2021年10月02日
プロジェクト管理と日常生活 No.713 『日本企業にも必要な経済安全保障 その1 民主主義陣営の国々で進みつつある経済安全保障対策!』
今、日本企業にも必要な経済安全保障について2回にわたってご紹介します。
1回目は、6月1日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して民主主義陣営の国々で進みつつある経済安全保障対策についてご紹介します。

政府与党は企業に対して、経済安全保障担当の役員を置くよう、要請することを検討しています。
加藤官房長官は会見の場で次のようにおっしゃっています。
「民間企業が経済安全保障を巡る国際的な環境変化に適切に対応することは増々重要になっている。」

政府から期待感が示された経済安全保障への対応、この取り組みをいち早く始めた企業が三菱電機株式会社(東京・千代田区)です。
三菱電機で新たに設けられた経済安全保障担当の役員、日下部聡常務は次のようにおっしゃっています。
「我々は高度な先端技術の開発をベースに事業活動をしている会社です。」
「経済安全保障について直面せざるを得ない。」

三菱電機は人工衛星をはじめとした宇宙産業など幅広く事業を展開、今や様々な製品に欠かせない存在となった半導体などを海外に輸出します。
そのために経済安全保障を巡る米中の対立に巻き込まれた昨年9月、アメリカ政府が中国の通信機器大手、ファーウェイに対し、半導体の供給を規制しました。
その動きを受け、三菱電機もファーウェイ向け半導体の出荷を一時停止しました。
こうした中、昨年10月に立ち上げたのが経済安全保障統括室です。
各国政府の動向の収集や国内外のニュースをチェックし、経営に影響がありそうな情報の分析などを行っています。
担当部署があったことでファーウェイを巡る問題に素早く対応が出来たといいます。

経済安全保障を巡る米中対立が激しさを増す中、政府与党も企業に対し、「経済安全保障担当」の役員や担当部署の設置を求める方向で検討しています。
いち早く取り組んだ三菱電機もその必要性について、日下部常務は次のようにおっしゃっています。
「企業の目から見ると、この経済安全保障制度がそれぞれ形成される中でどう対応していくのかという議論は避けては通れない問題だと。」

ここにきて、この経済安全保障という問題が企業にとっても無視出来ない問題になってきていますが、それはなぜなのでしょうか。
解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは3つの観点から次のようにおっしゃっています。

(米中の覇権争い)
「米中の覇権争いは対立が厳しくなっているので、産業のサプライチェーン、供給網ですけど、これがアメリカ陣営と中国陣営に分断されつつあると。」
「で、三菱電機も半導体をファーウェイに供給出来なくなったと。」
「供給するとアメリカのビジネスを出来なくなるというペナルティも待っているわけですね。」

(経済安全保障の対象分野)
「(経済安全保障に係わる分野は半導体だけではなく、)AIですとか蓄電池だとかサイバーといった分野があります。」
「半導体は日本はかつて非常に強かったのですが、今、技術力がかなり低下しているので経済産業省は台湾のTSMCの開発拠点を日本に移しているわけですね。」

(経営にも必要な経済安全保障)
「(経済安全保障の観点で企業が注意すべき点について、)軍事にも転用出来るような最新鋭の技術の扱いは厳密にチェックしないといけないと思いますね。」
「三菱電機はもともと防衛装備品を扱ったり、日米安保に直結するような企業ですから、担当役員を置くのは自然です。」
「ただそれ以外にもサイバーセキュリティで14業種指定されている。」
「通信だとか電力だとか航空だとか、こういった企業の方々は役員を置くということを検討されるべきなんでしょうね。」
「(自分の会社がどのように経済安全保障分野に携わっているのか、しっかり把握する必要があるのではという指摘に対して、)そうですね。」
「だから、あまり関係のない民生品、純粋なものについてそれほど全部中国はダメというわけではないので、留意しておいた方が良いと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

かつて日本が高度経済成長時代を迎えた背景の一つは国策としてコンピューターなどアメリカの先端技術を入手して“追いつき、追い越せ”で経済競争力を高めたことがあります。
そして中国がかつての日本と同様に欧米各国や日本の先端技術を取り込み、今や世界第2位の経済大国になり、経済力、および軍事力においてアメリカに“追いつき、追い越せ”状態なのです。
こうした状況を踏まえ、自由、および人権を軽視する習近平国家主席率いる中国による経済、および軍事の面での世界制覇を阻止する方策としてアメリカを中心に欧米各国は経済安全保障への取り組みを進めているということなのです、

そもそもこうした習近平国家主席率いる中国の進める覇権主義の世界展開がきっかけで現在のような米中の覇権争いを招いているのです。
民主主義陣営の国々にしてみれば、こうした中国の方針とは相いれません。

ですから、日本としても単に経済的に深い関係のある中国との関係を良くするという観点だけでなく、自由、および人権を重んじるという観点から、現在の中国と向き合うことが求められるのです。
遅ればせながら、日本もようやく企業に経済安全保障担当の役員を置くよう、要請することを検討し始めたというわけです。

なお、リスク管理の最も重要なポイントは出来るだけ早い段階でリスクを把握し、リスクの顕在化が始める前にタイムリーにリスク対応策を実施することです。
ですから、リスク管理はプロジェクト管理の中でも特に重要視されている管理項目なのです。

ということで、国家安全保障の観点からすると、中国の進める覇権主義の世界展開は自由、および人権を重んじるという民主主義陣営の国々とは相容れないのですから、遅まきながら経済、および軍事の面で中国による世界制覇、その結果として中国の属国になるリスク対応策として様々な有効なプログラムを実施していく必要があるのです。

一方で、勿論、原田さんも指摘されているように、経済安全保障に関係のない民生品に関しては従来通り中国との輸出入はお互いの国民の豊かさ向上のために進めるべきなのです。

 
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