2018年06月07日
アイデアよもやま話 No.4036 ユーグレナが遺伝子解析サービスに参入!

遺伝子解析については、これまでアイデアよもやま話 No.2547 遺伝子解析で潜在的な才能が明らかに! などで何度かお伝えしてきました。

そうした中、3月1日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でユーグレナによる遺伝子解析サービスへの参入について取り上げていたのでご紹介します。 

 

ミドリムシの研究を行っている株式会社ユーグレナ(参照:アイデアよもやま話 No. 1916 ミドリムシからバイオ燃料!)は遺伝子解析サービスを行うと発表しました。

この遺伝子解析サービスは、自分の体質を知ることで生活習慣病などの予防が出来るのです。

様々な企業の参入が相次ぐ中、業界の抱える課題も見えてきています。

ユーグレナの出雲 充社長は次のようにおっしゃっています。

「生命科学とITを掛け合わせた新領域に当社は新しく参入させていただくと。」

「科学的であって、信頼出来るパーソナルな健康情報サービス産業としては世界一を目指して努力していきたいと。」

 

バイオベンチャーのユーグレナは、3月1日から個人向けの遺伝子解析サービスを始めたことを発表しました。

新サービスでは、唾液を専用キットで採取して郵送するだけで、がんや糖尿病にかかり易いかなど、約300項目を分析します。

ちなみに、このサービス、ユーグレナ・マイヘルスの価格は2万9800円(税抜き)といいます。

 

人によって異なる遺伝子の情報をもとに、個人個人に合った健康に関する様々なサービスを提供していきます。

実際に遺伝子の解析を行うのはユーグレナが昨年買収した株式会社ジーンクエストで、2013年に創業した東京大学発のベンチャーです。

一般の消費者に向けた遺伝子解析サービスやそこで蓄積したデータを分析する研究などを手掛けてきました。

ジーンクエストの高橋 祥子社長は次のようにおっしゃっています。

「技術はあっても知っている方というのは少ない領域ですので、それをより多くの方にお届け出来る顧客基盤ですとか、マーケティング力というところはユーグレナさんに期待しているところですね。」

 

遺伝子解析サービスは2014年にヤフーやDeNAなどIT大手企業の参入で一気に注目が高まりました。

ちょうどその頃、技術の進歩によって解析にかかるコストが劇的に下がったこともあり、サービスを提供する企業が一気に増えました。

 

多くの企業の参入に伴い、問題も表面化しました。

究極のプライバシー条項である遺伝子情報をずさんに扱う業者も現れました。

こうした中、2016年には業界団体である個人遺伝子情報取扱協議会が自主規制を設定、個人情報の取り扱いなどを定めた独自の規制に則って運営する事業者に認定書を交付する制度を設けました。

ただ、現在認定を受けている事業者は第一回の9社のみで増えていません。

こうした状況に街の声は不安感を隠せません。

 

また、昨年12月に厚生労働省が公表した調査では、本人の同意無しに個人データを第三者に譲渡してはいけないなど、「国のガイドラインに従っている」と答えた業者は56%に過ぎず、4割近くが従っていませんでした。

この調査を担当した北里大学の高田 史男教授は次のようにおっしゃっています。

「(管理がずさんな状況はあるかという問いに対して、)ありますね。」

「個人情報の中でも個人遺伝情報は究極の個人情報と言われてますけれども、医療の現場では遺伝子診断などの解析結果の取り扱いは非常に慎重に扱います。」

「残念ながら、日本の整備状況はかなり未成熟な段階にあると。」

「きちっとした体制のためには、国による規制が必要になるのかなと私は考えます。」

 

個人の遺伝子情報の取り扱いなど、普及につれて問題も露呈する遺伝子解析サービス、新規に参入するユーグレナの出雲 充社長は次のようにおっしゃっています。

「バイオテクノロジーというのは、皆さんが想像しているよりも非常に進歩が速いんです。」

「この速い分野で、技術の方が先に来ている部分もありますから、これを社会や行政がどう判断するのかというのをこれから皆でしっかり議論するということが求められると思います。」

 

このように新規に参入する企業がある一方で、撤退する企業も出て来ています。

2014年にこの市場に参入したファンケルは予定よりも利用者が少なかったということもあり、昨年撤退しています。

業界全体がより成長していくには、信頼性の向上が欠かせないのかも知れません。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず、国内の健康を取り巻く環境ですが、高齢化の進行とともに現状のままでは医療費の増大は避けられません。

そこで、高齢者に限らず国民全体が少しでも病気にならない身体をつくる未病対策(参照:アイデアよもやま話 No.3532 驚くべき古の東洋医学 その4 平安時代の未病対策!がとても重要になってきます。

同時に今回ご紹介した遺伝子解析サービスなどにより、個人個人がより多くの病気に対するかかり易さを把握することも重要です。

 

そこで今回ご紹介したように、遺伝子解析技術の進歩、およびこうした背景もあり、今後ともベンチャー企業も含めた多くの企業の参入が見込まれます。

そうした場合、ユーグレナがジーンクエストを買収したように、技術力、販売力、経営力などを併せ持った総合力を高めるための取り組みがなされます。

 

現在でも人間ドックや地方自治体から毎年送られてくる特定健康診査受診券などの検査制度がありますが、いずれも指定された病院まで行く必要があります。

なので、こうした制度があってもついつい検査をしない方もおられると思います。

しかし、今回ご紹介した遺伝子解析サービスは、唾液を専用キットで採取して郵送するだけなので誰でも検査を受けやすいというメリットがあります。

一方で、ユーグレナ・マイヘルスの価格は3万円を超える(税込み)ので、個人で検査を受けるには料金的にハードルが高過ぎます。

ですから、せめて個人の負担する検査料金が5000円くらいに収まるような状況が求められます。

 

同時に必要なのは、個人遺伝子情報取扱協議会による自主規制や本人の同意無しに個人データを第三者に譲渡してはいけないなどの「国のガイドライン」という単なるガイドラインではなく、一定の資格を持った業者の登録制です。

番組でも指摘されているように、個人情報の中でも個人遺伝子情報は究極の個人情報と言われております。

また、こうした個人情報は一旦流出すれば、拡散してしまう可能性が高いです。

ですから、最高レベルの個人情報保護が求められるのです。

また、こうした保護に対する信頼性が実感出来なければ、せっかくの遺伝子解析サービスも普及させることは難しいと思います。


 
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