2022年09月30日
アイデアよもやま話 No.5387 DXに政府も重点的に投資する方針だが、・・・
6月6日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で政府も重点的に投資するDXについて取り上げていたのでご紹介します。 

政府は明日(6月7日)にも骨太の方針を閣議決定する予定です。
その中で柱の一つとして位置付けるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)で、今後、重点的に投資を行っていく方針です。
DXの推進が日本にどのような成長をもたらすのか、残業時間の2割削減を目指すなど、企業の姿が変わろうとしています。

東京・千代田区にある中央電力株式会社、マンションや企業向けに電力を販売する会社です。
燃料価格が高騰し、電力の調達コストが上がったことから、業績が落ち込んでいます。
中央電力の丹治保積社長は次のようにおっしゃっています。
「去年、3割ぐらい利益が落ち込みまして、今年度も非常に危険な状態というか、厳しい状況です。」

そこで今、進めているのがDXです。
丹治保積社長は次のようにおっしゃっています。
「(紙を使っていた社内の経費精算などをデジタル化し、更に)営業情報の一元化、自社で料金計算を含めたシステムを開発させてもらいました。」

これまでは部署ごとに別々に管理していた顧客情報や顧客への対応記録、電気料金の計算や請求データなどを一元化するシステムを開発、全ての社員が閲覧出来る状態にすることで、業務の効率化につながり、残業時間を約2割削減出来たといいます。
また、開発したシステムを他の「新電力」に販売する事業を開始、新たな柱に育てたいとしています。
丹治社長は次のようにおっしゃっています。
「電気を売る側だったんですが、DX化で電力会社の裏を支える側になっていますので、会社としては成長出来る状態になっていると。」

一方、DXによって企業の業務、効率化をサポートするのが世界で15万社以上と取り引きするセールスフォースです。
例えば、スマホから入力した業務報告はすぐにデータとして反映されます。
こうした集まったデータを分析することによって現状の把握や新たなビジネス展開につなげることが可能だといいます。
セールスフォース・ジャパン(東京・千代田区) マーケティング本部の松尾吏さんは次のようにおっしゃっています。
「お客様が次のビジネスを考えるにあたって、どのようなデータがあれば次にお客様が望むものが分かるのか、どんなデータをセールスフォースで見ていけば次のビジネスにつながるのか、従業員からもお客様からも集めて次の消費者体験につなげていくと。」

セールスフォース・ジャパンはDXを活用することで、同社のシステムを使う顧客などが2021年からの5年間で12兆円(974億ドル)を超える新たな事業収益を生み出すといいます。
そのために欠かせないのがDX関連の人材の育成だといいます。
セールスフォース・ジャパンの小出伸一会長兼社長は次のようにおっしゃっています。
「ITの武装というのは、恐らくいろんな企業がある程度投資することで補完出来ると思うんですね。」
「ただ問題はIT武装だけじゃなくてトランスフォーメーションをいかに加速していくかと。」
「新しい仕組みを作ったり、今までの仕組みを変えたりという、そこに精通した人材をどれだけ育成出来るかというのが今後のDXのチャレンジになってくると思うんですね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、6月7日(火)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で新しい資本主義・骨太の方針の閣議決定について取り上げていたのでご紹介します。

岸田総理大臣が掲げる新しい資本主義の全体の構想と実行計画、そして今年の骨太の方針が決まりました。(こちらを参照)
人への投資を重点的に行うとして約100万人を対象に能力開発や再就職の支援を行うことや、個人の金融資産について貯蓄から投資へのシフトを促すための資産所得倍増プランを作成することなどが盛り込まれました。

以上、以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、骨太の方針の中のDX関連の具体的な内容については、6月7日(火)付けネット記事(こちらを参照)によると、医療デジタル化推進本部(仮称)の設置を中心として、医療関連分野に焦点を当てているようです。

また、9月22日(木)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で同様のテーマについて取り上げていたのでご紹介します。 

医療のデジタル化を巡り、厚生労働省は“コロナ禍でデジタル化の遅れが浮き彫りになった”として作業チームを新たに設置しました。
加藤厚生労働相は次のようにおっしゃっています。
「次の感染症危機に適切な対応を図っていく体制を迅速に構築するためには不可欠であります。」

そして、マイナンバーカードの仕組みを活用し、予防接種や健康診断などの結果を患者や医療機関が簡単に閲覧出来るようにすることや、全ての医療機関に「電子カルテ」の導入を促すことなど、情報共有を可能とする仕組みづくりを急ぐ方針を確認しました。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

確かにコロナ禍における感染者や死亡者の数、あるいは医療施設の病棟のひっ迫状況の把握などは必要でした。
しかし、既に世界的にコロナ禍は沈静化の方向に向かいつつあります。
ですから、コロナ禍対応という面では政府の対応は遅きに失したと言わざるを得ません。
ちなみにアイデアよもやま話 No.5146 行政手続きのオンライン利用率の世界ランキング!でもお伝えしたように日本は世界的に見て行政手続きの後進国なのです。
そもそも2015年10月5日から、個人番号(マイナンバー)の指定が始まり、2016年1月からは、行政手続における個人番号の利用が開始されたのです。(こちらを参照)
しかし、未だにマイナンバーカードの活用の幅はごくわずかに限られています。
当初から積極的にマイナンバーカードの活用に国が取り組んでいれば、コロナ禍においてもスマートな対応が出来、今回のような後手後手の対応をせずに済んだのです。

そればかりではありません。
質的に見ても、以前、新型コロナウイルス対策のスマホ向けの接触確認アプリ「COCOA」(こちらを参照)の信じられないようなトラブルについてお伝えしました。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.684 『日本政府におけるデジタル化の課題』
更に「COCOA」開発における費用も一般的な相場と比べて割高だったと言えます。
このような状況で国がDXを推進しても国民が納得出来るような成果はあまり期待出来ません。

なお、セールスフォース・ジャパンの小出会長兼社長もおっしゃっているように、DXを推進するうえで、業務やIT、更にはシステム思考に精通した人材をどれだけ育成出来るかがとても重要なのです。

システム思考について、特に重要なことは“部分最適”ではなく“全体最適”の観点です。
政府は当面DXの焦点を医療関連分野に定めているようですが、このような考え方はまさに“部分最適”です。
本来、国は、政府や官庁の現行業務を業務プロセス、データ、システムの観点から現状把握をし、抜本的に見直し、これらを再構築すべきなのです。
この際、“部分最適”に捉われて個別に省庁の業務システムを再構築すると、必ず他の業務システムとの関連でシステムの変更が必要になるのです。
ですから、大きな枠組みとして“全体最適”の観点からシステム全体のインフラを構築すべきなのです。

さて、以前、ある機器の購入に際して、国の補助金申請をしましたが、驚くことにその時のやり取りは全てFAXでした。
メールによるやり取りも許されなかったのです。
官庁の中には未だにこのような民間企業では考えられないような仕事の仕方が続けられているのです。
こうしたことから、政府は国の仕組みをDXの観点から抜本的に見直し、再構築すべきなのです。
国の仕組みが変われば、自ずと民間企業などの仕組みも変わるのです。
ところが、現在は国が民間企業のDXへの取り組みの足を引っ張っている状態であることを国は自覚すべきであり、DXにチャレンジすべきなのです。
そのためには“隗より始めよ”のごとく、まず全ての政治家がDXの要点を把握し、自らもパソコンやスマホを活用して、その便利さを実感することが必要なのです。
こうしたことが無理だとしても、時の総理大臣がリーダーシップに優れた、DXに理解のある方をDX推進の責任者にして、その方に一任するくらいの覚悟でDXの推進をすべきなのです。
そうでなければ、国の取り組むDXで十分な成果を上げることは期待出来ないのです。
ということで、是非、現政権には“隗より始めよ”を念頭に、“全体最適”を方針にしてDXに取り組んでいただきたいと思います。

 
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