2016年09月13日
アイデアよもやま話 No.3494 世界的な課題、食品ロスの削減!

まだ食べられる食品を捨ててしまう食品ロスについてはこれまで何度となくお伝えしてきました。

そうした中、6月24日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で食品ロスについて取り上げていたのであらためてご紹介します。

 

国内で1年間に出た食品ロスは約632万トンといいます。(2013年度推計)

これは世界中で行われている途上国などへの食料援助量の約2倍に相当します。

食品ロスは日本だけでなく各先進国の間でも共通の課題になっています。

今年5月に行われたG7の環境相会合でも2030年までに世界全体の1人当たりの食品廃棄量を半減することを目指し、各国が強調して取り組むことで一致しました。

食品ロスを減らすことは食べ物がもったいないからということにとどまらず、企業にとってはコストの削減、消費者にとっても無駄な支出を減らすことにつながります。

 

こうした中、企業、消費者の間で意識を変えて向き合おうという動きが新たに起きています。

群馬県のある豆腐メーカーは今、日持ちしない豆腐を余分に製造しないよう新たな試みを始めています。

これまでこのメーカーは毎日のように多くの商品を廃棄してきました。

小売りからの注文には必ず応えなければならないため、商品を多めに作らざるを得なかったのです。

少しでもこのロスを無くそうと、経験や勘を頼りに計画を立ててきましたが、見込みが外れることも多く、こうしたコストが重荷になっていました。

 

そこで、こちらの豆腐メーカーがタッグを組んだのが日本気象協会(東京都豊島区)です。

日本気象協会では今、蓄積した気象データをもとに企業活動を支援するサービスを行っています。

まず選んだのは夏によく売れる寄せ豆腐です。

日本気象協会は過去1年間の気温の変化と販売数の関係を徹底的に分析し、一つの傾向を導き出しました。

寄せ豆腐は熱さが続いた日よりも前の日に比べ気温が大きく上がった時に需要が伸びていました。

“暑くなった”と感じることがポイントだったのです。

こうした新たに作られた需要予測では、食べたくなる度合いを寄せ豆腐指数として表しました。

豆腐メーカーはこのデータを参考にして翌日、翌々日の生産量を見直します。

その結果、昨年度は寄せ豆腐の食品ロスが約30%も減少し、およそ1000万円のコスト削減につながりました。

 

一方、消費者の間でもこれまで捨ててしまっていた食品を大切にして見直していこうという取り組みが広がっています。

その一つが、以前アイデアよもやま話 No.3267 ”食品ロス”への新たな取り組み その3 ”サルベージパーティ”で楽しく”食品ロス”を削減!でもご紹介したサルベージパーティです。

ちなみに、サルベージとは「救い出す」という意味です。

何人かで持ち寄った台所や冷蔵庫に眠っていた食品をプロの料理人にアドバイスをもらい、一味違った料理を作ってみんなで楽しもうというのです。

 

また、食品ロスを減らしたいという消費者とメーカーを結びつけようという動きも出ています。

ある主婦が最近買い集めているのは賞味期限が近づいたり、パッケージが傷ついたりしている食品などです。

きっかけとなったのは、アイデアよもやま話 No.3266 ”食品ロス”への新たな取り組み その2 買い物をして支援につなげる通販サイト! でもご紹介した通販サイトKURADASHIです。

加工食品を中心に5割から9割ほど割安で販売されています。

こちらの主婦は、こうした商品を手にする中で食品ロスへの理解が深まっていったといいます。

 

この通販サイトの運営会社、グラウクス株式会社(東京都渋谷区、代表取締役 関藤 竜也)がこのサービスを始めるにあたって、課題だったのはメーカーから商品を集めることでした。

食品メーカーの中には値下げして販売することはブランドイメージの低下につながると抵抗感を示すところもあるといいます。

そこで、このサイトでは売り上げの一部が慈善団体などに寄付される仕組みにして社会貢献にもつながるようにしました。

現在、企業の数は当初の100社から250社に増えています。

関藤さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「協賛したいただけるメーカーさんは立派な企業だという見え方を作るのも非常に大切なことだなと(思います)。」

「メリットがある、ディメリットが無いような流れを作る必要があるというふうに考えています。」

 

こうした動きの背景には、もったいないという感覚に加えて、環境問題やコストへの消費者の意識の高まりがあると見られています。

 

食品ロスに関する課題を解決するため、食品ロスを生み出す原因になっている商慣習を変革していこうという動きも出ています。

それは3分の1ルール(参照:アイデアよもやま話 No.2330 厳しすぎる食品の賞味期限の「3分の1ルール」! )と呼ばれている商慣習です。

そもそもは、消費者に新鮮な食品を届けるためでしたが、食品ロスを減らそうと食品業界はルールを緩和し、一部で廃棄のタイミングを遅らせています。

 

食品ロスは販売のチャンスを逃したくないメーカーや小売りが消費者の新鮮さを求める強い意識に応えようとした結果だと指摘されています。

食品を廃棄すれば、原材料費などは無駄になりますし、廃棄費用も必要です。

これらの費用は最終的には価格に上乗せされ、私たち消費者の負担になります。

ですから、今日使うことが分かっているのに賞味期限が長い食品を選ぶ必要があるのかなど、買い物の時に考えてみるなど、消費者も今の消費のあり方を見直すことも必要ではないかと番組では指摘しています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、今や食品ロスは世界的な関心事であり、G7でも取り上げられたように世界共通の課題なのです。

そこで、食品ロス問題を解決した場合のメリットを以下にまとめてみました。

・メーカーの製造コストの削減

・廃棄食品の廃棄費用の削減

・食品の値下げ

・地球環境悪化の抑制

・地球温暖化の抑制

 

こうしてみると、食品ロスを無くすことは、消費者にとっても、メーカーにとっても、そして地球にとってもそれぞれメリットがあるのです。

ですから、私たちはそれぞれの立場で食品ロスの削減に全力で取り組むことが求められているのです。

なお、番組では触れられていませんでしたが、メーカーによる食品の賞味期限を延ばす取り組みや冷蔵庫の中の食品の賞味期限の見える化も食品ロスを減らす有効な手段だと思います。

 

食品ロスは単に食べ物が“もったいない”という一言では片づけられないのです。


 
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