昨年9月12日(木)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で3年待ちの人気家庭教師について取り上げていたのでご紹介します。
東京都内で行われた中学受験対策セミナー、熱弁を振るうのがプロの家庭教師、安浪 今子さん、定期的に開催されるこのセミナーは毎回すぐに予約が埋まるほどの人気ぶりだといいます。
安浪さんは“超”が付くほどの人気家庭教師で最長3年待たないと受講出来ないほどの予約が殺到しているといいます。
待ってでも子どもに習わせたい授業とはどのようなものなのでしょうか。
なんと安浪先生は算数しか教えないといいます。
ある日、小学5年生の男の子のお宅に来て教える安浪先生、この日は1時間の授業のうち30分は雑談、こんなことで成績は伸びるのでしょうか。
こうした教え方について、安浪先生は次のようにおっしゃっています。
「全部授業だと飽きるんですよ、子どもが。」
「だからやっぱり(雑談を)挟み込んでうまく集中力を途切らさないようにしているという感じですよね。」
雑談で集中力をコントロールしているといいます。
そして、算数の問題に集中させると、簡単な計算問題でも正解したら大きなリアクションで褒めまくります。
これが子どもの成功体験につながるといいます。
続いては、計算問題を出して子どもが解くと、あえて計算の過程を聞き出しました。
安浪先生は次のようにおっしゃっています。
「論理的思考力(を養うため)ですよね。」
「算数って速さとか割合とか、文章が3〜4行なるようなもの。」
「問題を読んでここまでストーリーを全部考えないといけないですよね。」
「いかに自分で全員に納得のいく数式というもので書いていくかという作業は論理的そのものですよね。」
解く過程を順序立てて考えさせることで、より深く理解させる狙いです。
この生徒の母親はこうした教え方について次のようにおっしゃっています。
「一生徒とかという向き合い方じゃないんですよね。」
「多分、恐らく自分の息子のように寄り添っていただいているのが本当に実感出来るので、本人から自ら何も言わずに机に向き合うというのがまず大きな変化。」
気になる指導料金は1時間当たり2万円、高額にも係わらず他にはない圧倒的な指導力が人気を呼び、予約が殺到し続けているのです。
なぜこの指導方法に行き着いたのでしょうか。
安浪さんは大学卒業後、派遣社員のお天気キャスターとして活動していました。
しかし収入が少なく、生活費の足しにと副業で始めたのが家庭教師だったといいます。
当時について、安浪さんは次のようにおっしゃっています。
「その中で、算数を教えていて小学生と話すのが楽しいというのがありましたね。」
すると、キャスターで培った“話術”と分かり易い“指導法”が話題になり、2011年に中学受験専門の家庭教師会社、株式会社アートオブエデュケーションを設立するまでになったのです。
安浪さんが教えるのは算数のみですが、次のようにおっしゃっています。
「合格者平均と受験者平均の点差が一番大きいのは算数です。」
「だから差がものすごくつく。」
算数の問題を正しく読み解ければ、他の教科にも応用出来ると考えたのです。
夫の勝之さんと小学2年生の長男の3人で暮らす安浪さんは自宅では信じられない過ごし方をしていました。
家でも算数漬け、家族3人で夕食前に算数の問題を解くのが日課だといいます。
気象予報士の勝之さんは次のようにおっしゃっています。
「どういう問題の傾向か、2人でそういうのを分析しながら会話も出来るので夫婦の間で・・・」
一方、長男は次のようにおっしゃっています。
「問題を解いて答えを書いて、正解を見るのが楽しい。」
そんな算数愛に溢れた安浪さんの指導を受け、有名私立中学や超難関校に合格した子どもたちはこれまでに100人以上、現在成城大学に通っているKさん(女性)は、受験が終わって10年近く経った今でも安浪さんを慕う教え子の一人です。
Kさんは次のようにおっしゃっています。
「(安浪さんは)先生でもあり、友達でもあり、母でもあるみたい。」
「答えではなく、アドバイスやヒントを下さるという。」
「私をすごく成長させて下さった方ですね。」
また慶応大学4年生のYさん(女性)は、安浪さんの指導が就職活動にも生かされたといいます。
「限られた時間の中で自分をどういうふうに表現していくか、そういうところにも(安浪先生の指導は)つながったと思います。」
「社会全体に大きな貢献が出来るような人材になれたらなと思っております。」
安浪さんは次のようにおっしゃっています。
「中学受験をとにかく良かったという経験にして欲しいというのがすごく強くて、やっぱり入試って黒か白しか出ないので、その子の本当の頑張りや本当の学力というのを100%評価される場ではないんですが、そこで「自分の能力はこの程度か」とか絶対に思って欲しくないということにずっと子どもにも親にもセミナーでも訴え続けていますね。」
なお、安浪流指導法をまとめると以下の3つになります。
1.雑談で集中力をコントロールする
2.大きなリアクションで褒める
3.論理的に考えさせる
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組を通してまず思ったことは、安浪先生の算数しか教えないというユニークな教育方針です。
そして、その理由については以下のようにおっしゃっています。
・論理的思考を養えること
・算数の問題を正しく読み解ければ、他の教科にも応用出来ること
・合格者平均と受験者平均の点差が一番大きい教科は算数であること
このように安浪先生の教育方針を見てくると、そのエッセンスは次の4つの能力の向上にまとめることが出来ます。
・自主性
・論理的思考
・学ぶ意欲
・集中力
この4つの能力は、小中高大を通してあらゆる教科の学習のみならず、社会に出てからも求められる基本的な能力です。
こうした能力が高ければ、自ずと学力は向上すると考えられるのです。
番組の中で紹介された、かつての二人の教え子の感想は、こうした教育方針が功を奏していることを物語っていると思います。
こうした教育方針の対極に位置するのが暗記教育です。
ある程度の暗記力は必要ですが、受験のための暗記で受験を突破出来たとしてもその後の長い人生を送っていくうえで必要なのは暗記よりも論理的思考の方がはるかに重要なのです。
これまで学校教育関連については、アイデアよもやま話 No.4501 千代田区立麹町中学校の革新的教育!やアイデアよもやま話 No.4534 大手予備校で授業にAIを本格導入!などでお伝えしてきましたが、今回ご紹介した番組も参考に教育の要件についてあらためて、私の思うところをコンパクトに以下の3つにまとめてみました。
・自主性の向上
・創造力の向上
・論理的思考の向上
AIの導入や個人授業などは、あくまでもこうした教育要件を満たすための手段として考えるべきだと思うのです。
また、少子高齢化の進行やテクノロジーのすさまじい速さでの進歩、あるいは米中をはじめ海外諸国との経済競争の中で、これからの日本をより住み良いかたちで継続させていくためには中でも創造力の向上がとても重要だと思います。
なお、プロジェクト管理と日常生活 No.622 『”世界平和”という一点だけでつながる世界的な国民運動の必要性』などで“いかなる国の指導者も国民の多くの声を無視し続けることは出来ない、従って戦争も阻止出来る”とお伝えしてきましたが、こうした意識レベルの高い国民をより多くすることが出来るかどうかは各国の教育レベルにかかっているのです。
ですから、各国の教育の健全性についても国際的な機関による評価がなされ、不十分な内容、あるいは誤った内容については改善を促すような仕組みがとても重要なのです。