2021年05月16日
No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』

最近、香港の民主化運動弾圧や少数民族のウイグル族のジュノサイド(集団殺害)など、中国共産党の対応に対して、世界各国から非難の声が上がっています。
それに対して、中国共産党は“内政干渉”という一言で切り捨てています。
また、これらにおける調査拒否の声明もしています。

このようにあくまでも中国共産党は“内政干渉”という一言で全てを片付けようとしていますが、中国のような大国による行為が全てこの一言で不問に付されては大国の横暴が許されてしまいます。
こうした状況が続くことは国際社会として決して望ましいとは言えません。

ではこうした状況を打破する手立てとしてどのようなものがあるでしょうか。
トランプ政権時代には、アメリカが独自に経済制裁や関税の引き上げなどで対応してきましたが、こうした構図は米中以外の国々から見れば米中の覇権争いのように見られてしまいます。

一方、バイデン新政権になってからは、日本も含めた他の自由主義陣営の国々と共同で中国に対処する姿勢を示しています。
こうした構図は自由主義陣営と共産主義陣営との争いのように見られます。(参照:アイデアよもやま話 No.4952 気になる今後の米中関係!
また、5月12日(水)付ネットニュース(こちらを参照)では、自由主義陣営は強硬姿勢で足並みを揃えつつあると報じています。
ちなみに、アイデアよもやま話 No.4952 気になる今後の米中関係!でもお伝えしたことですが、人口減の中国が習体制崩壊の始まりになるのではないかと指摘しています。

そこで、注目すべきは国際連合(国連)の存在です。
1945年に設立された国連設立の狙いですが、設立の根拠である国際連合憲章(国連憲章)の前文、および第一章は以下の通りです。(全文はこちらを参照)

前文
われら連合国の人民は、
われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、
基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、
正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、
一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること
並びに、このために、
寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、
国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、
共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、
すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、
これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。

第1章 目的及び原則
第1条
国際連合の目的は、次のとおりである。

国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。
経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。
これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること。
第2条
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。

この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。
この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。

また、以前にもお伝えしたように、全ての人民と全ての国が達成すべき基本的人権についての宣言である世界人権宣言もあります。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.664 『覇権国家の横暴を許さない仕組み作りの必要性!』
この宣言は1948年12月10日の第3回国際連合総会で採択されているのです。

さて、自由や人権の尊重、あるいは国際平和を志向するこうした国際的な取り決めは各国の国内法よりも優先されるものです。
しかし、中国の共産主義は共産党による一党独裁で、自由や人権が軽視され、“まず共産党ありき”で何よりも中国共産党の永遠の存続が重視されます。
それだけでなく、習近平国家主席は“中国の偉大なる復興”をスローガンに世界制覇を目指し、中国共産党の方針を世界のより多くの国々に展開しようとしています。
ですから、習近平国家主席の率いる中国の一連の行為は明らかに国連の目指す方向とは逆行しているのです。
しかも現在、その中国は国連の常任理事国なのです。
ですから、アメリカを中心とする自由主義陣営の国々は日本も含めて、中国による“内政干渉”の強弁は詭弁に過ぎず、国際連合憲章や世界人権宣言を拠り所に中国の自由や人権の軽視や覇権主義に対して強く軌道修正を促すべきなのです。
更に、どうしても中国共産党の方針が断固として国連の目指す方向性に沿わないのであれば、常任理事国としての権利をはく奪し、国連からの脱退を促すくらいの勢いで中国に対峙すべきだと思うのです。
例えてみれば、習近平国家主席は現代のヒットラーのような存在と言えます。
確かに習近平国家主席は指導者としてはとても頭脳明晰で決断力もあります。
しかし、とても残念なことにその目指す方向が一党独裁で、自由や人権尊重と相反した“社会のあるべき姿”とは真逆なことです。
ですから、このまま中国の暴走が続けば、その行きつく先は“暗黒の社会”なのです。

そうならないためには、この暴走を阻止しなければならないのです。
そういう意味で、アメリカのバイデン新政権が中国に対して強硬姿勢を示し始めたのは望ましいと思うのですが、“自由主義対共産主義”という構図ではなく、あくまでも国連の参加各国で取り交わした条約などの取り決めを拠り所に中国に対峙していただきたいと思います。

こうしたことにより、“国連での取り決めを守る国”対“国連での取り決めを守らない国”の構図が出来上がり、より多くの国連加盟国が協力して中国の覇権主義に立ち向かうことが出るのです。

ですから、“国連での取り決め”を拠り所にするのは幕末の菅軍における“錦の御旗”の現在版と言えます。


 
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