2023年03月05日
No.5520 ちょっと一休み その866 『地球誕生 その2 なぜ地球は水があふれる惑星になったのか?』
昨年9月20日(火)放送の「コズミックフロントΩ」(NHK総合テレビ)で地球誕生について取り上げていたので3回にわたってその一部をご紹介します。
2回目は、なぜ地球は水があふれる惑星になったのか、その謎についてです。
なお、1回目はNo.5514 ちょっと一休み その865 『地球誕生 その1 惑星が生まれるシミュレーション 』でした。

水の惑星、地球、宇宙で表面に水をたたえた惑星は地球以外、未だ見つかっていません。
いったい、なぜ地球はこんなにも水があふれる惑星になったのでしょう?
実は地球に海が存在出来るのも太陽と深い関係があります。
太陽に近すぎると水は気体となって蒸発してしまいます。
遠過ぎると氷になってしまいます。
地球の距離だからこそ、水が液体として存在出来るのです。
そして地球の大きさも重要です。
もし地球が今よりも小さかったら重力が弱くなり、表面に水が留まることが出来ません。
直径が地球の半分ほどしかない火星のような惑星になっていた可能性もあります。
地球は太陽からの距離、大きさともに絶妙なため海が存在出来るのです。

では、そこにどうやって海が出来たのでしょうか?
その謎を解いたのが惑星理論の第一人者、千葉工業大学の学長、松井孝典さんです。
1986年、海は地球が出来た時に水蒸気を大量に含む大気から誕生したという説を発表しました。

当時、松井さんが考えた海の誕生のシナリオです。
今から約46億年前、原始の地球に宇宙のチリから生まれた小惑星が大量に降り注いでいました。
海のもととなったのはなんと、この小惑星に含まれる水、その水が蒸発し、やがて雨になって降り注ぎ、海になったのではないかと松井さんは考えたのです。
「地表から加熱されなくなると冷えてくると、水蒸気大気は安定じゃないから雨になって降るわけですよ。」
「ものすごい雨が降って、それによって海が出来る。」

しかし、この松井さんが発表した説には2つ不思議な点があります。
その一つは、本当に地球に降り注いだ小惑星に水は含まれるのかということ。
地球をつくり出したチリの塊は主に岩石で出来ていたと考えられます。
そこに海をつくり出すほどの水が含まれていたなんてちょっと信じされません。
実はある科学者がその秘密に迫りました。
惑星をつくり出すチリについて研究を行う桐蔭横浜大学の教授、中野英之さんは、チリがある条件に置かれた時に起きる変化に着目しました。
(試験官に入れた)チリに含まれる成分を混ぜ合わせたものはドロドロした液体に見えますが、水は一切入れていません。
これを特殊な容器に入れて400℃、100気圧で5時間放置します。
小惑星が地球にぶつかる際の内部の様子を模した条件です。
中野さんは次のようにおっしゃっています。
「ある程度大きな隕石母天体の中での圧力条件を再現していると考えていただければと思います。」

取り出してみると、オレンジ色だった液体の見た目が大きく変わりました。
(上部の)黒い液体は含まれていた炭素などの物質が変化した石油、そしてその下に透明な液体が出来ていたのです。
中野さんは次のようにおっしゃっています。
「2層に分かれていたんですが、下に溜まっているものは何かなっていうのが最初分からなくてですね、油の一種かなと思ったんですけども、混じり合わない油の下にある液体は何かと言ったら、これは水しかないだろうということで、これ、水が出来ているんだっていうふうに。」

チリには炭素などに加え、水素や酸素などの物質も含まれています。
条件次第でその物質から水が出来ることが分かったのです。
チリが集まると小惑星になります。
特に地球周辺で出来た小惑星はその後、地球にぶつかる可能性が高くなります。
初期の地球に降り注いだ小惑星によって大量の水がもたらされた可能性が明らかになったのです。
実際の隕石でも確かめられています。
調べたのはメキシコに落ちた隕石、火星と木星の間からやって来たと推測されています。
分析したところ、水を多く含んでしたことが分かったのです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

番組を通して、チリには炭素や水素、酸素などの物質も含まれており、条件次第でこれらの物質から水が出来ることが分かりました。
そして、チリが集まった大量の小惑星の衝突によって、地球に大量の水がもたらされたと見られているのです。
ですから、現在のように大量の水からなる海が出来上がるまでにはとても長い年月を要したことは容易に想像がつきます。

なお、私たちは普段の暮らしで当たり前のように様々な用途に水を使っています。
そもそも私たちが生きていくうえで、水や空気は必須のものです。
その水や空気は実は宇宙塵からなる小惑星が地球に運んできたものだということなのです。
ということは、地球に存在する多くの物質は宇宙のあちこちから飛来してきた小惑星を構成するチリから生まれていることを意味します。
ですから、私たちの身体をかたちづくっている成分はこうしたチリがかたちを変えた物質ということになります。
このように考えると、宇宙の壮大な営みの想像を絶するパワーを実感せざるを得ません。

 
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