2020年01月12日
No.4536 ちょっと一休み その703 『生徒のデモ参加について驚くほど理解のある学校!』

これまで地球温暖化の危機を訴え続けていることで世界的に注目を集めているスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16歳)についてお伝えしてきました。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?』、およびプロジェクト管理と日常生活 No.612 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その2 本格的に動き出した企業による地球温暖化対策!』)

そうした中、昨年9月24日(火)放送の「国際報道2019」(火)(NHKBS1)は「気候変動 “グレタに続け” 立ち上がる若者たち」をテーマに取り上げていました。

そこで、今回はこうした学生デモに驚くほど理解のある海外の学校に焦点を当てて紹介します。

 

グレタさんが参加するサミット(9月23日にニューヨークで開かれた「温暖化対策サミット」)を盛り上げようと、9月20日に150ヵ国以上でティーンエイジャーたちを中心に400万人を超える人がデモに参加しました。

グレタさんがたった一人で始めた抗議活動は世界中に広がっています。

 

若い世代の熱意は、現在、温暖化対策に消極的なアメリカにも波及し、ニューヨークでは25万人を集める過去最大規模のデモとなりました。

その舞台裏にもやはり若い力がありました。

8月、ニューヨークに到着したグレタさんを出迎えた2000人を超える人たち、ひと際熱い視線を送る若者がいました。

高校2年生のカルビン・ヤンさん(17歳)です。

ヤンさんは次のようにおっしゃっています。

「グレタさんは皆を動かした張本人です。」

「彼女の姿を見て、出来るだけ早く大きな動きを起こしたいと思いました。」

 

以前から環境問題に関心を持っていたヤンさんですが、仲間が少なく、活動に限界を感じていました。

そんな時にソーシャルメディアで出会ったのが、グレタさんがたった一人で始めた抗議活動でした。

同じ10代の少女の主張が瞬く間に世界に広がる様子を目の当たりにし、大きな力をもらったといいます。

ヤンさんは次のようにおっしゃっています。

「これまで10代は世界に何も意見出来ないと思い違いをしていました。」

「僕たちは気候変動の影響を大きく受ける初めての世代です。」

「だからこそ、自分たちの未来のために闘うんです。」

 

グレタさんの活動を何とか後押ししたい、ヤンさんが仲間と共に企画したのが「国連温暖化サミット」を盛り上げるための史上最大規模のデモでした。

当初10人に満たない生徒で立ち上げた実行委員会、ソーシャルメディアなどで拡散され、次第にニューヨーク中から若者が集まり始めました。

ある日、ヤンさんたちは高校生にとって重要なある課題について学校側と話し合いを行いました。

平日にデモに参加することにためらいを感じる生徒たちのために、授業を休むことを正式に許可して欲しいと訴えたのです。

このミーティングに参加したある女子生徒は次のようにおっしゃっています。

「将来、自分の子どもやそのまた子どもに酷い環境で生活させたくありません。」

 

それに対して、学生主任のエリック・デールさんは次のようにおっしゃっています。

「管理する側の私にとって難しいのは授業とのバランスだ。」

 

ヤンさんたちの世代にとって、温暖化問題がどれだけ大事なことか、これまで学んできた知識をもとに説得した結果、学校を欠席する許可を得ることが出来ました。

デールさんは次のようにおっしゃっています。

「生徒たちや更に若い人たちが気候変動のことを考え、世の中を変えようとしているのを見て、私自身の意識も変わってきたと感じる。」

 

ヤンさんたちの熱意は行政をも動かしました。

ニューヨーク市や市内の公立学校に通う110万人の児童や生徒にデモの参加のための欠席許可を出したのです。

そして迎えた9月20日、デモの参加者は次のように点呼しました。

「私たちは止められない。」

「もっと良い世界に出来るはずだ。」

 

デモには10代を中心に就学前の子どもまで予想を超える25万人もの若者が集まりました。

デモに参加した12歳の少女は次のようにおっしゃっています。

「1つしかない地球を救うために来ました。」

 

17歳の男子生徒は次のようにおっしゃっています。

「地球を守る法律を作って欲しい。」

 

集会のクライマックス、グレタさんが登場し、盛り上がりは最高潮になりました。

そして、グレタさんは次のように演説しました。

「世界の指導者に行動させます。」

「私たちは成し遂げます。」

「彼らが望もうと望むまいと変化は起きます。」

 

温暖化対策に消極的なトランプ政権のアメリカで変化を求めて動き始めた若者たち、大人たちが行動を始めるまで訴え続ける決意です。

ヤンさんは次のようにおっしゃっています。

「僕たちが要求しているのは、現状を変えるための行動だと気づいて欲しい。」

「指導者の中に少しでも正義があれば、未来や地球のために行動を起こしてくれると思います。」

 

取材した記者は次のようにおっしゃっています。

「(世界の指導者たちに行動を求める若者たちの声は各国の指導者たちの具体的な動きにつながっていくかということについて、)無視出来なくなっていると思います。」

「声を上げているのはレポートに登場したヤンさんのように元々環境問題に関心があった若者たちが中心でしたが、彼らの熱気がこれまで温暖化に興味がなかった若者にも影響を与えてきました。」

「サミット直前に行われた400万人を超える若者たちのデモの規模や世界的な広がりはかつてないものです。」

「ヨーロッパでは環境意識の高まりが温暖化対策の強化を掲げる緑の党の躍進にもつながっていて、温暖化対策が選挙に影響を与えている国もあります。」

「(そうした意識が高まっていく中で、温暖化を防ぐために各国の首脳に何が求められているかについて、)対立を乗り越えて、世界全体が一致して取り組んでいくことです。」

「世界の平均気温の上昇は今も続き、温室効果ガスの排出は増え続けています。」

「更に各国の間では対策への温度差もあり、経済発展を重視する発展途上国を中心に新しい石炭火力発電所の建設も進められています。」

「温室効果ガスの削減を巡っては、これまでこうした各国の利害の対立と責任の押し付け合いとなっていました。」

「しかし、それは大人の論理なのかもしれません。」

「温暖化対策を求めて若者たちが国境を越えて連携するには、各国政府も大幅な削減に向けて協力していけるかが問われることになります。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

いつの時代も時代の変革期には使命感を持って積極的な行動を始めるのは感受性の高い若者たちです。

そして今は、何年か前まで経済発展一辺倒でやって来た産業界が地球温暖化の進行に伴い、その対応を余儀なくされるような状況を迎えているのです。

そうした中、スウェーデンのたった16歳のグレタさんを中心に世界中の若者たちの地球温暖化阻止に向けた行動が徐々に広がっているのです。

そして、こうした動きはこれまで地球温暖化に関心のなかった大人たちにも影響を与えつつあります。

こうした動きとは別に、昨年発生した国内のいくつかの大型台風による被害の大きさから「何かこれまでとは気象状況が大きく変わってきた」と実感した人たちも少なからず出て来たと思います。

もし、昨年発生したような大型台風がこれからも毎年発生するとしたら、私たちの住む場所は限られてしまい、国の財政負担も無視出来なくなってきます。

勿論、世界的にも地球温暖化の影響は沢山出ています。(参照:No.4392 ちょっと一休み その679 『世界各地で当たり前になっていく「異常気象」』プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?』

 

さて、番組を通して驚いたのは、ニューヨークに住む高校2年生のカルビン・ヤンさんがグレタさんの影響を受けて、仲間と共に「国連温暖化サミット」を盛り上げるための史上最大規模のデモを企画し、学校に生徒たちが平日にデモに参加出来るようにするために授業を休むことを正式に許可して欲しいと訴えた時の学校の対応です。

なんと学校を欠席する許可を与えたのです。

そして、学生主任のエリック・デールさんの意識までも変えてしまったのです。

更に驚いたのは、ヤンさんたちの熱意は行政をも動かしたことです。

ニューヨーク市や市内の公立学校に通う110万人の児童や生徒にデモの参加のための欠席許可を出したのです。

 

トランプ大統領が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したように、最近のアメリカは地球温暖化問題に国として積極的に取り組む姿勢が感じられませんが、一方で今回ご紹介したように、ニューヨーク市では生徒たちのデモ参加の提案を受け入れて欠席許可を出していたのです。

またカリフォルニア州では、以前からトランプ大統領の政策に反して独自に地球温暖化問題や環境問題に積極的に取り組んでいます。

こうしたアメリカ国内での相反する動きにアメリカのダイナミズムを感じます。

 

さて、以前お伝えしたように、救いなのは世界のどこの国の指導者も多くの国民の声を無視し続けることは出来ないということです。

トランプ大統領は次の大統領選挙を意識して、半数以上の有権者の声にとても敏感になっているようです。

ですから、地球温暖化阻止に向けた多くの若者たちの行動が多くのアメリカの有権者の意識を変えることが出来ればトランプ大統領の地球温暖化関連の政策を転換させることも可能なのです。

 

翻って、こうしたアメリカの動きに対して日本国内の動きはどうでしょうか。

国内において、過激とも思われる生徒たちからのこうしたデモ参加の許可を学校に願い出たとしても、許可されることはなさそうです。

私も含めて多くの国内の大人たちはそもそも生徒が平日のデモ参加の許可を学校に願い出るなんていうことは想定外だと思います。

 

しかし、現実に地球温暖化による影響が更に大きくなってきて、政府の対応が十分でなければ、いずれ日本国内においても若者を中心に地球温暖化阻止に向けた運動が無視出来ないほどの広がりを見せると思います。

同時に、アメリカ同様に一部の自治体や企業の中にもこうした若者の行動に賛同するところが出て来ると思います。

 

いずれにしても地球温暖化は私たちの想像以上の速さで進行しているようです。

ですので、地球温暖化に関する科学的なデータに基づき、若者たちの手を煩わせることのないように、対策の主体者である大人たちが地球温暖化問題に真摯に向き合うことが必要なのです。


 
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