2013年09月04日
アイデアよもやま話 No.2547 遺伝子解析で潜在的な才能が明らかに!
7月7日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)のテーマは「あなたは未来をどこまで知りたいですか〜運命の遺伝子〜」でした。
番組を通して、遺伝子関連について3回にわたってお伝えします。
3回目は潜在的な才能を明らかにする遺伝子解析についてです。
 
世界中で行われている遺伝子に係わる膨大な研究、その中で遺伝子と才能の対応を解き明かそうという研究が急速に進んでいます。
例えば、運動、持久力に欠かせない血液の酸素供給に係わる遺伝子が注目されています。
新人兵士を調べたイギリスの研究によってある配列の人は持久力が優れている可能性が明らかになりました。
リズム感に関するイスラエルの研究もあります。
85人のプロのダンサーと一般の人を比較したところダンサーにはある場所の配列が長い傾向があることが分かりました。
 
こうした研究の成果が中国で子どもの英才教育に使われ始めています。
ある幼児向けのジムではダンスや歌、国語や算数など様々なコースに分かれて子どもたちが習い事に励んでいます。
子どものどんな才能を伸ばせばいいのか、それを決めるために遺伝子検査が導入されています。
遺伝子検査では、こだわり・持久力、リズム感、音感、色彩感覚など、18種類の遺伝子が判定に使われています。
それらを総合して、学力、感性、音楽、絵画、ダンス、スポーツの6つの分野への向き不向きが分かるとしています。
 
ある7歳の男の子は、遺伝子検査がきっかけでダンスの才能を開花させ、習い始めて2年で全国レベルの選手に育ちました。
両親は我が子の思わぬ成長に驚いたといいます。
 
この検査には世界中から依頼が殺到し、日本でも既に3000人以上が利用しているといいます。
潜在能力の予測を教育に応用する試みはまだ始まったばかりで、これから更に研究が進んでいくと思われます。
研究が進むと、赤ちゃん誕生の瞬間にその子の持つ潜在能力がほぼ分かってしまうのです。
 
子どもの将来を知りたいという親の願いは今受精卵の遺伝子にまで及んでいます。
アメリカに受精卵の遺伝子検査の依頼が殺到している会社があります。
体外受精した受精卵に将来どんな病気のリスクがあるかを調べます。
複数の受精卵から一番リスクの低いものを選んで妊娠したい、その判断材料として遺伝子の情報を知りたいという親たちが送ってくるのです。
検査が可能な病気はおよそ500種類、一つの病気につきおよそ35万円で分析を行っています。
ちなみに、日本では重篤な遺伝性疾患の可能性がある場合などに限り、受精卵の検査が認められているといいます。
でも、これから子どもを産みたいと望んでいる親の立場からすれば、少しでも健康な子どもを産みたいと強く思うはずです。
そして、それが金銭面でも制約がなければ、病気のリスクについて海外の検査機関にでも依頼したいと思うでしょう。
この検査がビジネスととして成立するならば、どこかの国でこのような検査を禁止しても、必ずどこか別な国では検査を許可する国が出てきます。
 
さて、北京ゲノム研究所では天才の遺伝子に迫ろうという研究が今進んでいます。
中国のこの研究所では知能指数160以上の人たち、2200人分の遺伝子を集め、共通する配列を探しています。
なぜ知能指数が高い人たちがいるのか、どうして能力に差があるのか、そのメカニズムの一部を解明しようとしているのです。
今後、研究が進むと、受精卵の段階から人の才能の違いまで分かるようになるかも知れません。
 
このようにみてくると、人類の未来はどうなってしまうのかとても不気味に感じられてきます。
そうした中、番組ゲストの豊橋技術科学大学の榊 佳之学長は番組の最後に次のようにおっしゃっています。
「人類は多様じゃないと生き物としてタフではないんですよね。」
「例えば、いろいろな感染症がある、エイズとかその他いろいろ、あれでも必ず多様だからそういうことが起きてもタフに生き残る人たちがいるんですよ。」
「いっしょだったら、みんなバタンて倒れて人類おしまいということになりかねないですね。」
「遺伝子とかゲノムというのは基本設計図で、家に例えていうと、中にはちょっと壁に傷があったり、柱に問題があったりといろいろ問題を抱えているんですね。」
「でも、家はいいんですよ、家の中をどれだけ楽しくするかとか、にぎやかにするとか、豊かにするとか、そういったものは実は遺伝子ではなくて、それぞれが生きている人生の中のいろんな環境であったり友達であったりいろんな自分の思いであったり、そういうものだと思うんです。」
「遺伝子はそれを助けてくれる材料かなと思うし、(遺伝子の)情報をいろいろ自分の人生を豊かにするために使うのがいいと思うんですけどねぇ。」 
 
榊さんのおっしゃるように、遺伝子情報は一人一人それぞれの人の人生を豊かにするためのものであって欲しいと思います。
でも、技術の進歩と共に、遺伝子情報に限らずついついその壁を越えた使い方をしてしまうというのが今まで人類の歩んできた道です。
ですから、早めに国際的な歯止め策が検討される必要性を感じます。
何でもかんでもアイデアをかたちにしてしまうことは人類にとっても地球にとっても良くないのです。

 
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