2023年07月15日
プロジェクト管理と日常生活 No.825 『少子化対策に本格的に乗り出した岸田政権!?』
これまで少子化対策関連で以下のような内容をご紹介してきました。

プロジェクト管理と日常生活 No.819 『少子化対策の最大の課題!』

プロジェクト管理と日常生活 No.822 『少子化ニッポンの課題 その1 参考にすべき伊藤忠の働き方改革!』

プロジェクト管理と日常生活 No.823 『少子化ニッポンの課題 その2 働き方改革の一般的な施策!』

そうした中、2月28日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で止まらない少子化の流れについて取り上げていたのでご紹介します。

こちらのグラフをご覧下さい。
出生数の推移を表したものなんですが、減少が止まらないことが分かります。
そして2月28日、厚生労働省が発表した2022年の出生数は1年前に比べて5.1%減少の79万9728人でした。
この80万人を下回るのは、統計の比較が可能な1899年以降で初めてのことなのです。
実は国は80万人を下回る時期を2033年と予想していました。
ただ予想以上に速いペースで減少しているのは、出産適齢期に当たる世代の減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で結婚や妊娠・出産をためらう人が増えたことが背景にあります。
岸田政権が次元の異なる少子化対策を打ち出す中、この先、出生数の回復は見込めるのでしょうか。
カギを握るのは10代や20代のZ世代と言われる若者たちです。

予想より11年早く、出生数が80万人を切ったことについて、今夜、岸田総理は次のようにおっしゃっています。
「これは危機的な状況だと認識をしています。」
「今の時代、社会において求められる子ども・子育て政策を具体化し、政策を進めていくことが重要であると改めて強く感じています。」

「次元の異なる少子化対策」を今後も進めていく考えを示しました。
与党内からは、子育て世代への住宅支援や児童手当の所得制限の撤廃などを求める声が相次ぐなど、政府与党の少子化対策の中心となるのが“金銭的なバックアップ”です。
ところが、テレビ東京と日本経済新聞による世論調査で、児童手当の所得制限を撤廃すべきでではないと答えた人が54%に上りました。
政府与党が目玉として検討している政策に対し、必ずしも世論の支持が付いてきていないのです。
先週、発表されたある調査が一部で話題を集めました。
Z世代の約46%が将来、子どもが欲しくないと回答。
更に金銭面以外にも理由を挙げた人が4割にも上ったのです。
子どもが欲しくない理由として多かったのは以下の回答です。
・育てる自信がない
・子どもが好きではない
・子どもが苦手だから
・自由が無くなる

専門家は金銭的な支援に重点を置いて進められている国の政策にも否定的な見方を示します。
芝浦工業大学の原田曜平教授は次のようにおっしゃっています。
「一つ大きな問題なのは「経済的理由で若者が結婚しない、子どもを作らない」と思い込み過ぎている大人や社会や政治家の皆さんがあまりにも多過ぎるという話です。」
「そこが最大の理由ではなくなっているということを早く社会は理解するべきだと思います。」

その上で少子化の流れを逆転させる方法は一つしかないと話します。
「どこの国でも国が豊かになると少子化が起こると。」
「で、これは止められないのは間違いないです。」
「人口を増やすには移民対策以外にあり得ません。」

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「これ(少子化の流れが早いペースで進んでいる状況)は日本だけの問題じゃんないんですよね。」
「アジア・太平洋地域の出生率と平均余命(2021年)(こちらを参照)を見ていただきたいのは、香港、マカオ、韓国、シンガポールといった、平均余命80歳を超えた国は日本以上に出生率が低いわけです。」
「(平均余命が伸びるにつれて出生率が低下しがちという指摘に対して、)社会が豊かになっていく過程で高学歴志向が強まるんですよ。」
「そうすると、教育の負担が重くなるわけですよ。」
「そういった問題は日本だけじゃなくてアジア各国の共通の問題ですから、一人で抱え込まないで、そういう課題を共に共有し合うということも一案じゃないかって感じもしますけどね。」
「(確かに課題が同じならビジネスの目も似たところにあるという指摘に対して、)全くその通りです。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下のようにまとめてみました。
・出生数の推移を見ると減少が止まらない
・2022年の出生数が80万人を下回るのは、統計の比較が可能な1899年以降で初めてのことである
・国は80万人を下回る時期を2033年と予想していたが、予想より11年早かった
・こうした予想以上に速いペースで減少している状況には以下の背景があると見られている
 -出産適齢期に当たる世代の減少
 -新型コロナウイルスの感染拡大により結婚や妊娠・出産をためらう人が増えたこと
・こうした状況について、岸田総理は危機感を抱いており、「次元の異なる少子化対策」を今後も進めていく考えを示した
・政府与党の少子化対策の中心となるのが“金銭的なバックアップ”である
・ところが、テレビ東京と日本経済新聞による世論調査では児童手当の所得制限を撤廃すべきではないと答えた人が54%に上った
・政府与党が目玉として検討している政策に対し、必ずしも世論の支持が付いてきていない
・先週、発表されたある調査では以下の回答があった
 -Z世代の約46%が将来、子どもが欲しくない
 -子どもが欲しくない理由として多かったのは以下の回答である
   -育てる自信がない
   -子どもが好きではない
   -子どもが苦手だから
   -自由が無くなる
   -更に金銭面以外にも理由を挙げた人が4割にも上った
・専門家は金銭的な支援に重点を置いて進められている国の政策にも以下のように否定的な見方を示している
 -大きな問題は「経済的理由で若者が結婚しない、子どもを作らない」と思い込み過ぎている大人や社会や政治家があまりにも多過ぎることである
 -そこが最大の理由ではなくなっているということを早く社会は理解するべきである
 -その上で少子化の流れを逆転させる方法は移民対策以外にあり得ない
・世界的に平均余命が伸びるにつれて出生率が低下する傾向がある

また、5月23日(火)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で岸田総理大臣が掲げる異次元の少子化対策について取り上げていたのでご紹介します。

岸田総理大臣が掲げる次元の異なる少子化対策、その財源の議論が本格化しています。
政府は少子化対策を今後3年で集中的に強化するため、新たに年間3兆円程度の財源確保を検討していることが分かりました。
この3兆円の中で最も大きな比重を占めるのが児童手当の拡充に必要な費用です。
検討されている具体的な内容は以下の通りです。
・所得制限 撤廃
・対象年齢 高校卒業まで延長
・第3子以降 支給額の増額

こうした児童手当の拡充には新たに確保する年間3兆円程度のうち約1兆2000億円を充てる方針です。
焦点となっているのが財源をどうやって確保するのか、これについて岸田総理大臣は昨日(5月22日)次のように述べています。
「消費税を含めた新たな税負担については考えておりません。」
「企業を含め、社会経済の参加者全体が連帯し、公平な立場で子育て世帯を広く支援していく。」

このように増税を否定した岸田総理大臣、財源として念頭にあるのが社会保険料への上乗せです。
現役世代と75歳以上の後期高齢者も含む幅広い世代に加え、企業も保険料を負担している企業保険の仕組みを使い、新たな支援金として負担してもらう案を軸に調整を進めています。

なぜ社会保険料の上乗せなのか、専門家や経済界の中には、財源は社会全体で幅広く負担すべきだとして、増税の必要性を指摘する声もありました。
ただ、政府与党内では既に防衛力強化のために増税方針を示していることもあり、更なる税負担を国民に求めるのは難しいなどと否定的な意見が大勢を占めている状況で、岸田総理大臣としてはこうした意見への配慮もあったものと見られます。
しかし、個人と企業が労使折半で拠出するケースが多い社会保険料への上乗せについて、経済界や労働界からは“せっかくの賃上げの機運に水を差す”などと異論も出ていて、最終案のとりまとめに向けて議論が続けられる見通しです。

なお、政府は今後3年で集中的に強化する少子化対策、財源確保のための社会保険料への上乗せは2026年度以降を想定しています。
それまでの財源不足は当面、国債の発行で埋め合わせることが検討されています。
そして、今後3年の集中的な取り組みを経たうえで2030年代初めには岸田総理大臣が掲げる子ども・子育て予算の倍増を目指す構えです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、7月3日(月)付けネット記事(こちらを参照)でも同様のテーマを取り上げていたのでその内容の一部をご紹介します。

・岸田政権の目玉政策となるはずだった「異次元の少子化対策」が大不評だ。
・6月23〜25日に行なわれた日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査によれば、政府の少子化対策について「期待しない」の回答が60%にのぼった。
・児童手当の所得制限を撤廃したうえで第3子以降は増額するなどの内容を岸田文雄首相が自ら会見して発表したが、そこに多くの誤魔化しがあることを当事者である子育て世代には見抜かれているようだ。
・前述の世論調査で世代別の回答を見ると、子育て世帯が多いであろう年代にも「異次元の少子化対策」が不評だと読み取れる。「期待しない」と答えた割合は18〜39歳で59%、40〜50代で69%にのぼったという。
・岸田首相は会見で、「3人のお子さんがいる家庭では、高校を卒業するまでの児童手当の総額が最大で約400万円増の1100万円になる」と説明した。
・これを聞くと3人の子供がいる家族なら児童手当が大幅に増えるように思えるが、前出・北村氏は「児童手当の支給を受ける時に『第何子』になるかの数え方は、子供の年齢による区切りがあります。子供が高校卒業の歳になると(18歳の誕生日後の最初の3月31日を迎えると)、“子供”の人数に入らなくなるのです」と解説する。
・「児童手当で注意したいのは、子供が生まれれば自動的に支給されるものではないという点です。決められた手続きを決められた期日までに行ない、自分で請求をしないと支給されません。支給を受けられるのは請求の翌月からで、5年までは遡って請求できる年金と違って、児童手当は遡っての請求ができません。国はマイナンバーも導入して子供の年齢などの情報を把握できているのに、遡っての請求すらできないというのもおかしな話です。少子化対策にどこまで本気なのか、甚だ疑問です」(北村氏)
・岸田政権は、児童手当の支給対象を高校生まで広げることと引き換えに、16〜18歳の「扶養控除」の廃止を検討していると報じられている。「それでは児童手当が新たに支給されても、実質負担増になる家庭も出てくる」と北村氏は言う。
・「扶養控除が廃止されれば課税所得が増え、所得税と住民税の負担が増えます。高校生の子供がいることで月額1万円(年額12万円)の児童手当が受け取れるようになっても、年収がある程度以上の水準になると、税金の負担増のほうが大きくなってしまう。年収と課税所得の関係は各家庭の状況で変わるので大まかなシミュレーションになりますが、年収800万円の人でほとんどプラスマイナスゼロ、年収1000万円になると完全なマイナスといったイメージです」(北村氏)
・児童手当の所得制限を撤廃すると言いながら、一定以上の所得者にはむしろ負担増になるようなバランスの取り方を考えているわけだ。こうした「手当」と「控除」の関係は、政権が代わるなかでいいように使われてきたのだという。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

そもそも少子化対策は日本に限らず、どの国にとっても国の行く末に係わる大きな課題です。
なぜならば、少子化の進行は、国全体の生産活動を弱め、そして購買力を弱め、こうした結果、国の経済規模が縮小するといったように負のスパイラルをもたらすからです。

岸田政権は少子化が予想以上の速さで進んでいる現状に危機感を抱いて、異次元の少子化対策を打ち出しているというわけです。

さて、少子化対策に限らず、国レベルの課題解決にあたっては一般的に以下のプロセスを実行することが求められます。
・ユーザーである国民の声に耳を傾ける
・国民の声を整理し、ユーザー要件としてまとめる
・ユーザー要件を解決すべく、制度設計をする
・制度設計に基づいて実行計画を策定する
・実行計画に基づいて個々の作業を実施する
・こうした作業の完了後、段階的にサービスを展開していく
・個々のサービスの満足度について国民調査をし、サービス内容を改善する

ところが、岸田政権はとっかかりの「ユーザーである国民の声に耳を傾ける」というステップでユーザーの要求とずれた内容をユーザー要件としてまとめているのです。
岸田総理は今回の少子化対策を異次元と言いながら、とても異次元とは言えないような内容です。
例えば、第3子の扱いも誤解を与えるようなトリッキーな内容になっています。
その結果は、日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査で、政府の少子化対策について「期待しない」の回答が60%であったことに反映されています、

岸田総理には、“異次元の少子化対策”とおっしゃるならば、多くの国民をなるほどと思わせるような、文字通り異次元の少子化対策を打ち出していただきたいと思います。
多くの国民は、納得出来るような内容の少子化対策であれば、多少の犠牲を払ってでも岸田政権に協力する意思を持っているはずだからです。
短期での選挙対策になるかどうかといった次元での少子化対策で国民の目をごまかすことは出来ないのです。

 
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