2024年04月11日
アイデアよもやま話 No.5866 アジアの“脱炭素”でカギを握る日本企業!?
昨年12月18日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアジアの“脱炭素”でカギを握る日本企業について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

世界のCO2排出量の6割を占めるのがアジアですが、アジアの“脱炭素”化を進めるための首脳会議が今日、東京で初めて開かれました。
日本が主導する枠組みで、カギを握るのが日本の企業と技術です。

今日、東南アジアの首脳などが勢揃いした総理官邸、その目的について、岸田総理は次のようにおっしゃっています。
「“脱炭素”はアジアの共通課題です。」
「日本は先頭に立って、技術開発、導入加速のための法制度の整備を進めていきます。」

開かれたのは、東南アジアの9ヵ国とオーストラリアで作る“脱炭素”を進める枠組み「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体 こちらを参照)」、初の首脳会議です。
AZECでは、石炭火力発電の廃止を進める欧米とは一線を画し、各国の事情に応じた再生可能エネルギーへの転換を進め、同時に経済成長も実現するのが狙いです。
会合に合わせ、東南アジア各国と日本企業との協力に関する覚書も30以上締結されました。
例えば、総合商社の双日株式会社がインドネシアの大手不動産開発会社と結んだ覚書は、工業団地“丸ごと脱炭素化”プロジェクトです。
8割以上を石炭などの化石燃料による発電に依存しているインドネシア。
双日は、商社のネットワークを駆使して太陽光やバイオマス、水素やアンモニアの活用などを通じ、インドネシア最大の工業団地を“丸ごと脱炭素化”することで合意。
CO2排出量の大幅な削減を目指します。

更に今日、カンボジアの鉱業・エネルギー庁と覚書を結んだのがバイオマス発電事業を展開するイーレックス株式会社。(参照:アイデアよもやま話 No.4991 CO2ゼロ水素発電所が今年度内に国内初の商業運転を開始!
現在、大分県など、国内5ヵ所で植物など、自然由来の資源を燃料とするバイオマス発電所を展開しています。
燃料として使うのは、パーム油を抽出した後のパームヤシの殻や木の廃材などから作ったペレット。
燃やす時にはCO2を排出しますが、これらの木は光合成でCO2を吸収するため、それらが相殺されることでカーボンニュートラルになるのです。
イーレックスの本名均社長は次のようにおっしゃっています。
「カンボジアではカシューナッツの殻とかアカシアのチップなどが大変豊富に存在しています。」
「ほとんど使われておりません。」
「それらを中心にバイオマスの燃料として使っていこうと・・・」

カンボジアはバイオマス発電の燃料となる資源が豊富なことから2030年までに5基のバイオマス発電所の建設を目指すといいます。
更にカンボジアでのバイオマス発電のために作った自然由来の燃料を将来的に日本に輸出することも検討しているといいます。
本名社長は次のようにおっしゃっています。
「地元の企業も我々と「一緒にやりたい」と言ってきてますので、しっかりと長期にわたってやっていきたい。」

更に、機械部品や電子部品を製造するミネベアミツミ株式会社(東京・港区)は、カンボジアで新たに太陽光発電事業に参入することについてカンボジア政府と覚書を締結しました。
将来的に太陽光で発電した電力などを使って、カンボジアにある自社工場の電力も全て賄うといいます。
締結直後、狙いを聞くと、ミネベアミツミの貝沼由久社長は次のようにおっしゃっています。
「(カンボジアに)7000名の従業員がおりますし、これから、その規模をもっと大きくしていこうということで、沢山の製造業への投資を誘致出来ると。」

実は、ミネベアミツミは、フィリピンの工場で大規模な太陽光発電システムを既に設置し、“脱炭素”の取り組みを進めています。
貝沼社長は次のようにおっしゃっています。
「フィリピンでもやって、今回、カンボジアをやって、今度はタイでもやりたいと。」
「この辺が、我々の中で輸出の約50%を占めています。」
「我々が進出している所で、少しでもカーボンフリーの電気を使っていきたいと。」

こうした日本企業の取り組みについて、来日したカンボジアのラタナック鉱業・エネルギー大臣は次のようにおっしゃっています。
「私たちも日本企業ともっと協力していきたい。」
「2050年までに一緒に成功を目指す。」
「気候変動と闘うためには、一国だけでは達成出来ない。」
「協力して取り組んでいく。」

取材したキャスター、中垣正太郎さんは次のようにおっしゃっています。
「(日本はASEANに相当コミットすることになりますが、)そうですね。」
「政府関係者に話を聞いてみますと、ASEANの国々の中心に、欧米への技術依存に対して、歴史的に警戒感があることですとか、あるいは中国などのように利権を求めず、これまで日本がASEANの国々への開発援助を続けてきたことも評価されて、今回のAZECにつながったと話していました。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。

(初のAZECの首脳会議開催)
・アジアは世界のCO2排出量の6割を占めている
・そうした中、昨年12月18日、アジアの“脱炭素”化を進めるための首脳会議が東京で初めて開かれた
・東南アジアの9ヵ国とオーストラリアで作る“脱炭素”を進める枠組み「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)」、初の首脳会議である
 -日本が主導する枠組みで、カギを握るのが日本の企業と技術である
 -この東南アジアの首脳などが勢揃いした首脳会議で、その目的について、岸田総理は次のように述べている
  -“脱炭素”はアジアの共通課題である
  -日本は先頭に立って、技術開発、導入加速のための法制度の整備を進めていく
・AZECでは、石炭火力発電の廃止を進める欧米とは一線を画し、各国の事情に応じた再生可能エネルギーへの転換を進め、同時に経済成長も実現するのが狙いである

(東南アジア各国と日本企業との協力に関する覚書の締結)
・この会合に合わせ、東南アジア各国と日本企業との協力に関する覚書も30以上締結された

(双日とインドネシアの大手不動産開発会社との覚書の締結)
・総合商社の双日がインドネシアの大手不動産開発会社と結んだ覚書は、工業団地“丸ごと脱炭素化”プロジェクトである
 -インドネシアでは8割以上を石炭などの化石燃料による発電に依存している
 -そうした中、双日は、商社のネットワークを駆使して太陽光やバイオマス、水素やアンモニアの活用などを通じ、インドネシア最大の工業団地を“丸ごと脱炭素化”することで合意した
・CO2排出量の大幅な削減を目指す

(イーレックスとカンボジアの鉱業・エネルギー庁との覚書の締結)
・バイオマス発電事業を展開するイーレックスはカンボジアの鉱業・エネルギー庁と覚書を結んだ
・イーレックスは現在、大分県など、国内5ヵ所で植物など、自然由来の資源を燃料とするバイオマス発電所を展開している
 -燃料として使うのは、パーム油を抽出した後のパームヤシの殻や木の廃材などから作ったペレットである
 -燃やす時にはCO2を排出すが、これらの木は光合成でCO2を吸収するため、それらが相殺されることでカーボンニュートラルになる
 -カンボジアはバイオマス発電の燃料となる資源が豊富なことから2030年までに5基のバイオマス発電所の建設を目指すという
 -更にカンボジアでのバイオマス発電のために作った自然由来の燃料を将来的に日本に輸出することも検討している

(ミネベアミツミとカンボジア政府との覚書の締結)
・機械部品や電子部品を製造するミネベアミツミはカンボジアで新たに太陽光発電事業に参入することについてカンボジア政府と覚書を締結した
・将来的に太陽光で発電した電力などを使って、カンボジアにある自社工場の電力も全て賄うという
・ミネベアミツミでは、カンボジアに7000名の従業員がおり、今後、その規模を拡大していくということで、沢山の製造業への投資を誘致出来ると見込んでいる
・ミネベアミツミは、フィリピンの工場で大規模な太陽光発電システムを既に設置し、“脱炭素”の取り組みを進めている
・ミネベアミツミは、フィリピン、今回のカンボジアに続いて、タイでも展開するという

(AZECと日本との結びつきの背景)
・政府関係者は、今回のAZECと日本との結びつきの背景について、これまで日本がASEANの国々への開発援助を続けてきたことも評価されていると指摘している

こうしてまとめてみると、世界的な視点から “脱炭素”化の対応策を考えるうえで以下のような前提条件が見えてきます。
・アジアは世界のCO2排出量の6割を占めていること
・アジアの多くは途上国であること
・途上国は一般的に電力供給源として化石燃料による火力発電を使用していること

そこで、地球全体で現実的に“脱炭素”化を図るためには、アジアの途上国向けの対応策をどうするかを解決することが避けて通れないのです。
また、この対応策が成功出来れば、他の途上国への展開も図ることが出来るのです。
そうした中、日本が主導してアジアの“脱炭素”化を進める枠組み「AZEC」の首脳会議が初めて東京で開かれたことはとても有意義です。
なぜなら、日本の2022年度における発電割合は、石油によるものが8.2%、石炭が0.89%、天然ガスが33.7%となっており、エネルギー供給は化石燃料による火力発電が72.7%を占めており(こちらを参照)、日本も同じ課題解決に取り組まなければならない立場にあるからです。
また、日本には“脱炭素”化のカギを握る企業と技術があるからです。
そして、この会合に合わせ、東南アジア各国と日本企業との協力に関する覚書も30以上締結されたことは「AZEC」に取り組むうえで大きな一歩と言えます。

そして、今回ご紹介した、双日、イーレックス、ミネベアミツミの取り組みは、それぞれ自社の強み、および相手国の置かれた状況を生かした、理に適った組み合わせだと思います。

なお、CO2については、火力発電所などから排出されたCO2を回収し、地中に閉じ込めるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)CCS(参照:アイデアよもやま話 No.1334 CO2を地中に閉じ込める技術CCSに注目!)という技術も実用化されています。
ですから、CO2排出量の削減が目標に達しない場合に備えて、CCSも同時並行的に取り組むことも検討すべきだと思うのです。

 
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