2024年01月08日
アイデアよもやま話 No.5785 台湾の総統選挙で求められる国連憲章の存在意義!
今週末の1月13日(土)に実施される台湾総統選挙について、以下のように報じられています。

蔡英文総統の後継として路線を引き継ぐ与党・民主進歩党(民進党)候補の頼清徳氏のほか、最大野党・国民党の侯友宜・新北市長や第3政党「台湾民衆党」の柯文哲・党主席が出馬を表明しています。

こうした中、昨年12月31日(日)付けネット記事(こちらを参照)で習近平国家主席による新年を迎えるにあたって恒例のテレビ演説について取り上げていたので内容の一部をご紹介します。 

・台湾に関し「祖国の統一は歴史的な必然だ」と述べた上で「(中台)両岸の同胞は手を携えて心を合わせ、民族復興という偉大な栄光を分かち合わなければならない」と訴えた。1月13日に行われる台湾の総統選を目前に控え、「統一」への決意を改めて表明した形だ。
・2024年に中国の建国から75年を迎えることに触れ、「中国式現代化を揺るがずに推し進めなければならない」と強調した。「中国式現代化」は習氏が唱える欧米とは異なる中国独自の発展モデル。習政権は、従来のように経済的な優位性を強調するだけではなく、独自の価値観を強く主張するようになっており、そうした動きが今後も続く見通しだ。
・習氏は、国際社会に対し「人類運命共同体の構築を推進し、ますます素晴らしい世界を作り上げたい」とも呼び掛けた。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

なお、「中国式現代化」については昨年6月23日付けネット記事(こちらを参照)での「中国式現代化とその世界的な意義」と題した九州日中平和友好会におけるスピーチの中で説明されていますが、内容の一部を添付1に記しました。
この内容の中には客観的に見て、一部には望ましい内容も含まれています。

また、「人類運命共同体」には添付2の通り、以下の5つの概念を含んでいます。
1.共同の発展と繁栄
2.平和と安定
3.共有の責任
4.多極化と多元的な発展
5.国際法とルールの尊重

この5つの概念はどれも国際社会があるべき普遍的な内容だと言えます。
しかし、実際に習近平政権が進めている以下のような政策は、5の「国際法とルールの尊重」1つ見ても「人類運命共同体」の概念に反しています。
・南シナ海や東シナ海での覇権主義的な行為
・香港での民主化運動への介入
・台湾統一に向けて軍事的な解決を辞さないこと
・一帯一路政策により、多くの開発途上国を“債務の罠”にはめていること

要するに中国は国連の常任理事国であるにも係わらず、自ら武力に訴えたり、人権無視といった行動を取り続けているのです。
要するにこれまで繰り返しお伝えしてきたように、習近平政権は“まず中国共産党ありき”、“目的達成のためには手段を選ばず”という基本方針をベースに「中国式現代化」、あるいは「人類運命共同体」といった概念を矛盾を承知の上で提示しているのです。
こうした矛盾は、中国共産党に都合の悪い情報を一切開示されていない中国の多くの国民には通用しても、少なくとも民主主義国の国民には通用しないのです。
ところが、習近平国家主席はこうした矛盾に満ちた概念を国際社会においても通用すると思い込んでいるのです。
この背景には今の国連がこうした中国の政策を野放しにしている国連の実情があります。(参照:アイデアよもやま話 No.5781 今の国連は”裸の王様”!?
そして、今週末に実施される台湾総統選挙についても、「台湾ボイス」(こちらを参照)で日米台関係研究所理事の林建良さんは次のように指摘されております。

(『五月天(Mayday)への政治的圧力』)
・台湾で一番の人気バンド『五月天(Mayday)』に対して、昨年5月に芸能活動だけではなく、“特別政治サービス”を行うよう圧力をかけた
 -あらゆる場面で「中国と台湾は一つだ、両岸は一つの家族なんだ、自分も中国人なんだ」といった内容の発言をするよう要望した
 -台湾の芸能人にとって、このような中国政府の要求を拒否するのは非常に難しいことである
 -なぜなら、中国政府に刃向かえば、数百億円にもなる中国市場を失うだけでなく、反スパイ法など中国の法律に接触する危険もあるからである
・五月天(Mayday)は中国政府の要求を拒否したが、中国政府は更に圧力をかけてきた
 -昨年11月16日に上海で行ったライブで口パク疑惑の噂を蔓延させ、中国政府系のメディアで口パクであると批判した
 -しかし、このバンドはそれでもなお要求を拒否し、対抗し続けた
 -台湾政府も調査し、この件は背後で中央宣伝部が指示したことが明らかになった
 -このことが明るみになり、台湾の政党は一斉に批判したが、中国国民党だけは批判しなかった
 -世界中にファンがいる五月天(Mayday)に今回不当な圧力をかけたことで、政治に無関心だった若者までもアンチ中国の感情が高まったと思われる

こうして見てくると、習近平国家主席は非常に優れた戦略家のようにも見えますが、中国以外の世界の人々の知識レベルを軽く見ているように思えます。
こうした習近平国家主席の横暴を阻止するうえで、更に国連憲章(参照:No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』)の存在意義を世界的に再認識させるうえで、今回の台湾の総統選挙は試金石と言えます。
もし、習近平政権寄りの候補者が当選するようなことになれば、習近平国家主席の目指す「中国式現代化」、および「人類運命共同体」への取り組みの更なる加速化が見込まれます。

なお、次のようなことが実現すれば、それは国連改革に向けた第一歩になると期待出来ます。(参照:アイデアよもやま話 No.5782 今こそ国連加盟国の国民は連帯して国連改革に向けて行動に移すべき!
・台湾で一番の人気バンド『五月天(Mayday)』に対して、芸能活動だけではなく、特別政治サービスを行うよう圧力をかけた中国政府に対して、世界中の『五月天(Mayday)』ファンが声を大にして、その非を訴える
・今週末の台湾の総統選挙において、国連憲章の意義の重要性、およびそれを「人類運命共同体」で認めている中国政府が矛盾に満ちた政策を展開しているという現実を有権者に訴える立候補者が当選すること


添付1)

「中国式現代化とその世界的な意義」と題した九州日中平和友好会におけるスピーチの一部


中国式現代化は、各国の現代化に共通する特徴を持つだけでなく、中国固有の特色もあります。中国式現代化は、人口規模の巨大な現代化であり、全人民が共に豊かになる「共同富裕」を目指す現代化であり、物質文明と精神文明のバランスがとれた現代化であり、人と自然が共生する、調和がとれた現代化であり、平和的発展の道を歩む現代化でもあります。

現代化の実現は「自国優先」のためではなく、自国の発展を実現するとともに、世界の平和にさらにポジティブエネルギーを注入し、世界の発展に新たな機会をもたらすことを目指しています。

 第一に、人口規模の巨大な現代化は、世界経済の回復により強力なエネルギーを注入するでしょう。

 第二に、全人民が共に豊かになる「共同富裕」を目指す現代化は、各国の共同発展により広い道を開くことでしょう。中国は全人民の共同繁栄を追求し、世界の人々と共に繁栄し、各国と共に発展することを望んでいます。「一帯一路」やグローバル発展イニシアティブは、私たちが国際社会に提供する公共財であり、共同発展と共同繁栄を実現するためのオープンなプラットフォームでもあります。

第三に、物質文明と精神文明のバランスがとれた現代化は、人類社会の進歩に良い未来を切り拓くでしょう。習近平主席は、現代化の最終目標は人間の自由かつ全面的な発展を実現することだと強調しています。人間の全面的な発展は、物の豊かさだけでなく、精神の豊かさも含まれるでしょう。

 第四に、人と自然が共生する、調和がとれた現代化は、クリーンで美しい世界の構築に実現可能な解決策を提供するでしょう。工業文明時代以来、人類は巨大な物質的財富を生み出す一方で、自然資源の搾取をも加速させ、地球の生態系のバランスを崩し、人と自然の根深い矛盾がますます顕著になっています。近年、気候変動、生物多様性の喪失、砂漠化の進行、極端な気候現象が頻発し、人類の生存と発展に深刻なチャレンジをもたらしています。習近平主席は、「目を守るように、自然と生態環境を保護するべきであり、人と自然の共生の新たなパターンを探求しなければならない」と指摘しています。

 中国は緑の山々こそ金銀の山だという理念を堅持し、生態文明建設を大いに推進し、成果を収めています。例えば、人工造林の規模は世界一で、世界の1/4を占めます。再生可能エネルギーの開発利用規模は世界一で、風力発電および太陽光発電の設備容量が世界の1/3以上を占めます。EV車の生産販売台数は世界一で、世界の半分以上の新エネルギー車が中国で走っています。さらに、世界に対して、カーボンピークアウトとカーボンニュートラルを厳かに約束しました。

 第五に、平和的発展の道を歩む現代化は、世界の平和と安定にさらなる確実性をもたらすでしょう。中国は覇権に恐れず、覇を唱えることも決してありません。歴史上最も強大な時期でも、「覇を唱える」ことはありませんでした。「平和な発展の道を堅持する」という原則を憲法の中に書き入れ、核保有五大国のうち、核兵器の先制不使用と約束した唯一の国です。20以上の多国間軍縮条約に加入し、五大国が核戦争を防止するための共同声明に向けて努力しています。

中国は、すべての国の主権と領土保全を尊重すべきであり、国連憲章の趣旨と原則を遵守すべきであり、各国の合理的な安全上の懸念を重視すべきであり、危機の平和的解決に有益な努力は支持されるべきだと主張しています。また、核戦争はしてはいけない、核戦争には勝者は一人もいないと重ねて表明しています。民間の核施設の安全を保障し、原子力発電所への攻撃に反対し、生物化学兵器の使用に共同で反対することを呼びかけています。私たちは各国と共に、引き続き平和の努力に取り組み、早期に平和を実現することを望んでいます。

添付2)

習近平国家主席の掲げる「人類運命共同体」とは?
ChatGPT
習近平国家主席が提唱している「人類運命共同体」(Community of Shared Future for Mankind)は、中国の外交政策や国際協力の理念の一部です。この概念は、国際社会全体が共同で協力し、共有の利益や責任を共有することで、人類全体の発展と安全を確保するという考え方を表しています。以下に、この概念に関するいくつかの要点を挙げてみましょう:

1. 共同の発展と繁栄: 人類運命共同体の基本的なアイディアは、全ての国々や地域が共同で発展し、繁栄することが重要であるというものです。これには貧富の格差の縮小や経済的な協力が含まれます。
2. 平和と安定: 習近平は、国際社会が共同して平和と安定を築くことが必要であると主張しています。軍拡競争や対立ではなく、協力と対話を通じて国際的な安全を確保するべきだとしています。
3. 共有の責任: 人類運命共同体は、環境問題、貧困、テロ対策などの共通の課題に対して共有の責任を担うべきだという立場も含まれています。国際社会全体で問題に取り組み、解決策を見出す必要があるとされています。
4. 多極化と多元的な発展: 中国は国際社会が多極化し、異なる文化や発展段階を持つ国々が共存することが重要であると考えています。文化的な尊重や異なる発展モデルの受け入れが含まれています。
5. 国際法とルールの尊重: 人類運命共同体の理念は、国際法や国際的な規範に基づいて行動することを強調しています。これは、国家間の対話や交流においてルールに基づく協力を奨励するものです。

「人類運命共同体」は、中国が従来の国際秩序に挑戦するものではなく、むしろより包括的で協力的な国際協力の形成を提案している概念です。ただし、この概念には異なる解釈や批判も存在し、国際社会において様々な意見が存在しています。

 
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