2022年02月12日
プロジェクト管理と日常生活 No.732 『動き出した経済安全保障!』
経済安全保障(経済安保)についてはこれまで以下のように何度かお伝えしてきました。

プロジェクト管理と日常生活 No.714 『日本企業にも必要な経済安全保障 その2 セキュリティ・クリアランス(SC)」への取り組み!』

プロジェクト管理と日常生活 No.715 『世界で拡大するサイバー攻撃とそのリスク対応策』

プロジェクト管理と日常生活 No.721 『半導体不足に見る日本企業の危うさ!』

プロジェクト管理と日常生活 No.729 『アメリカが主導する「民主主義サミット」から見えてくる“志向すべき社会”のあり方』

そうした中、昨年10月5日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で動き出した経済安全保障について取り上げていたのでご紹介します。

原油などのエネルギー価格が急上昇していることによって世界のマーケットを冷やすことになっています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「世界のリスクなんですけども、コロナリスクからエネルギーリスクへの局面転換だと思うんです、今。」
「(中国では電力不足による停電、インドでは石炭の在庫が枯渇しそう、イギリスではガソリンの供給がひっ迫、EUでは天然ガスの価格が急騰という情況ですが、)コロナ対策でばらまかれたお金が世界中に散布しているわけですよね。」
「一方で、一先ず景気が回復してきたということで需要が持ち直している。」
「一方で供給が不足しているというところがエネルギー価格にもモロニ表れているということだというふうに思います。」
「で、言わばコロナ対策というリスク対応が新しいリスクを生んでしまっているリスク転がしみたいになっているのが現状じゃないんでしょうか。」
「(日本もエネルギーの輸入依存度が高いので他人事ではないのではという指摘に対して、)はい。」

さて、その高騰するエネルギーを巡って国同士の競争が激しくなる中、注目されているキーワードが“経済安全保障”です。
エネルギーの安定供給を確保したり、先端技術の流出を防いだりすることで経済面から国民生活を守ることを指した考え方です。
経済安保は岸田政権の目玉政策に挙げられていますが、今日(昨年10月5日)、企業の経済安保を支える新サービスが発表されました。

政権発足から一夜明け、アメリカのバイデン大統領と20分間電話会談した岸田総理、その後オーストラリアのモリソン首相とも相次いで電話会談、影響力を増す中国を念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け協力していくことを確認しました。

その中国を意識して岸田内閣が力を入れるのが経済安保です。
新たに担当大臣に就任した小林鷹之議員は初めての会見で経済安保の必要性を次のように強調しました。
「米中の対立も長期化する様相を見せていて、国家間の競争が非常に激しくなってきています。」
「他国の動向に右往左往するのではなくて、まさにまずは日本としてどうしていくのか・・・」
「(日本経済の)弱みを解消して強みを磨くことによって国際ルールの形成を主導して、また日本の国益をしっかりと確保していく・・・」

半導体やレアアースなどの重要な物資の供給を他国に依存しない体制づくりやエネルギーや物流などの基幹産業の強化を早急に進めていく考えを示しました。
早ければ来年(2022年)の通常国会に関連する法律案を提出することも視野に入れて対応を進めていきたいとしています。

政府の動きにさきがけ、動き出した企業もあります。
株式会社フロンテオ(FRONTEO)の守本正宏社長は次のようにおっしゃっています。
「経済安保保障はまさに情報戦であると言えますので、有事のみならず平時からの継続的なハイテクを活用したインテリジェンス基盤が必要です。」

今日(昨年10月5日)、経済安全保障に関連する新サービスを発表したのはビッグデータの解析を手掛けるフロンテオ、独自開発したAI、人工知能を活用するというのですが、守本社長は次のようにおっしゃっています。
「(自社で開発した「フロンテオ サプライチェーン解析システム」が表示されたパソコン上の画面を見ながら、)企業のサプライチェーンを分析して、その中に潜んでいるリスクなどを見つけていくと。」
「直感的に出来るようなシステムになっています。」

このシステム、半導体の製造メーカーから見たサプライチェーンをイメージ化したものです。
有価証券報告書や企業が出すプレスリリースなどの公開情報を基にAIが10以上先の供給企業まで遡って解析、輪の中の一つにカーソルを当てると企業名、国、そして産業分類が一目で分かるようになっています。
ちなみに輪の大きさは企業の数、業種は色分けして表現します。
取引先が輸出規制や制裁リストに含まれるかどうかを判定することで、潜在リスクへの対応が出来るといいます。
守本社長は次のようにおっしゃっています。
「経済安全保障に関する取り組み、方針、規制などは政府の仕事だと思うんですけども、それを実行するための技術開発は我々のような民間企業がやる方が効率的ですし、AIをやっている企業がソリューション提供することは非常に価値がありますし、重要な役割であると考えています。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を参考にして“経済安全保障”の要旨を以下にまとめてみました。
(狙い)
・経済面から国民生活を守ること
(現状)
・コロナ禍が継続する中で景気が回復しつつある
・その結果、原油などのエネルギー価格が急上昇している
・同時にサプライチェーンがひっ迫し、半導体など一部の原料の安定供給が困難になっている(こちらを参照)
・米中の対立によるサプライチェーンへの影響のリスクが高まっている
・日本の先端技術が狙われている(こちらを参照)
(対応策)
・エネルギー、および原料や食料などの安定供給の確保
・影響力を増す中国を念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた国際協力
・国際ルールの形成
・先端技術の流出防止

さて、政府の動きにさきがけ、ビッグデータの解析を手掛けるフロンテオは昨年10月5日、経済安全保障に関連する独自開発したAIを活用する新サービスを発表しました。
その具体的な内容は、企業のサプライチェーンを分析して、その中に潜んでいるリスクなどを見つけることです。
企業活動を取り巻く環境が不安定であればあるほど、こうしたサービスの必要性は高まってきます。
なお、この新サービスの今後の課題について以下にまとめてみました。
・今回発表されたサプライチェーンの分析に加えて、デマンドチェーンについてもサービスの対象に加える
・更にサプライチェーン、およびデマンドチェーンの分析をベースにより精度の高い将来的な需要予測、それに対応する生産量予測のデータを提供する

勿論、こうしたサービスには高い精度が求められますが、需要、供給の両面において、企業を取り巻く状況が把握出来れば、事業活動に取り組むうえで企業にとってとても有効な情報となります。
ですから、フロンテオによる新サービスのようなビジネスは国際情勢が不安定になればなるほど引き合いが増えると見込まれます。

 
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