2023年11月13日
アイデアよもやま話 No.5737 ビートルズの新曲発売に見るAIの計り知れない可能性!
11月3日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でビートルズの新曲発売について取り上げていたのでご紹介します。 

ビートルズが新曲を発売しました。
ジョン・レノンさんらは既に亡くなっていますが、曲はどのようにして作られたのでしょうか?

今でも世界中の人を虜にするイギリスのバンド、ビートルズが11月2日、27年ぶりに発表した新曲「ナウ・アンド・ゼン(NOW AND THEN)」。
ポール・マッカートニーさんは次のようにおっしゃっています。
「ジョン・レノンの作で、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの全員でプレイしている。」

中でも注目されているのが1980年に亡くなった故ジョン・レノンさん(享年40歳)の歌声です。
「ナウ・アンド・ゼン」は、レノンさんが、ビートルズ解散後に自宅でピアノを弾きながら歌って録音されたデモ音源が元になっています。
音声を加工するAIなどを使い、レノンさんの当時の歌声だけを取り出し、それにポール・マッカートニーさんとリンゴ・スターさんの演奏と声を加えて完成したのです。

以下は、発売開始から一夜明けた日本のファンの声です。(午前11時 タワーレコード渋谷店)
「すごく楽しみにしていた。」
「なんか今でも信じられない感じ。」

「ジョンとポールとジョージとリンゴの音が入るとザ・ビートルズになる。」
「今、体感出来て本当にうれしいです。」

こちらの店では、開店と同時に多くのファンが詰めかけ、12インチのレコードはわずか1時間ほどで完売しました。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。
・今でも世界中の人を虜にするイギリスのバンド、ビートルズが11月2日、27年ぶりに新曲「ナウ・アンド・ゼン」を発表した。
・「ナウ・アンド・ゼン」は、レノンさんが、ビートルズ解散後に自宅でピアノを弾きながら歌って録音されたデモ音源が元になっている。
・音声を加工するAIなどを使い、レノンさんの当時の歌声だけを取り出し、それにポール・マッカートニーさんとリンゴ・スターさんの演奏と声を加えて完成した。
・中でも注目されているのが故ジョン・レノンさん(享年40歳)の歌声である。
・タワーレコード渋谷店では、開店と同時に多くのファンが詰めかけ、12インチのレコードはわずか1時間ほどで完売した。

なお、タワーレコードの公式ページ(こちらを参照)では、新曲「ナウ・アンド・ゼン」のシングル盤やミュージック・ビデオ、ドキュメンタリー映画、および誕生の経緯について以下のように伝えています。

(シングル盤やミュージック・ビデオ、ドキュメンタリー映画)
この両A面シングルは、最後の「ビートルズ・ソング」と最初の曲、つまり1962年の英国でのデビュー・シングル“Love Me Do”が対になっている。両曲ともステレオとドルビーアトモス®でミックスされ、有名アーティスト、エド・ルシェによるオリジナル・ジャケット・アートがフィーチャーされている。“Now And Then”のミュージック・ビデオは11月3日に初公開。世界的なプレミアの予定など、詳細は追って発表の予定とのこと。

また、オリヴァー・マレーが脚本と監督を手掛けた12分間のドキュメンタリー映画『ナウ・アンド・ゼン ― ザ・ラスト・ビートルズ・ソング』が11月1日に公開。この映画のグローバル・オンライン・プレミアは、THE BEATLESのYouTubeチャンネルにて、日本時間11月2日4時30分に行われる。この感動的な短編映画は、Paul、Ringo、George、Sean Ono Lennon、ピーター・ジャクソンの独占映像や解説を交えて、「The Last Beatles Song」にまつわるストーリーを紡ぐものとなっている。

(レコード誕生の秘話)
“Now And Then”の物語は1970年代後半、Johnがニューヨークのダコタ・ビルにある自宅でヴォーカルとピアノによるデモを録音したことから始まる。1994年、妻のYoko Ono Lennonは、Johnの“Free As A Bird”と“Real Love”のデモと共にこの音源をPaul、George、Ringoに渡した。この2曲はTHE BEATLESの新曲として完成し、「ザ・ビートルズ・アンソロジー」プロジェクトの一環として、1995年と1996年にそれぞれシングルとしてリリースされた。このとき同時にPaul、George、Ringoは新しいパートをレコーディングし、プロデューサーのJeff Lynneと共に“Now And Then”のラフ・ミックスを完成させていた。しかし、その時点ではJohnのヴォーカルとピアノを分離して、クリアで曇りのないミックスを実現し、曲を仕上げることが技術的な制限により不可能だった。そして“Now And Then”は、将来的に再度作業を行う可能性を残しながらもお蔵入りとなった。

2021年になると『ザ・ビートルズ:Get Back』が公開された。ピーター・ジャクソンが監督を務めたこのドキュメンタリーは、数々の賞を受賞したフィルムとオーディオの修復技術で視聴者を驚かせた。ウィングナット・フィルムズのMALオーディオ・テクノロジーを使って、ジャクソン監督のチームは映画のモノラル・サウンドトラックをデミックスし、楽器とヴォーカル、そしてTHE BEATLESの会話の中の個々の声を分離することに成功した。この成果は、4トラックのマスター・テープを音源として使用した2022年の『Revolver』の新たなミックスへの道を開いた。結果、今“Now And Then”のデモに対して何かできるではないかという考えが浮上した。ピーター・ジャクソンとエミール・ド・ラ・レイ率いる彼のサウンド・チームは、Johnのオリジナル・ホーム・レコーディングに同じ技術を適用し、ピアノの音から分離することでオリジナルのヴォーカル・パフォーマンスの明瞭さと完全性を保つことに成功した。
2022年、PaulとRingoはこの曲を完成にさせるべく作業を開始。Johnのヴォーカルに加え、“Now And Then”にはGeorgeが1995年に録音したエレクトリック・ギターとアコースティック・ギター、Ringoの新しいドラム・パート、Paulのベース、ギター、ピアノが含まれており、Johnのオリジナルの演奏にマッチしている。PaulはGeorgeにインスパイアされたスライド・ギター・ソロを加えた。そして彼とRingoはサビでバッキング・ヴォーカルも担当している。
ロサンゼルスでは、Giles Martin、Paul、Ben Fosterによって書かれたこの曲の切なく、THE BEATLESの真髄とも言えるストリングス・アレンジのキャピトル・スタジオでのレコーディング・セッションを、Paulが監修した。さらにPaulとGilesは“Here, There And Everywhere”、“Eleanor Rigby”、“Because”のオリジナル・レコーディングのバッキング・ヴォーカルを『Love』のショーとアルバムの制作中に完成したテクニックを使って新曲に織り込んだ。完成した曲はPaulとGilesがプロデュースし、Spike Stentがミックスした。

こうしてみてくると、新曲「ナウ・アンド・ゼン」誕生の物語は1970年代後半、Johnがニューヨークのダコタ・ビルにある自宅でヴォーカルとピアノによるデモを録音したことから始まったことが分かります。
そして、リリースに向けた取り組みの始まりは、1994年、妻のオノ・ヨーコさんがJohnの“Free As A Bird”と“Real Love”のデモと共にこの音源をPaul、George、Ringoに渡したことにあることが分かりました。
そして、Paul、George、Ringoの3人は「ナウ・アンド・ゼン」も新曲として仕上げて発表しようと試みたのですが、当時の技術では3人の満足出来るような曲に仕上げることが出来なかったのです。
そして、月日が経ち、音声を加工するAIなどの技術の進歩により、ようやく今年の11月2日、27年ぶりに新曲「ナウ・アンド・ゼン」を発表したというわけです。
このように「ナウ・アンド・ゼン」には実に誕生から今回のリリースまで、音楽史上で珍しい、50年近くの壮大な物語があるのです。

そして、こうしたリリースを実現出来た決定的な要因はAIにあると見られています。
AIにはいろいろとマイナス要因もありますが、「ナウ・アンド・ゼン」リリースのように、AIの活用により、従来不可能とされてきたものを可能にする素晴らしさがあるのです。

さて、私は以前から楽曲の作成におけるAIの有効活用について思い描いていました。
それをビートルズに当てはめると以下のようになります。
・過去のビートルズの楽曲を全てAIに取り込み、4人のメンバーそれぞれの音声やプレイする楽器の音を識別して収集する
・残されたPaul、あるいはRingoの作った曲を収集された音源と組み合わせて新曲として完成させる
・また、ビートルズのメンバー以外がビートルズのイメージを膨らませて作った曲を同じように収集された音源と組み合わせて新曲として完成させる
・更には、AIが過去のビートルズの楽曲をベースに新曲を作り、収集された音源を組み合わせて新曲を作る

このようなAIの有効活用には、ビートルズのメンバーおよび関係者の了解や著作権といったように超えなければならない様々なハードルがあります。
しかし、もし、こうした取り組みに国民から一定の理解が得られ、ビートルズのファンからの引き合いが多ければ、音楽業界のニューフロンティアとして経済の活性化にもつながると期待出来ます。

更にアイデアよもやま話 No.5734 活躍するバーチャルヒューマン!でもお伝えしたようにビートルズをバーチャルヒューマンとして復活させれば、「ナウ・アンド・ゼン」を音源だけでなく、動画として4人のメンバーによる演奏を楽しむことが出来るようになるのです。
更にその先ですが、、No.3228 ちょっと一休み その515 『DMM VR Theaterに行って来ました!』でご紹介したように3D映像によるライブ、更には一見すると生身の人間に見えるようなアンドロイドによるライブが実現すれば、より臨場感が高まります。
ビートルズファンの一人である私も是非こうしたライブを生きているうちに体験してみたいと思います。

 
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