前回は世界の「ニッチトップ」100選についてお伝えしました。
そうした中、今回は7月8日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナ禍で学ぶ長寿企業の経営のヒントについて取り上げていたのでご紹介します。
日本経済大学大学院特任教授で日本の長寿企業に詳しい、100年経営研究機構の代表理事、後藤俊夫さんは次のようにおっしゃっています。
「(コロナ禍で)大変な非常時が続いているわけでありますけど、私はコロナ禍で非常に大きな励まし、勇気をもらいました。」
「20年間、私は長寿企業の研究をしてまいりまして、最近では世界でも日本は長寿企業大国として知られた存在になりましたが、この日本の長寿企業がコロナに対してどう対応しているかという質問が世界各国から寄せられたわけであります。」
「私は仲間に呼びかけまして、日本全体の長寿企業のコロナ対策の緊急調査を行いました。」
「1000年企業3社を含め95社から集まった回答は非常に私たちを勇気づけ、そして従来の研究結果を上回るようなものでもありました。」
「第一に財務的に足元を固める、勿論これは長年にわたります内部蓄積、そして信用のたまものでありますけども、「1年間持つ」と答えた企業が全体の6割、中でも「2年以上持つ」と答えた企業が27%あったわけであります。」
「過去の体験、教訓などをもとにしまして、彼らは自分たちだけではなく、生産者、地域社会と一緒になって頑張ろうと、そういうことをやっているわけです。」
「この最後の部分が非常に大事であります。」
「と申しますのは、3月になりますと、ポストコロナの経営に関する質問が寄せられるようになりました。」
「私は「ポストコロナは長寿企業にあり」というふうに答えているわけであります。」
「先ほど申し上げましたように、ステークホルダーと一体になった闘い、これがあるからこそ過去に幾多の非常時、数えてみますと過去100年間に15回、例えば関東大震災、第二次世界大戦、リーマンショックなどあったわけですけど、これを克服して来たわけであります。」
「このコロナが起きる前から私は21世紀の経営は「利他主義である、利他経営である」と言ってきました。」
「日本に古来から言われるところの「三方良し」、「企業は社会の公器」、これを言い換えた言葉でありますが、これらがこれからの経営で増々重要になるだろうと私は読んでいるわけであります。」
「企業は孤立した存在ではあり得ません。」
「社会的な存在でありますから、困った時には助けられ、普段は助け合うと、これを続けて来たからこそ100年企業が100年続いているわけであります。」
「私たちは是非自信を持って助け合いながら頑張っていこうではありませんか。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
まず1000年企業が国内に3社存在しているということで、具体的にどの企業なのかネット検索したところ、実際には以下の9社であることが分かりました。(Wikipediaより)
金剛組 - 578年創業、木造建築工事業
池坊華道会 - 587年創業、華道茶道教授業
西山温泉慶雲館 - 705年創業、旅館業
古まん - 717年創業、旅館業
善吾楼(法師) - 718年創業、旅館業
田中伊雅 - 889年創業、宗教用具製造業
中村社寺 - 970年創業。木造建築工事業
佐勘 - 1000年創業、旅館業
一文字屋和輔 - 1000年創業、飲食店
さて、後藤さんが実施した国内の長寿企業のコロナ対策の緊急調査の結果から見えてきた経営のヒントは以下の2つと言えます。
・財務的に足元を固めること(長年にわたる内部蓄積)
・三方良し
経営の神様と言われた、松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助は“ダム経営”の必要性を唱えておられましたが、この考え方も長寿企業の要件の一つにつながります。
また、三方良しについてはアイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え!でもお伝えしましたが、その後、五方良し(私の造語)についてお伝えしました。(参照:No.4134
ちょっと一休み その666 『これからの時代のキーワード その4 ”五方良し”』)
こうして長寿企業の経営のヒントを見てくると、企業は自社の存続のためにいざという時のためにある程度の蓄えが必要であり、日頃からお客様や取引先企業との関係を良くし、社会貢献にも励んでいれば、取引企業との間でお互いに自社が存続の危機を迎えた時に支援し合えるし、お客様からも支援してもらえるということなのです。
ちなみに、クラウドファンディング(参照:アイデアよもやま話 No.4640 広がる”イエナカ消費”!)がコロナ禍において企業の資金援助にとても役立っているようですが、こうした基本的な考え方は、企業だけでなく、個人や国家のあり方においても通用すると思います。
今、国際社会において、自国ファーストを唱えるアメリカのトランプ大統領と覇権主義を推し進める中国の習近平国家主席との覇権を巡る対立が激化していますが、こうした大国の指導者こそ“三方良し”を唱えて実践してしていただきたいと思います。
“三方良し”と真逆の“自国ファースト”や“覇権主義”を推し進めていてはいずれ壁にぶち当たることになり、国家の繁栄という観点で長寿国とはなり得ないことは明らかなのです。
また両国の間で軍事衝突が起こる可能性が高まります。
少なくとも日本は国際社会において“三方良し”を唱えて、その方針を実践し続けて欲しいと願います。