2023年03月12日
No.5526 ちょっと一休み その867 『地球誕生 その3 なぜ火星ほどの大きさの惑星の衝撃でも地球の海が消滅しなかったのか?』
昨年9月20日(火)放送の「コズミックフロントΩ」(NHK総合テレビ)で地球誕生について取り上げていたので3回にわたってその一部をご紹介します。
3回目は、火星ほどの大きさの惑星の衝撃でも地球の海が消滅しなかった謎についてです。

地球に降り注いだ小惑星に水が含まれていることは分かりました。
でももう一つ、大きな問題があります。
初期の地球に火星ほどの大きさもある惑星の赤ちゃんが大衝突をしたのです。
ジャイアント・インパクトと呼ばれています。
衝突した惑星の赤ちゃんの大半と初期の地球の一部が宇宙空間に飛び散ります。
飛び散ったかけらが集まって誕生したのが月です。
その衝撃は激しく、当時、海が出来ていたとしても、丸ごと消滅させるものだったと多くの研究者は考えてきました。

果たして本当なのでしょうか?
最新シミュレーションでそれを確かめたのが東京工業大学の教授、玄田英典さんです。
「当時はまだジャイアント・インパクトが起きるとどういうことが起きるのか分かってなくて、非常に激しい出来事なので、当然惑星の表面にある海とか大気が容易に逃げてしまうのではないかと単純に考えられてたんですね。」

玄田さんは、天体の衝突によって海水がどれだけ吹き飛ばされるか、詳細に研究を行いました。
横軸はジャイアント・インパクトの衝撃で地面が揺り動かされるスピードです。
縦軸は海から海水が吹き飛ばされる割合です。
「0」 は全く失われず、「1」だと全て吹き飛んでしまうことを意味します。
気圧も考慮しました。
現在と同じ1気圧から当時の環境を踏まえ、300気圧までの条件で計算しました。
秒速4km以上で海水は失われていきますが、ジャイアント・インパクトの衝撃は秒速3km、ほとんど影響を受けないことが分かったのです。
玄田さんは次のようにおっしゃっています。
「確かに衝突自体は激しいイベントなんですけれど、少なくとも海が全部ジャイアント・インパクトの衝撃で吹き飛んでしまうことはない。」
「せいぜい吹き飛んでも20%か30%ぐらいの海しか1発のジャイアント・インパクトで吹き飛ばないっていうことをコンピューターシミュレーションを使って示しました。」

こうした研究の積み重ねによって明らかになった、地球に海が誕生する様子を見に行きましょう。
初期の地球に降り注ぐ大量の小惑星、そこに含まれた水が水蒸気となって大気中に放出されます。
水蒸気を多く含む原始の大気の誕生です。
上空では雨が降り続いていますが、地上に落ちることはありません。
地上は高温のため、途中で蒸発してしまうからです。
やがて小惑星の落下が収まると、地表温度は低下、上空の雨が地表にまで達するようになり、海が出来始めます。
しかし、その海をジャイアント・インパクトが襲います。
でも大丈夫、海のほとんどは水蒸気として地球に留まります。
そして再び雨となって、一気に大量の水を降らせました。
その豪雨は1000年ほども続きます。
そして地表の7割をも覆う現在の海のもととなりました。
その海には小惑星や雨によって様々な物質がもたらされていました。
海に溶け込んだミネラルやアミノ酸、それは生命を作り出す材料となるもの、こうした物質が海の中で出会うことで複雑なたんぱく質や遺伝子が出来ていく。
そうした繰り返しによって、やがて海の中で豊かな生態系が育まれていきました。
そして海から陸上に生物が進出。
現在、地球上には約870万種もの生き物がいると推測されています。
地球に海が出来たこと、それが豊かな生命を育む地球の全ての出発点となったのです。

なるほど、地球が出来たことは奇跡、そしてそこに海が出来たのもまた奇跡だったのか。
そして海によって地球は生命溢れる唯一無二の惑星になることが出来た。
私たちはみんな“海の子”だ。
いや“チリの子”か?

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

No.5514 ちょっと一休み その865 『地球誕生 その1 惑星が生まれるシミュレーション 』No.5520 ちょっと一休み その866 『地球誕生 その2 なぜ地球は水があふれる惑星になったのか?』と今回の3回にわたって、地球誕生についてご紹介してきましたが、あらためて思うのは地球は“奇跡の星”であるということです。
絶妙な地球の重量、そして太陽からの距離から大気や海が存在し、更にジャイアント・インパクトがあっても、その衝撃の大きさが海の消滅に至るほどではなかったのです。
その海には小惑星の衝突や雨によって様々な物質がもたらされ、海に溶け込んだミネラルやアミノ酸が生命を作り出す材料となり、地球上には約870万種もの生き物がいると推測されているのです。
そして、人類もその一種なのです。

このように地球、および宇宙についての謎はどんどん解明されてきています。
ですから、人類は科学の進歩によって、今後とも更に地球、および宇宙に関して多くの謎が解明されていくと期待出来ます。

なお、地球誕生について知れば知るほど、偶然の積み重ねによって私たち人類をはじめとする生物は今も存続出来ていると思います。
ですから、やはり地球は“奇跡の星”で、かけがえのない存在だと思います。
ということで、私たち人類はもっと他の生物や地球環境に気配りして暮らすことが求められているのです。

 
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