2021年10月09日
プロジェクト管理と日常生活 No.714 『日本企業にも必要な経済安全保障 その2 セキュリティ・クリアランス(SC)」への取り組み!』
今、日本企業にも必要な経済安全保障について2回にわたってご紹介します。
2回目は前回のプロジェクト管理と日常生活 No.713 『日本企業にも必要な経済安全保障 その1 民主主義陣営の国々で進みつつある経済安全保障対策!』に引き続き、5月3日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通してセキュリティ・クリアランス(SC)についてご紹介します。

政府が経済安全保障担当の設置を企業に要請する検討を始めたということですが、米中対立などが背景にあるようで、企業にとっても経済安全保障という観点が欠かせなくなってきているようです。
解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「今、日本はアメリカやイギリス、オーストラリアやカナダ、ニュージーランド、この5カ国のファイブ・アイズと連携をしようということで、そこで情報交換をするわけなんですが、その時に情報というのは“ギブ・アンド・テイク”なんですね。」
「しかも信頼に足る相手でなければ、教えてもらえないという問題があります。」
「特に、例えばサイバー攻撃があった時にその攻撃者は誰かとか、手口は何かとか、これは機密情報にあたるわけですが、そういった機密情報にアクセス出来るセキュリティ・クリアランス(SC)という資格があるんですね。」
「(どういう人がこのSCになるのかという問いに対して、)アメリカでは、民間の人を含めて約480万人もの人がこの資格を持っているわけです。」
「で、各国だいたい民間人もこういう資格を持っている人がいると。」
「日本だけが民間の人がこういう資格を持っていないと仲間外れになる可能性があるという問題があるんですね。」
「(この資格はどのように得ることが出来るのかという問いに対して、)この資格はこういう条件があるんですね。」
「犯罪歴(麻薬の使用・犯罪グループと接触)がないとか、家族構成とか、お金を積まれると情報を漏らすような人がいると困りますから経済状況もチェックするとか、そういうことがあります。」
「(民間企業がSCを導入するにあたっての課題について、)オーストラリアの例が参考になると思うんですけど、この制度を運用するとお金がかかるんですね。」
「そこでオーストラリアは企業にその負担を求めていると。」
「つまり、企業側はその情報を得ることで自らのビジネスのリスクを理解出来るということがプラスになりますから、日本もそういうことを考えないといけないんじゃないでしょうか。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、1月5日(火)付けネット記事(こちらを参照)では日本における「セキュリティ・クリアランス(SC)」への取り組みについて取り上げていました。

「セキュリティ・クリアランス」という言葉は耳慣れないですが、企業のサイバー攻撃対策として、これに携わる専門技術者が必要な時代を迎えているのです。
そこで、今回ご紹介した2つの情報源をもとに以下に「セキュリティ・クリアランス」について以下にまとめてみました。
・米中対立などを背景に企業にとっても経済安全保障(*)という観点が欠かせなくなってきた
・SCとは、国家機密情報にアクセス出来る資格であり、国家機密情報を扱う人の信用度を保証する認定制度が考案されている
・その狙いは、防衛機密や先端技術など国家や企業の機密情報の海外流出を防ぐことである
・企業側はSC認定者を通して国家機密情報を得ることで自らのビジネスのリスクを理解出来る
・アメリカでは近年、中国との対立を背景に、AIや量子コンピューターなどの先端技術も流出防止を求めており、対応が急務になっている
・アメリカでは機密レベルを3段階に分け、レベルごとにアクセス出来る情報の種類や流出防止措置などを厳格に定める
・アメリカでは民間の人を含めて約480万人もの人がこの資格を持っている
・ヨーロッパでも既にこの認定制度が導入されている国がある
・日本だけが民間の人がこういう資格を持っていないと仲間外れになる可能性がある
・日本政府も現在、各国の制度を調べており、国家機密だけでなく先端技術を扱う際も含め、独自の資格制度を創設する方向で検討している
・自民党の提言では、こうした経済安保の国家戦略策定へ向けた「一括推進法」を令和4年(2022年)にも制定するよう求めた

* 経済的観点から他国の影響力を排除し、自立を保持するための政策。自民党新国際秩序創造戦略本部がまとめた提言では「我が国の生存、独立及び繁栄を経済面から確保すること」と定義する。中国の経済成長を背景に2018年、ペンス米副大統領が行った米中の「新冷戦」を予感させる演説で注目された。米国は情報通信分野からの中国製品排除など動きを強めている。

以上、「セキュリティ・クリアランス」についてまとめてみました。

前回お伝えしたように、自由、および人権を軽視する習近平国家主席率いる中国による経済、および軍事における世界制覇を阻止する方策として経済安全保障を軸とした対策が欧米を中心に展開されつつあるのです。
そうした一環として、アメリカを中心に欧米各国は「セキュリティ・クリアランス(SC)」という認定制度を導入するに至ったわけです。
そして、日本もようやくセキュリティ・クリアランス認定制度の導入を検討し始めたのもこうした動きの一つと言えます。

ちなみに、CO2排出量については生産の過程から使用して最後に廃棄、リサイクルに至るまでプロダクトサイクル全体での削減を進めるべきであるという考え方から、ヨーロッパでは国境炭素税を導入する動きがあります。
そして、国境炭素税を導入している国に対しては日本のEVと言えども輸出出来なくなる場合が出てくるのです。(参照:アイデアよもやま話 No.5049 EVを巡る世界的潮流!

ですから、番組でも指摘されているように、国境炭素税の導入と同様に日本がSC認定制度を導入していない場合には日本だけがこの認定制度を導入している国々から仲間外れになる可能性があるのです。
日本単独で中国に対峙しても経済面でも軍事面でもとても中国に太刀打ち出来る見込みはないのですから、民主主義陣営の国々と歩調を合わせて中国に向き合う道を選択することこそ日本の進むべき道なのです。

これまで2回にわたってお伝えしたような欧米各国の動きは、大きく捉えれば民主主義陣営の国々が中国による世界制覇により自由や人権が奪われる社会になってしまうリスクにおける経済面での対応策の一環なのです。

なお、岸田新政権が10月4日に発足し、経済安全保障省が新設されました。
こうした動きは2回にわたってお伝えしたような世界情勢を反映しているものと言えます。

 
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