仕掛けがなかったので、じゃあ2回目どうするのかという時に1回目から学んでないわけですよね。」

「そこを学べるような仕組みにすると良いと思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

プロジェクト管理において、データに基づく定量的な管理はとても重要です。

そしてプロジェクト管理と日常生活 No.598 『選挙における定量的な評価の必要性』では政治の世界における事例についてお伝えしました。

また、プロジェクト管理と日常生活 No.633 『参考にすべき台湾の新型コロナウイルス対策』ではコロナ禍対策で素晴らしい成果を上げている台湾の事例についてお伝えしました。

 

渡辺教授は、コロナ禍における日本政府のGoToトラベル政策や持続化給付金の進め方について、まさに定量的な管理の重要性を訴えているのです。

しかし、未だに政府は個人情報管理などの観点からコロナ禍対策におけるデジタル化、すなわち定量的な管理への積極的な取り組みをしていない状況です。

ですから、政府は緊急事態宣言の解除をいつ実施するかにおいても、渡辺教授の指摘しているデータ管理からはかけ離れた不十分なデータの元で判断しているので、国民の理解が十分に得られない状態なのです。

 

こうした状態が続く限り、今後ともコロナ禍への政府のGoTo対策(イートやトラベル)には限界があります。

しかも、プロジェクト管理と日常生活 No.684 『日本政府におけるデジタル化の課題』でもお伝えしたように、新型コロナウイルス対策のスマホ向けの接触確認アプリ「COCOA」が感染症対策の切り札として導入されながら、実に4ヵ月余りもの間機能せず、放置されていたのです。

更にNo.4878 ちょっと一休み その761 『日本政府によるデジタル化政策の失われた20年』でもお伝えしたように、歴代政権のデジタル化の重要性に対する認識のレベルの低さがコロナ禍における被害を少なからず広げているのです。

まさに人災です。

渡辺教授が指摘されているように、安倍政権の時代にGoTo対策の予算の一部をデータに基づくコロナ禍対策に割いていれば、その後のコロナ禍対策はより的確で、国民の多くの理解を得られていたと思うのです。

 

なお、菅義偉首相は、就任当初、公約の一つとして「デジタル庁(仮称)」(こちらを参照)の創設を掲げ、今年9月1日の設置を目指しているといいます。

しかし、コロナ禍はいまだに国の総力を挙げて取り組むべき最重要問題なのです。

そして、その基本方針はデータに基づく管理であるべきなのです。

ということで、遅ればせながらですが、「デジタル庁」の開設から本格的にデジタル化政策に取り組むのではなく、コロナ禍対策のデジタル化を緊急に推し進めていただいたいと思います。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています