2023年10月21日
プロジェクト管理と日常生活 No.840 『 「PBR」で日本株は割安に変わる!?』
6月13日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で「PBR」で日本株は割安に変わることについて取り上げていたのでご紹介します。 

カクテルの名前になるほど投資家が気にするPBR(Price Book-value Ratio)とは日本語で株価純資産倍率と呼ばれるもの。
資産から借金などの負債を引いた会社の純資産と株式の価値とを比較したものがPBRです。(こちら、および添付を参照)
1株当たり純資産と株価が同じだとPBRは1倍です。
ただ仮にPBRが1倍を下回っていると利益や資産に対して株価が評価されていない状態で割安とされます。
実は東証のプライム市場とおスタンダード市場での上場企業(約3300社)のうち、3月末の時点で、半数以上の約1800社がPBR 1倍を割り込み、株価が評価されていない割安の状態。
日本郵政(0.34倍)や東京電力HD(0.38倍)、三菱UFJ(0.67倍)などの大企業もこの状態で、トヨタもその1つでした。
中には株価を低いまま放置している企業もあるため、東証は3月、PBRを1倍以上にするなど、株価改善の具体策を講じるよう企業側に要請しました。
こうした中、トヨタは全個体電池の開発に目処をつけたこともあり(参照:アイデアよもやま話 No.5709 トヨタが全個体電池の開発に目処をつけたが、・・・)、今日(6月13日)、トヨタのPBRは1.03倍と、節目の1倍を上回りました。
今後、多くの企業が同様のPBRの向上策、つまり株価の改善策を講じるとも予測され、投資家は期待を寄せています。
ある個人投資家は次のようにおっしゃっています。
「(東証が)「PBRは1倍以上が望ましい」とおっしゃったんで、それから(株価が)がっと上がりましたからね。」

また別の個人投資家は次のようにおっしゃっています。
「これから(活況の)大相場になると思います。」
「日経平均は4万円くらいになってもおかしくない。」

PBRが最近、特に注目されていますが、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「(こちらの)向かって左側にあるのが1株当たりの純資産ですね。」
「これは企業が持っている工場とかノウハウなんかありますよね。」
「それを全部売り払って会社が店仕舞いする時の正味の価値と理解することが出来ますね。」
「一方で向かって右側の方にあるのが株式市場の評価、株価ですよね。」
「両者が釣り合っているのがPBR1倍の状況ですね。」
「ところが、そのPBRが1倍を下回っているというのはどういうことでしょう。」
「(この天秤、右側が上にいくと価値が高まる、下に行くと価値が安くなるということですが、その企業の経営への評価がゼロ以下という評価を株式市場から受けているということだという指摘について、)はい、そういうことなんですね。」
「今日、トヨタのPBRが1倍を回復したということですけれども、それで均衡したと。」
「要するにですね、株式市場のトヨタの経営に対する評価が回復してきたと、こういうことを意味すると思いますね。」
「(ただ、PBRで見てみますと、日本の上場企業はPBRが1倍割れのところが多いですが、トヨタもこれまでそうだったとはということなのかという問いに対して、)そうなんですよね。」
「だからこそ、そういった状況の是正を求める、圧力、プレッシャーが強まっているわけですよね。」
「まず東京証券取引所が“時の声”を挙げたわけですよ。」
「(更に外国人投資家も最近は一段と企業価値の向上を求めていますが、)はい。」
「そういった風圧が強まっているわけですから、大きな変化というのは低いPBRを是正する動きというのは確実に広がっているわけですよね。」
「そして企業同士も隣に負けちゃいけないということで、企業価値を高める競争が拍車がかかり易くなっている、こういう環境だと思います。」
「(そうすると日本株全体の底上げが図られていくという指摘に対して、)それが今回の株高のバブルの時との決定的な違いだと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

これまでプロジェクト管理と日常生活 No.598 『選挙における定量的な評価の必要性』などで物事を把握するうえで定量化することの必要性についてお伝えしてきました。
このことは企業の業績評価、あるいは価値についても言えます。
また、株式投資に際して、何らかの評価基準がなければ、どの企業にどのくらい投資すべきかの適切な判断が出来ません。
そこで、従来からいろいろな投資指標があります。(こちらを参照)

そうした中、長らく株価が不当に低い状態で放置されてきた日本企業への投資促進をすべく、PBR、株価純資産倍率という指標が脚光を浴びているというわけです。

なお、来年以降、NISA(少額からの投資を行う方のための非課税制度 こちらを参照)の抜本的拡充・恒久化が図られ、新しいNISAが導入される予定です。(こちらを参照)
新しいNISAのポイントは以下の通りです。
・非課税保有期間の無期限化
・口座開設期間の恒久化
・つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
・年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能。)
・非課税保有限度額は、全体で1,800万円。(成長投資枠は、1,200万円。また、枠の再利用が可能。)

このように株式投資に際しては、これまでよりもかなりメリットがあります。
将来に備えて、長く運用したい人などにとって、使い勝手がよくなるとしています。

ちなみに、個人が保有する金融資産は2115兆円(今年6月末)と過去最高を更新しています。
このうち、52.8%を現金・預金が占め、株式(12.8%)や投資信託(4.7%)を上回っています。
現金・預金の割合がアメリカ(12.6% 今年3月末)やユーロ圏(35.5% 今年3月末)よりも高く、日本の個人資産は一貫して現金・預金の割合が高い状態が続いています。(10月4日(水)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)より)

こうした状況から、政府も証券会社も最近、これまで株式投資に関心の無かった人たちに対しても盛んに株式投資に呼び込もうとしています。

そこで、来年には、これまで株式投資に縁のなかった人たちも新しいNISAを使ったかたちで株式投資をするうえでPBRという指標が参考になるわけです。
ただし、株式投資をするうえで、とても重要な視点があります。
それは、株価は現状よりも将来見込まれる業績に左右される傾向があるということです。
例えば、今はかなりの赤字でも近い将来、大幅な売り上げが期待される新製品の販売が確実視されているような銘柄は株価が上がります。
一方、今は非常に業績が良くても、近い将来、売り上げの大幅減が見込まれると報じられた銘柄は株価が下がってしまう傾向があります。
更に、外国株への投資に際しては、為替レートにも注意を払う必要があります。
例えば、今、日本円は1ドル150円近くですが、この時点で円建てでアメリカ株を購入して、株価が多少上がっても、1ドル130円くらいまで円高になると、円換算では株の値上がり以上の為替差損でマイナスになってしまうのです。
ですから、こうしたことにも注意を払って、これから株式投資を始めようとする人は自己責任をしっかり認識して投資に取り組むことが求められるのです。


添付)

PBRとは?
ChatGPT
PBR(Price-to-Book Ratio)は、株式市場で一般的に使用される財務指標の一つで、企業の株式の市場価格と、その企業の純資産ブックバリュー(または純資産総額)との比率を示します。PBRは、企業の株式がその純資産に対してどれだけの割引またはプレミアムで取引されているかを示すもので、投資家にとって企業の評価や株式の評価に役立ちます。
PBRは以下のように計算されます:
=株式の市場価格純資産ブックバリューPBR=純資産ブックバリュー株式の市場価格
ここで、各項目の説明は次の通りです:
•株式の市場価格:企業の株式が現在の市場で取引されている価格です。これは株式市場での株式の市場価格です。
•純資産ブックバリュー:企業の純資産、すなわち全資産から全負債を引いた金額です。純資産は、企業の実際の資産価値を示すものであり、企業が倒産した場合に残る資産の価値を表します。
PBRの解釈は以下のようになります:
•PBRが1未満の場合:企業の株式が純資産に比べて割安であることを示すことがあります。つまり、投資家は純資産の価値よりも低い価格で株式を取得できる可能性があります。
•PBRが1の場合:企業の株式が純資産とほぼ同等の価格で取引されていることを示します。この場合、株式は公平な価格で取引されていると言えます。
•PBRが1を超える場合:企業の株式が純資産に比べてプレミアムで取引されていることを示します。つまり、投資家は純資産の価値よりも高い価格で株式を購入している可能性があります。
PBRは、企業の評価や投資判断に使用される指標の一つであり、他の財務指標や市場情報と組み合わせて分析されます。ただし、PBRだけでなく、企業の財務状態、業績、成長の見通し、競合状況なども考慮することが重要です。

 
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