2019年05月30日
アイデアよもやま話 No.4342 衣服廃棄問題の切り札!

1月29日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で衣服廃棄問題の切り札について取り上げていたのでご紹介します。 

 

日本で1年間に売れる衣服の数は約13億着と1990年以降ほぼ横ばいです。

ところが供給量は2倍以上の約28億着に増えています。

その差、約15億着が余剰在庫、つまり売れ残りということになり、ブランドイメージを保つために廃棄処分されるものも少なくありません。

こうした状況を食い止めようと、“改名”をキーワードに新しい取り組みを始めた企業があります。

 

のどかな奈良市の郊外、その一画にある工場の中には洋服がズラリと並んでいます。

実は、ここにある洋服は様々なアパレルメーカーの売れ残り品を買い取ったものなのです。

この事業に取り組んでいる株式会社FINE(ファイン)の津田 一志COOは次のようにおっしゃっています。

「まさに洗濯ネームの付け替え作業をやっておりますね。」

「会社さんの名前が分かってしまうとどこのブランドか分かってしまうケースもありますので、うちの会社名に変更しております。」

「在庫を販売した先で大幅に値下げされると元々のブランドイメージに良くない影響が出てしまうと思うんですよね。」

「やっぱりそういったものをいかに防ぎながら在庫を有効活用するか・・・」

 

ブランド名や企業名が書いてあるタグを切り外し、別のタグに付け替えていました。

もとのブランドが分からない状態にして「リネーム」というブランドに“改名”して販売するのです。

例えば人気のショップで取り扱っているイタリア製のワンピースは正規の価格が約1万4000円を約4割値引きの約8000円で販売します。

また、百貨店でも展開するブランドのニットは正規の価格が約1万2000円を7割以上の値引きの約3000円とかなりお買い得で販売します。

仕入れた量やサイズなどで価格は変わりますが、多くは定価の3割〜7割の価格で販売しているといいます。

衣料品の在庫を買い取り、様々なルートで販売するビジネスをきっかけに2016年に「リネーム」はスタートしました。

わずか2年ほどで約25万点を販売し、ブランドは急成長しています。

津田COOは次のようにおっしゃっています。

「元々は企業さんの在庫の問題を解決したいというところから始まって、廃棄をしているという現状も知りましたので、廃棄をしているということが世の中に出てしまった場合に、それ自体がブランド毀損になってしまう、そういった考えも増えてきていると思います。」

 

ブランド名がなくなることによって高品質の商品を安く購入出来ること以外のメリットについて、津田COOは次のようにおっしゃっています。

「若い子向けのブランドは、年上の方は手に取らないと思うんですけども、その中でも年上の方が着ても似合うものであったりとか、気に入るものって絶対にあると思いますので、そういった機会は作れているのかなと思っていますね。」

 

今後も商品ラインアップや販路を拡大し、消費者に知ってもらう機会を増やしたい考えです。

津田COOは次のようにおっしゃっています。

「適切に消費者の方がものを選ぶということになっていかないと、中々在庫の問題とか解決していかないかなと。」

「少しでも伝わるような活動をしていけたらなと思っております。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず驚くのは、日本で1年間に売れる衣服の数は1990年以降ほぼ横ばいですが、供給量は2倍以上の約28億着に増えており、その差、約15億着はブランドイメージを保つために廃棄処分されるものも少なくないという事実です。

しかし、衣服の需要を正確に予測することはまず不可能ですから、売れ残りが出てくるのは仕方ありません。

また、ファッションデザイナーの仕事も芸術家などと同様に自由な発想、あるいは独創性が求められますから、必ずしも万人受けする売れ筋商品ばかりが販売されるとは限りません。

 

しかし、問題は売れ残り商品の扱いです。

地球環境問題や省エネに世間の関心が高まりつつある中、またSDGs(参照:アイデアよもやま話 No.3729 これからの企業存続の重要要件、SDGsとは・・・)という概念が浸透しつつある中、これまでは当然のごとく廃棄処分をしていたことが見直されるようになってきたのです。

 

そうした中、株式会社FINEの取り組みは、ブランド名や企業名が書いてあるタグを切り外し、別のタグに付け替えるというアイデアの実践で、まさに衣服廃棄問題の切り札と言えます。

この事業は、元々のブランドイメージを傷付けることなく、購入者はブランド品を安く手に入れることが出来、更にこれまでの廃棄処分による資源の無駄を削減出来るのですから、まさに“三方良し”(参照:アイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え! )です。

ただ、いずれにしても最後は廃棄処分になる場合があるのですが、この問題についても更なるリサイク技術の進化により新しい資源としての用途が求められます。

 

なお、これまで何度となく繰り返しお伝えして来た食品ロス(参照:アイデアよもやま話 No.3494 世界的な課題、食品ロスの削減!)についても、最近はコンビニ業界で売れ残り商品の割引やポイント還元など様々な取り組みに積極的になってきました。

 

今、私たち人類が目指すべきはあらゆる面での“持続可能な社会”の実現です。

ようやく日本においてもこの必要性が徐々に広がり、企業も積極的な取り組みを本格的に始め出したようですが、こうした傾向はとても望ましいと思います。


 
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