2024年03月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.862 『進むネット上の誹謗中傷対策!』
ネット上の誹謗中傷関連については、これまで以下のようにお伝えしてきました。

プロジェクト管理と日常生活 No.775 『サッカーのW杯 カタール大会であった選手への中傷について』

プロジェクト管理と日常生活 No.841 『YouTuberへの誹謗中傷対策の検討会設置!』

そうした中、昨年11月28日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で最近のネット上の誹謗中傷事情について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

SNSなどに投稿される誹謗中傷が問題となる中、今日、総務省の有識者会議は対策案を取りまとめました。
X(旧ツイッター)やグーグルなど、IT大手に投稿の削除などの対応を迅速にするよう求めます。

今日、自民党本部で開かれたインターネット上の誹謗中傷対策についての会合、そこに招かれたのは、4年前、池袋のクルマの暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さん、ネット上で「金や反響目当てで闘っているようにしか見えない」などといった誹謗中傷に悩まされてきました。
松永さんは次のようにおっしゃっています。
「非常に沢山の誹謗中傷を受けているんです。」
「非常に、もうこれは“心の殺人”だなと深く思いまして、誹謗中傷問題に対しても活動していこうと。」

こうしたSNSでの誹謗中傷について、街で訊いてみると。
女性:
「容姿とかについて、すごいクラスの男の子が悪くコメントしてて、それが学年に回っちゃって、その子が学校に通えなくなったことが中学時代にありました。」

女性:
「(SNSでは)偏見とかもいろいろ言われて、「遊んでいそう」とか、そういうふうに言われるから、嫌なコメントがあったら、こっちが見る前に消して欲しいと思います。」

SNSの誹謗中傷などに関する相談件数は5745件(2022年度)、内訳をみると旧ツイッターのX(15.3%)、ユーチューブなどを手掛けるグーグル(9,6%)、インスタグラムやフェイスブックを手掛けるメタ(4.1%)と、海外企業が上位を占めます。
誹謗中傷の削除を事業者に依頼したい場合、例えば、Xでは「設計とサポート」から「ヘルプセンター」を選び、続いて右上の「問い合わせ」をクリック、その後、「安全性に関する懸念」を選ぶと、誹謗中傷に関する投稿を報告出来ます。
他のSNSでもこうした削除依頼の窓口はありますが、先ほどの松永さんは次のようにおっしゃっています。
「現在の、このSNSのプラットフォームの上で、非常にどこに通報していいのか、どこに相談していいのかが分かりづらいという体験をしました。」

こうした中、誹謗中傷の問題について議論してきた総務省の有識者会議が今日、対策に関するとりまとめ案を公表しました。(こちらを参照)
SNSなどの事業者には、迅速、かつ適切に削除する責務があるとしています。
具体的には、削除の判断基準や手続きに関する削除指針を作って公表すること、その上で削除の要請があった場合、1週間程度で対応することが適当としました。
また、削除したかどうかの結果と、その理由をユーザーに説明することも求めるとしています。
鈴木総務大臣は次のようにおっしゃっています。
「報告書案の取りまとめは年内に予定されておりまして、総務省としましては、その議論の結果を踏まえ、必要な対策を速やかに講じたいと思います。」

今回の報告書を受け、自民党は来年の通常国会での関連法案の改正を目指し、議論を進めていく方針です。

SNSを安心して利用してもらうために自主的に対策を進めている企業もあります。
ゲームアプリのプラットフォームを手掛けるグリー、ユーザー同士がSNSで交流するコンテンツを扱っています。
そこで問題となっていることについて、グリーの政策企画グループの小木曽健さんは次のようにおっしゃっています。
「文字のやり取り、コミュニケーションも当然、出来ますので、ちょっと、諍いが起きたり、けんかになってしまう、誹謗中傷が起きる。」

誹謗中傷を取り締まるために、グリーはすぐに通報出来る仕組みを採用しています。
小木曽さんは次のようにおっしゃっています。
「問題が起きそうな場所、何か攻撃的な投稿が出来そうな場所には必ず通報ボタンがついていますので、(通報理由を)選択していただくと、我々に(攻撃的な)内容を通報することが出来ます。」

チャット欄には「通報ボタン」を用意。
通報すると、法令違反や中傷する投稿などを24時間体制で監視するパトロールセンターに通知が行く仕組みです。
そして、システムの検知とスタッフの確認により、誹謗中傷するコメントに対し、削除や警告を行います。
グリーは今後も社会の変化に対応していきたいといいます。
小木曽さんは次のようにおっしゃっています。
「サービスも変化していきますし、ユーザーや起きる問題も今どんどん変わっていくと思うんですね。」
「迅速に対応出来るようにアンテナを張っていかなければいけないなと思っています。」

海外の対策はどのようになっているのでしょうか。
韓国では過去にネットで中傷を受けた有名人の自殺が相次ぎました。
最近では梨泰院(イテウオン)での雑踏事故を巡り中傷が問題化。
遺族界が要望して、一部ポータルサイトでコメント欄が閉鎖されるなどしています。

韓国企業、カカオが運営する「DAUM(ダウム)」というポータルサイトですが、全てのニュース記事でコメントの書き込みを24時間経ったら消えるシステムを導入しています。
この他にも現在、韓国の大手ポータルサイトの「ネイバー」や「ダウム」では、芸能やスポーツの記事でコメント欄を閉鎖。
またAIで、違反したコメントを監視しています。
韓国では、一時(2007年)、閲覧者の多いポータルサイトなどに「実名制」が導入されましたが、2012年、裁判所が「憲法の自由の観点から違憲」との判断を下し、「実名制」が廃止された経緯があります。
こうした現状に街の人は。
男性(22歳):
「芸能人やスポーツ選手の場合はコメントが制限されている。」
「状況は深刻。」
「匿名性はなくなるべき。」

女性(28歳):
「(コメント欄の廃止は)根本的な問題解決にはならない。」
「書き込む場所を減らすのはいい。」

ネット上の誹謗中傷対策で一歩先を行っているのがEU、ヨーロッパ連合です。
昨年11月、デジタルサービス法が施行され、XやグーグルといったIT大手に対し、誹謗中傷などが投稿された場合に削除を含む対策の強化が義務づけられました。
また、EUの全ての加盟国の言語に対応出来る窓口を設けるよう求めています。
そして対応を怠った企業には、最大年間の売り上げの6%の制裁金が課されます。

一方で今日、総務省の有識者会議で取りまとめた対策案では、罰則については見送られました。
事業者に対し、検閲に近い行為を強いることになり、利用者の表現の自由に制約をもたらす恐れがあることなどが理由です。

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「今回の報告書なんですけど、大いに結構なことだと思いますね。」
「具体的に言うと、大江さん(番組のメインキャスター)とこうして面と向かって話をするのと違うわけですよね。」
「しかも匿名ということになるとSNSでどうしても乱暴な言葉遣いが多くなっちゃうんですよね。」
「それも良くないと思うんですけども、SNSでもう一つ困るのは“なりすまし”のアカウントが多いんですね。」
「そして、削除の要請をするんですけども。」

ここでメインキャスターの大江麻理子さんは次のようにおっしゃっています。
「これは雨後の竹の子のように次から次に出てきて。」
「私も最近被害に遭ったばかりなんですが、私の偽アカウント、200近くあったんですよね。」
「もうビックリしましたし、こんなものが野放しになっているのかというと、信じられない思いでしたね。」

滝田さんは次のようにおっしゃっています。
「はい、その場合、非常に問題なのは、どこに文句を付けたらいいのか、分からないって言う方が多いということだと思うんですよね。」
「そういうプラットフォーム自身が、いわば欠陥があるわけなんですけども、それを野放しにしている事業者、これは無責任だと言わざるを得ないと思います。」
「今回の報告書なんですが、冒頭で削除要請の窓口や手続きの整備を求めると言っていますよね。」
「これは当然の話だと思います。」
「(そして、もう一つ、検討課題として挙がっていたのが、「日本語でも受け付けられるように」っていうことだったのですが、)勿論、事業者は日本語で対応してるんでしょうけども、ここで言っているのは、削除要請のニュアンスですよ。」
「文化的背景を含めて理解出来る人員をちゃんと配備する必要があるってことだと思うんですよ。」
「(ヒアリングを行ったのが昨年の3月7日時点だということなんですが、事業者の体制はどうだったかというと、日本での対応部署がヤフーですと70人体制で24時間365日、そして責任者はいるということでしたが、)首をかしげるのは、メタとツイッター(今のX)なんですけども、「日本での体制はどうなっているの」というヒアリングに対して「回答なし」なんですよね。」
「これ、昨年の3月時点のヒアリングで、このデータ自身は今年の10月の資料にも再掲されてるんですが、その後、補足説明してる会社あるんですけども、じゃあ、どうなってんのって首をかしげますよね。」
「正直言って、プラットフォーム事業者に対して、もう一歩踏み込んでもらいたいと、そういうふうに思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

そもそもブログ上での誹謗中傷を巡っては、現実に自殺、あるいは登校拒否といった深刻な事例が繰り返し発生しています。
しかも、ネット上の誹謗中傷を巡る相談件数は8年連続で5000件を超え、しかも増加傾向にあります。(こちらを参照)
ですから、実際に誹謗中傷を受けていると感じ、悩まされている方々の実数はこの何十倍、あるいはそれ以上と思われます。

さて、ブログ上での誹謗中傷については、立場によって以下のような問題があります。

(被害者)
・どこからが誹謗中傷に当たるのか分からないが、実際に自分はとても悩んでいる
・具体的に誰から誹謗中傷をされているのか分からない
・どのように誹謗中傷の記事の削除を依頼していいか分からない、あるいは依頼方法があっても分かりにくい
・SNSユーザーの注目を集めるような内容の投稿は瞬く間に拡散してしまい、収集がつかなくなる

(加害者)
・本人と特定されないので、自由に何でも投稿出来る
・誹謗中傷しているという認識がない
・投稿記事の閲覧回数が増えるほど収入が増えるので、出来るだけ刺激的な内容の記事の投稿をしたいという誘惑に駆られる

(サービスプロバイダー)
・どこからが誹謗中傷なのか判別しにくい
・膨大な量の投稿記事がある中で、人手を介して誹謗中傷に当たる記事の全てを識別するのはほとんど不可能である

なお、総務省の有識者会議は誹謗中傷の、SNSの運営企業を念頭に置いた対策案を昨年11月28日に取りまとめましたが、その概要は以下の通りです。
改正案のポイント
・対応の迅速化
 -削除申請を受け付ける窓口や手続きを公表
 -十分な知識を持つ人員など対応体制を整備
 -申請への対応結果を一定期間内に通知
・運用の透明化
 -削除の判断基準を策定、公表
 -削除した場合、投稿者に通知

さて、リスク管理の観点から誹謗中傷に関する私の思いうところを番組も参考に以下にまとめてみました。

(リスク対応策)
・SNSの運営企業は今回ご紹介した、総務省の有識者会議で検討されている対策案の決定事項(リスク対応策に該当する部分)を遵守すること
・投稿者の投稿内容をAIが常にネット上で監視し、誹謗中傷など、法的に問題のある可能性のある内容の場合はアップ前に以下のようなメッセージを表示すること(プロジェクト管理と日常生活 No.841 『YouTuberへの誹謗中傷対策の検討会設置!』の内容の一部を抜粋)

この投稿内容は、誹謗中傷など法的に問題のある可能性があります。
もし、このまま投稿した場合には、あなたの氏名が公になります。
そして、法的に罰せられることもあり得ます。
それでもあなたは投稿しますか? 

*「投稿します」、「投稿しません」の選択をして、「投稿します」を選択すると投稿出来る
・ユーチューブのように広告収入が得られるSNSでは、誹謗中傷など法的に問題のある可能性のある投稿については広告収入の対象から除外する旨、明記すること

(コンティンジェンシープラン)
・SNSの運営企業は今回ご紹介した、総務省の有識者会議で検討されている対策案の決定事項(コンティンジェンシープランに該当する部分)を遵守すること(ただし、投稿記事の削除要請があった場合、24時間以内を目処に対処する)
・投稿サイトのコメント欄に「通報ボタン」を設置し、システムの検知とスタッフの確認により、誹謗中傷するコメントに対し、削除や警告を行うこと
・誹謗中傷など法的に問題があると判明した投稿については広告収入の対象から除外すること

なお、SNSでもう一つ困る“なりすまし”のアカウント対応策については、次回発信する予定です。

 
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