2023年06月17日
プロジェクト管理と日常生活 No.822 『少子化ニッポンの課題 その1 参考にすべき伊藤忠の働き方改革!』
2月26日(日)放送の「日曜報道」(フジテレビ)で少子化ニッポンの課題について取り上げていたので2回にわたって内容の一部をご紹介します。
1回目は伊藤忠の働き方改革についてです。

何やら続々とやってくる人々、時刻はまだ午前6時30分、実はここ、とある大企業、並んでいるのはサンドイッチやおにぎり、更にはサラダチキンにバナナまで、全て無料の「社員用朝ごはん」なのです。(1人3つまで)
大手総合商社、伊藤忠商事で毎朝繰り広げられる、この光景は10年前(2013年)から始めた働き方改革、朝型勤務(午前5時〜9時)を象徴するワンシーンです。
今では本社に勤務する社員の約6割が午前5時から8時までに出社、そんな朝型勤務が思わぬ効果を生み出したというのです。
岡藤正弘会長は次のようにおっしゃっています。
「(社内の)出生率がね、もともと改革する前は0.6だったんですよ。」
「それが今、1.97、2.0に近いんですよね。」

午前7時前、1歳の息子を連れてやってきたのは伊藤忠商事で働く海老原瑞貴さん(2008年入社で関連会社に出向中)です。
全国平均1.30を上回る社内出生率と朝型勤務の関連を探るべく、彼女の1日に密着しました。
海老原さんは次のようにおっしゃっています。
「(電車で毎日息子さんと乗って、出社するのは大変ではという問いに対して、)朝早いと電車が空いているので30分くらい二人で楽しい時間を過ごしています。」

まず向かったのは本社に隣接する社内託児所「I-Kids」(2010年開設)、息子さんとしばしの別れを告げると、仕事の前に無料の「社員用朝ごはん」で腹ごしらえ。
この日はサンドイッチと2種類の飲み物を選びました。
海老原さんは次のようにおっしゃっています。
「子どもがいると朝、バタバタして自分で朝ご飯を食べられないので、会社に来て、ご飯を食べてというのがすごくリフレッシュにもなりますよね。」

出勤して、まず取り掛かるのは夜中に届いた海外からのメールチェックです。
「朝来て、スケジュールを今日こうしようっていうのをもう一度見直して、何時から打ち合わせだからと備えられるのは働き方も余裕が出来るかなと思っています。」

育児と仕事を両立し易い朝型勤務は働くママにとってうれしい環境です。
午後8時以降の残業は原則禁止されている一方で、深夜勤務と同様の割増賃金が支給される朝型勤務は女性だけでなく、男性社員も数多く活用しています。
飼料・穀物部の島田達也さんは次のようにおっしゃっています。
「朝早くから仕事出来ると全然違います。」
「同じ業界でも伊藤忠は人数が少なくて、会社としても非常に(個人の)生産性を求められているので。」

独身時代は夜の残業や会食で帰宅するのが遅かったという島田さん、しかし朝型勤務に加え、夜の会食を一次会のみ、午後10時までとする会社の改革(「110運動」 2014年導入)で生活は一変、夜の時間に余裕が持てたことで、現在は2児の父として家庭でも大活躍です。
「基本、夕飯は私の仕事です。」
「(妻に)早く帰ってきてくれるのはうれしいとやっぱり言われます。」
「今は家族と過ごす時間が増えて、本当にいいと思います。」

朝型勤務を始めとする様々な改革によって効率的に働く意識が浸透し、家族との時間が増えた社員たち、それが結果的に出生率向上につながったといいます。
社員の変化について、人事・総務部の米田栞さんは次のようにおっしゃっています。
「多様な価値観を認められるような働き方がすごく重要になってくると思います。」
「やはり働き方改革が始まる前ぐらいは育児との両立が少し難しいと。」
「チャンスが女性にも回ってくるようになった。」

そんな女性の一人が(先ほどの)海老原さん、会議を前に指示を出すなど、中心に立つ姿が。
現在は多くの案件をリードする立場、働くママでありながら、社内託児所や朝型勤務を活用するなどしてフルタイム勤務を実現させています。
こうした働き方改革の仕掛人、岡藤会長は次のようにおっしゃっています。
「いかにして(個人の)生産性を上げるか、そのためには社員、家族を大切にすると。」
「社員との対話とか、社員のいろいろなニーズ、それを小さなことでも一つ一つ回答していく。」

予定通り仕事を終え、向かう先は勿論社内託児所、海老原さんが母親に戻る瞬間です。
育児と仕事の両立が新しい笑顔を生み出しています。

元大阪市長で弁護士のコメンテーター、橋下徹さんは次のようにおっしゃっています。
「(子育て支援とか出生率を上げようという目的ではなく、生産性を高めるための取り組みがこういうことをもたらしていることについて、)そこが重要で、少子化対策とか女性のための改革ってなると、男性の方から「なんで女性のために働き方を不都合にされるんだ」というような気持もどっかに芽生えてしまうんですよ。」
「じゃなくて、これは会社の生産性を上げる。」
「で、生産性を上げる中で女性の働き易さの環境を整えるということが後でついてくるっていうね。」
「これだと全社一丸となるじゃないですか。」
「僕ね、伊藤忠商事の皆さんていうか、(会長の)岡藤さん、あと人事担当の副社長から話を伺ったんですけども、是非日本政府の少子化対策、働き方改革のアドバイザーになってもらいたいですね。」
「無償では無理だと思うけども、それぐらいの有効策は込められていると僕は思っています。」

朝型勤務を中心に番組で取材させていただきましたが、もう一方、太田頼子さん(1996年入社)にも取材させていただきました。
太田さんは出産後もずっと働いていて、お嬢さんも大きくなっているというなんですけれども、「娘たちも将来、出産した後、何があっても働きたい」と話していると。
つまり、お嬢さんも出産後、仕事をするか、しないかではなく、どんな仕事をどんなふうに続けるのかという価値観が、選択肢が既に変わっていると、こんな発言が出たといいます。
橋下さんは続けて次のようにおっしゃっています。
「いろんな働き方改革のメニューが、政府はいろいろ出しているんですけど、伊藤忠商事の方は朝型勤務にピンポイントで力を集中させて、それがこれだけの効果を生むっていうね。」
「日本全体で夜の労働の非効率さ、ここに意識を向けて、これを止めていくということが一つ、選択肢になるのかなと思うんですけど、政治家は全部、夜の仕事なんですよ。」
「ここを政治家から変えてもらわないと。」

このことについて、元厚生労働大臣の田村憲久議員は次のようにおっしゃっています。
「おっしゃる通り、我々、働き方改革をやるっていうのの一つの大きな目的はこれなんです。」
「女性が長時間労働をしなくなると、キャリアの形成をし易くなりますよね。」
「だから、男性が(労働時間が)長くて出世するってなると、女性はそれに合わせられない。」
「どうしたって子どもを産むっていうのは女性にしか出来ないことなので、それは非常に負担になっちゃうと。」
「で、男性がある程度、勿論、時間的に楽になれば、子育てに参画出来るのもそうなんですが、女性自身がやっぱり産もう、育てようっていう意識になってもらえるところに大きな意味があるし、言われる通り、女性のためじゃなくて、社会全体が健全になるためにあるような制度なので、これは一つ大きな価値観の転換という意味で、我々も意味があると思いますので、進めていきたいと思います。」

また立憲民主党の塩村あやか参院議員は次のようにおっしゃっています。
「素晴らしいなと思いました。」
「まず、永田町国会なんか夜全て物事が決まるって言われていて、ここはしっかり変えていただきたいなと思っていますし、おっしゃる通り、今、女性でしたけど、パパも4時に終わって、子ども迎えに行くことが出来るわけですよね。」
「しかもフルタイムで、朝出れば、きちんと割り増し料金が出るということで、素晴らしいなと思います。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して、2013年から始めた伊藤忠商事の働き方改革について以下にまとめてみました。
・朝型勤務(午前5時〜9時)を導入している
・午後8時以降の残業は原則禁止されている一方で、朝型勤務は深夜勤務と同様の割増賃金が支給される
・今では本社に勤務する社員の約6割が午前5時から8時までに出社している
・サンドイッチやおにぎり、サラダチキン、バナナまで、全て無料の「社員用朝ごはん」を提供している(1人3つまで)
・働き方改革導入の効果は以下の通りである
 -フルタイム勤務を実現させることにより、チャンスが女性にも回ってくるようになった
 -朝型勤務は育児と仕事を両立し易い
 -社内の出生率が改革前の0.6から今では1.97に増えた
 -息子さんと一緒に出勤する、ある女性社員は朝早いと電車が空いているので30分くらい二人で楽しい時間を過ごしている
 -本社に隣接する社内託児所「I-Kids」(2010年開設)に息子さんを預け、、仕事の前に「社員用朝ごはん」で腹ごしらえ出来る
 -子どもがいると朝、バタバタして自分で朝ご飯を食べられないので、会社でに来て、ご飯を食べるのはすごくリフレッシュにもなる
 -朝来て、その日のスケジュールを見直すことにより、働き方に余裕が出来る

また、伊藤忠商事ではこうした働き方改革以外にも以下の内容の「110運動」も2014年に導入しています。
・夜の会食は一次会のみで午後10時までとする
・「110運動」導入の効果は以下の通りである
 -働き方改革と相まって、効率的に働く意識が浸透した
 -夜、家族と過ごす時間が増えた
 -家庭を持つ男性社員は父親として家庭でも活躍出来る

なお、こうした働き方改革の仕掛人、岡藤会長の狙いは、同じ業界でも社員数が少ない中での一人一人の社員の生産性の向上であり、そのための方針が段が社員、そして家族を大切にすることなのです。
ですから、こうした狙いの達成や方針を実行するプロセスにおいて、社員のいろいろなニーズに一つ一つ回答していき、その結果として、具体的な手段としてが働き方改革や「110運動」にたどり着いたというわけです。

そもそも少子化、およびそれに伴う人で不足が進む中で、人口のほぼ半分を占める女性の活躍の機会を増やすことについて、これまで真剣に向き合ってこなかったことについて国や自治体、そして企業は大いに反省すべきなのです。
こうした中、既に2013年から働き方改革を始めた伊藤忠商事の取り組みは、国がようやく本気で取り組みだした少子化対策や働き方改革の先駆者と言えます。
ちなみにChatGPTでは伊藤忠商事による働き方改革について添付1のようにまとめています。
なお、伊藤忠商事では非正規社員に対する働き方改革にも取り組んでいるといいます。(添付2参照)
また、元大阪市長で弁護士の橋本徹さんも指摘されているように、伊藤忠商事による働き方改革の狙いはあくまでも生産性向上であり、そのための方策の実施の成果として、少子化進行の改善にもつながったというところはとても重要なポイントです。
単に少子化対策として出生率の数値目標や会社役員の女性の占める割合を規定するといったことでは、かえって生産性向上の取り組みを削ぐかたちになり、結果的に失敗に終わることになるのです。

ということで、伊藤忠商事に限らず、働き方改革に成功を収めている企業の取り組みを参考にして、政府は働き方改革や少子化対策に取り組むべきだと思います。
また橋本さんや田村議員、塩村議員も指摘されているように、夜の会食についても”先ず隗より始めよ ”で政治家の方々が率先して朝方勤務に変えたりとか、有能な女性が安心して政治に取り組めるような環境づくりを作ること、すなわち政界における働き方改革に取り組んでいただきたいと思います。


添付1)

伊藤忠商事による働き方改革
ChatGPT
伊藤忠商事は、日本の大手総合商社であり、働き方改革に取り組む企業の一つです。伊藤忠商事は、労働環境の改善や従業員の働き方の柔軟化を通じて、生産性の向上と働きやすさの両立を目指しています。
具体的な伊藤忠商事の働き方改革の取り組みには、以下のようなものがあります:
1.フレックスタイム制度の導入: 従業員が柔軟に出勤・退勤の時間を調整できる制度を導入しています。これにより、従業員は自身のライフスタイルに合わせて働くことができます。
2.リモートワークの推進: 伊藤忠商事では、適切な業務内容においてリモートワークを活用することを奨励しています。特に、交通事情や家庭の事情などにより通勤が難しい場合には、従業員が柔軟に自宅や外出先から業務を行える環境を整備しています。
3.ワークライフバランスの支援: 伊藤忠商事では、従業員のワークライフバランスを重視し、有給休暇の取得促進や育児休業の制度整備などを行っています。また、ストレスチェックやメンタルヘルス支援のプログラムも実施しています。
4.デジタルツールの活用: 伊藤忠商事は、デジタルツールやクラウドシステムを活用して業務効率化を図っています。これにより、従業員は業務の効率を高め、時間の節約や労働負荷の軽減が図られています。
これらの取り組みにより、伊藤忠商事は従業員の働き方の多様性を尊重し、働きやすい環境を整備することを目指しています。


添付2)

伊藤忠商事による、非正規社員に向けた働き方改革 
ChatGPT
伊藤忠商事は、非正規社員に向けた働き方改革にも取り組んでいます。非正規社員(パートタイム労働者や契約社員など)は、正規社員と比較して雇用形態や待遇が異なる場合がありますが、伊藤忠商事はその課題に対応するための取り組みを行っています。
以下に、伊藤忠商事が非正規社員に向けて行っている働き方改革の取り組みの一部を示します:
1.働き方の柔軟化: 伊藤忠商事は、非正規社員に対しても柔軟な働き方を実現するための制度を整備しています。例えば、パートタイム労働者に対してもフレックスタイム制度やシフト制度を導入し、自身の都合に合わせて働ける環境を提供しています。
2.スキルアップの支援: 伊藤忠商事は、非正規社員に対してスキルアップの機会を提供しています。研修や教育プログラムの実施、資格取得支援などを通じて、非正規社員のスキル向上やキャリアの発展を支援しています。
3.コミュニケーションの促進: 伊藤忠商事では、非正規社員とのコミュニケーションを重視しています。情報共有の場の整備や定期的なミーティングの実施などを通じて、非正規社員も組織の一員として参加しやすい環境を作り出しています。
4.待遇改善の取り組み: 伊藤忠商事は、非正規社員の待遇改善にも取り組んでいます。例えば、賃金の見直しや福利厚生の充実、正規社員と同等の制度や手当の適用などを行っています。
これらの取り組みにより、伊藤忠商事は非正規社員の働き方や待遇の改善に努めています。ただし、具体的な取り組みや政策は時期や地域によって異なる場合がありますので、最新の情報を伊藤忠の公式ウェブサイトや関連のニュースなどでご確認ください。

 
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