2023年02月26日
No.5514 ちょっと一休み その865 『地球誕生 その1 惑星が生まれるシミュレーション 』
昨年9月20日(火)放送の「コズミックフロントΩ」(NHK総合テレビ)で地球誕生について取り上げていたので3回にわたってその一部をご紹介します。
1回目は、惑星が生まれるシミュレーションについてです。

地球は太陽の周りを回る8個の惑星(恒星の周りを回る天体のうち、比較的低質量のもの)の一つです。
こうした惑星が生まれた理由、きっかけは46億年前、太陽の誕生です。
宇宙に漂う水素やヘリウムなどのガスが集まり、太陽が出来ました。
その周りにはガスの残りと塵(チリ)が漂っています。
このチリの大きさは1ミリの1000分の1、空中を舞うホコリのようなものです。
宇宙にある物質の99%はガスのため、チリは残り1%しかありません。
2014年、アルマ望遠鏡がこの小さなチリから実際に惑星がつくられていく貴重な現場を捉えました。
おうし座の方向にある巨大なガスとチリの中にその天体はあります。
中心にあるのは、生まれたばかりの太陽のような星、おうし座HL星です。
このオレンジに見える円盤こそ惑星を作り出すチリやガスです。
この円盤、よく見ると黒い溝が何本もあります。
実は、これが惑星が誕生している証拠と考えられています。

惑星が生まれるシミュレーションです。
中央の黒い丸い中心に太陽のような星があります。
その周辺の一部、これから惑星に成長していく、言わば種のような部分です。
地球のような小さな惑星が出来る場合、その溝はとても細くなります。
一方、木星のような巨大な惑星に成長していく種、幅の広い黒い溝が出来ました。
惑星のもととなる小さな塊、それが中心の星の回りを何度も何度も回り続けながら、辺りのチリを集めるため、その通り道が黒い溝のように見えるのです。
こうして細かなチリが合体していくことで、徐々に惑星は出来ていきます。
地球や火星は、チリが集まって出来た岩石惑星と呼ばれます。
木星や土星も中心部はこうしてチリが集まった岩石と考えられています。
でも地球よりも大きく成長したため、強い重力で周囲のガスなども引き込み、巨大化していきました。
更に太陽から遠く離れたところには、天王星や海王星が生まれました。
元々全ての惑星は小さな、小さなチリから成長を始めました。
このチリが集まり、直径数kmになります。
それが更に合体していくことで、立派な惑星になっていきます。
でも地球の場合、このチリの成長の過程に大きな謎がありました。
それはチリと一緒に渦巻いている、あのガスがもたらす影響です。
チリの塊は円盤の中で安定して回っていますが、やがてガスが邪魔をしてスピードが落ちてしまうと言います。
スピードが落ちると、太陽に近い地球のような場所にあるチリは太陽の強い重力によって引き寄せられ、消滅してしまいます。
つまり、チリが大きくなり続けるには、特別な何かが必要だというのです。

研究から、宇宙空間でダイナミックな現象が起きている可能性が浮かび上がってきました。
マックス・プランク天文研究所の天体物理学者、ヒューバート・クラーさんは、シミュレーションによって、生まれたばかりの太陽の周りではガスやチリがまるで嵐のように激しく乱れていることを突き止めました。
乱流と呼ばれます。
クラーさんは次のようにおっしゃっています。
「これは大きな驚きでした。」
「チリはつみ重なって層をつくることは出来ませんが、円盤の中で均一にちらばるわけでもありません。」
「どこかで塊になっていきます。」
「乱流によりチリは様々な場所に集まっていたのです。」

注目は赤や黄色の部分(シミュレーションした乱流の一部のチリ)、小さな小さなチリの状態から激しい乱流によって一気に巨大な塊へと成長していたことを意味しています。
これが、チリが地球になるための重要なポイントだといいます。
直径数kmにまで成長したチリの塊はガスの影響を受けず、スピードが落ちません。
そのため、中心の星の強い重力に逆らって、回り続けることが出来るのです、
惑星の赤ちゃんは激しい乱流の中で成長を続けていました。

さあ、いよいよ惑星誕生までのラストスパートです。
それを教えてくれるのが国立天文台の教授、小久保英一郎さんです。
小久保さんは、惑星の赤ちゃんが立派な惑星になるまでの様子を詳細にシミュレーションしました。
黒い点は無数の小さな惑星の赤ちゃん、横軸は太陽からの距離です、
時間を進めると、惑星の赤ちゃんは衝突と合体を繰り返し、徐々に成長していきます。
ところが、ある程度成長すると、それ以上大きくなれなくなってしまいました。
ここにもまた、小さな惑星を取り巻くガスの影響があると、小久保さんは考えています。
「ガスがあるうちは、そうやって出来た原始惑星は仲良くというか、お互いに軌道はあまり乱し合わずに衝突もせずに太陽の周りを回っているわけなんですが、実は原始太陽系円盤のガスの部分は恐らく1000万年ぐらいの時間で無くなると。」

更にシミュレーションを進めると、1000万年ほどでガスが無くなり、惑星たちの軌道が乱れることで再び合体が始まります。
黒い丸、一つ一つが成長した惑星の赤ちゃんたち、軌道が乱れたため、衝突が始まります。
合体を繰り返し、遂に地球サイズの地球にまで成長しました。
小久保さんは次のようにおっしゃっています。
「大体1億年ぐらいかかって、お互いに衝突し合って最終的に地球が出来上がる。」

こうしたシミュレーションから地球は最終的に約10個の成長した惑星の赤ちゃんが衝突して誕生したことが分かりました。
こうして小さな小さなチリが途方もない時間をかけて成長していくことで、現在の地球のもととなる一つの惑星が出来たのです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

そもそも138億年前に宇宙は誕生しました。(こちらを参照)
そして、太陽系の惑星が生まれたきっかけは46億年前、太陽の誕生です。(こちらを参照)
ちなみに、太陽は太陽系の全質量の99.8 %を占め、太陽系の全天体に重力の影響を与えるといいます。
その太陽は宇宙に漂う水素やヘリウムなどのガスが集まって誕生しました。
その水素は宇宙でもっとも豊富に存在する元素であり、水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後に初めて生成したとされています。(こちらを参照)
また太陽の周りにはガスの残りとチリ(宇宙塵 こちらを参照)が漂っています。
そして、全ての太陽の惑星は、チリが集まって出来た惑星の赤ちゃんが衝突と合体を繰り返しながら成長して出来ているということなのです。
こうした現象の多くは天体物理学者によるシミュレーションの結果、明らかになったのです。
ですから、天体物理学者の作業はとても地道で大変だと思いますが、一方でとても夢のある研究だと思います。
そして、こうした研究の結果、私たち人類を含めて全ての生物も宇宙塵から生まれていることが分かったのです。
ちなみに、宇宙塵は地表に毎年100トン程度降り注いでいると考えられており、古いビルの屋上などには、地上から舞い上がった塵と混じり合ってたくさん積もっているといいます。

 
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