2016年12月24日
プロジェクト管理と日常生活 No.469 『今求められるビジネス戦略 ー 販売開始時に撤退ポイントを決定!』

10月17日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で について取り上げていたのでご紹介します。

 

ロボット掃除機の市場はこの5年で2、3倍に急拡大しており、今後販売競争が一段と厳しくなると見られています。

こうした状況について、番組のコメンテーターで、ボストンコンサルティンググループの秋池 玲子さんは次のようにおっしゃっています。

「過去のいろいろな産業を見ていますと、やはりどうしてもみんなが同じ市場を目指していることによって、過当競争で供給が過剰になって価格が落ちていって、収益が上がらなくなるっていうことがいろんな業界で見られますね。」

「で、今のところロボット掃除機は市場が伸びていますのでそれほど値段は落ちずに出来ているようなんですけども、でもいずれまた似たような状況が起こる可能性もないとは言えない。」

「だから、やるからには絶対成功するつもりで取り組む、だけれどもその成功の定義は何で、何を失敗なのか、どうであったら撤退するのかということを先に決めておくのが大事だと思うんですね。」

「ていうのは、一度始めると一生懸命やっている人に対して経営者としても「止めなさい」って中々言いにくいし、やっている本人たちも割り切れないところが・・・」

「だから事前に(成功、失敗、そして撤退の条件を)決めておく、でもやるからには成功するようにやるんだけども、それを達成出来なかったら止めるってことも大事だと思います。」

「(それはどんな事業でも同じかという問いに対して、)同じですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

秋池さんのおっしゃるように、どんなに素晴らしい商品と言えども例外なく一通り市場に行き渡ったところからやがて衰退期を迎えていきます。

また、衰退期を迎える前に、マーケットから注目を集め出すと、他社からも競合商品が市販化されますから激しい競争にさらされます。

ましてや、厳しい業界競争下において多くの商品は当初の期待通りに売り上げが伸びずに次々に撤退していくというのが現状です。

そうした状況において、企業が個々の事業を進めるにあたって少しでも経営の健全性を高めておくためには、個々の事業において事前に成功、失敗、そして撤退の条件を明確に決めておくことが必要であるという秋池さんの指摘はとても理に適っていると思います。

こうした対応こそ企業存続のリスク対応策を検討するうえでのベースとなるものです。

例えば、実際の商品開発、あるいは販売開始時において、こうした条件をもとにチェックポイント(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.116 『チェックポイントはマスター・スケジュールの重要な通過点!』)を設定し、その時々のチェックポイントにおいてどのような対応が必要かの決定が下されます。

また、万一失敗した場合の事後対応策、すなわちコンティンジェンシープランは撤退の条件を元に実行に移されます。

誰しも事業を始める時、あるいは販売開始時に失敗や撤退のことに考えを巡らすのは気の進まないことです。

しかし、企業の存続を真剣に考えれば、こうした冷徹な目を持つことが必要なのです。

 

これまでお伝えしたブログの中から今回ご紹介した内容に関連する具体的な事例を2つ以下にご紹介します。

一つ目は、プロジェクト管理と日常生活 No.129 『3割の力が残っていれば再起可能』でお伝えしたように、大胆な決断、および果断な実行力で事業を進められているソフトバンクの孫社長も企業としての存続を大前提に置いて、新事業に取り組む際の投入資金の制限を設定しているのです。

 

二つ目は、プロジェクト管理と日常生活 No.390 『「玉砕」という言葉に隠された太平洋戦争における大本営によるチェックポイントの未設定』でお伝えしたように、戦争を始める際にも、あらかじめどのような戦況になったら撤退、あるいは降参するかという要件を明確にしておけば大勢の犠牲者を出さずに済む、あるいは国を危うくさせずに済むのです。

そういう意味で、太平洋戦争における「特攻」、あるいはあらゆる戦場での「玉砕」は全くこうした考え方を持たなかった“反面教師”と言えます。


 
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