2021年12月23日
アイデアよもやま話 No.5146 行政手続きのオンライン利用率の世界ランキング!
9月2日(木)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で行政手続きのオンライン利用率の世界ランキングについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。

9月1日に発足したデジタル庁、日本最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」の開設者、西村博之さんはデジタル機器の普及率を上げるため、政府に次の提案をしたといいます。
「デジタル機器を子どもからおじいちゃんやおばあちゃんだったり、おじいちゃんやおばあちゃんから子どもや孫だったりという感じで、何かデジタルに関わるものをプレゼントし合うみたいな感じの習慣をつけると良いんじゃないかみたいな話をしました。」

実は日本の行政手続きのオンライン利用率はOECDに加盟する30ヵ国の中で最下位(2018年)です。(添付参照)
しかし、同じアジア圏内で成功しているのがデジタル担当大臣、オードリー・タンさん(40歳)が市民を先導している台湾です。
世界がマスク不足に悩んでいた昨年、台湾版の健康保険証を薬局にある機器に差し込むことで、1人が購入出来るマスクの枚数をデジタルで管理し、マスク不足を回避しました。
台湾の日本人学校で教師をしている中野剛さんは全民健康保険カードについて、次のようにおっしゃっています。
「例えば薬局で薬を買うとなると、カードに入っている基礎疾患の情報が薬剤師さんに伝わって、すごく安心出来るかなというのがありますね。」

台湾のように日本の行政のデジタル化は進むのでしょうか。
西村さんは次のようにおっしゃっています。
「何か新しいことをやる時は必ずちょっと失敗するんですけど、「ここ失敗したよね」って叩く文化があると、何も作らないという結果になってしまうので、デジタル庁がうまくいくかどうかはちょっとした失敗の足を引っ張らないという方が大事なのじゃないのかなと思ったりするんですけど。」

以前、番組のインタビューに応じ、オードリー・タンさんは「デジタルは市民からアイデアを募って、官民一体となってつくるのが大切だ」とおっしゃっていました。
例えば、コロナQRコード感染者追跡システムも、高齢の方でも使い易いように70代〜80代の方も一緒に開発して、実際に88歳の自分のおばあちゃんからもアイデアをもらったと話していました。

こうした状況において、番組コメンテーターでフォ−サイト元編集長の堤伸輔さんは次のようにおっしゃっています。
「(生活に身近なものをデジタル化するからこそしっかり市民の声を吸い上げて欲しいですが、)、だからこそ民間のアイデアを入れることが大事だと思うんですけども、デジタル庁では600人のうち200人は民間から人が集まりました。」
「ただ、私はもっと増やしてもいいんじゃないかと思うんですよね。」
「なぜそれが大事かというと、民間を入れることによって国民目線でいろんなシステムを作っていくことが出来る。」
「例えば利便性ですとか、個人情報をどう守るかという面に反映される。」
「もう一つは、民間に最先端の技術やアイデアがあるわけですから、それを取り込むことが出来る。」
「役所だけで作っていてはどうしてもガラパゴス化が避けられなくなってしまう。」
「だからこそ民間から人を入れた方がいいいと思うんですけども、・・・」
「これからでも民間の力、あるいは外国のアイデアも入れていって欲しい。」
「なぜならば、目指すべきはデジタル政府ではなくてデジタル社会だと思うんですよね。」
「誰でも簡単に、例えば引っ越しの時の手続き、さっき出ましたけど、実はもっといろんな煩雑なことをやらなきゃいけないんですが、簡単に出来るような社会にして欲しいですよね。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

そもそもデジタル化、あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)は国や地方自治体の行政にとっても企業にとってもサービスの有効性、あるいは効率性の観点から積極的に進めるべきものです。
ところが、残念ながら日本の行政手続きのオンライン利用率はOECDに加盟する30ヵ国の中で最下位(2018年)というのが実態なのです。
こうした原因の根底にはDXに対する歴代の総理大臣を始めとする政府の意識のレベルの低さがあります。
意識のレベルの低さからこれまでオンライン利用率がOECD加盟国の中で最下位が続いていることに危機感を感じず、これまで来てしまったわけです。
その挙句が、マイナンバー制度が未だに中途半端な状態で普及が進まず、コロナ禍で最初の給付金の配布にとても手間がかかり、しかも手元に届くまで何ヵ月もかかっていたのに、その後デジタル化が進まず、今回の10万円相当の給付金とクーポンを5万円ずつにするか、現金で10万円にするかで議論が交わされていました。(参照:アイデアよもやま話 No.5129 10万円相当給付で事務経費1247億円に!
そして、さすがに政府も国民の声や野党からの提案を受け入れざるを得なくなり、現金10万円の一括支給も選択肢に加え、自治体の判断に任せるということで決着しました。
このような日本の行政の対応に対して、台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タンさんはどのように感じるでしょうか。(参照:アイデアよもやま話 No.5029 参考にすべきオードリー・タンさんの基本的な考え方!

さて、日本の行政手続きのDXが企業や国民に取って便利なサービスを提供するかたちで進めば、企業の生産性や国民の利便性の向上に大きく貢献するのです。
そして、具体的にDXによってどのようなかたちの行政システムを構築するかを決めるうえで、重要なステップが要求の収集、および要件定義です。
そして、オードリー・タンさんはこのことをしっかり理解されているので、エンドユーザーであるあらゆる層の人たちの声を大事にし、積極的に要求を収集しているのです。
そして、システムを国民に提供する立場から、こうして収集した様々な要求をシステム開発の観点からシステム要件として、整理してまとめてシステム開発を行っているので国民も積極的に出来上がったアプリを利用して満足感を得ているのです。
ですから、ただ国民や企業の要求を収集して、単純にそれをベースにそのままシステム化するのではないのです。
このエンドユーザーの要求をシステム要件としてまとめあげることもシステム開発者としての技量の発揮のしどころなのです。

一方、日本の行政によるこれまでのデジタル化の失敗の象徴と言える「マイナンバーカード」の導入に際し、国民にとってメリットがゼロとは言わないまでも多くの国民が積極的にカードの発行申請をするほどのメリットが実感出来なかったことが「マイナンバーカード」の発行枚数が増えなかった最大の要因と考えられます。

ということで、デジタル庁主導のデジタル化への取り組みに際しては、単なるデジタル化ではなく、DX、すなわちデジタルの観点から行政を大改革するという意気込みで、様々な国民や企業の生の声を的確に把握し、的確なシステム要件としてまとめ、DXに取り組んでいただきたいと思います。
更にシステムを作りっぱなしにせず、新たなエンドユーザーの声、あるいは環境の変化に効率的に素早く対応出来るような対応についてもシステム要件に加えていただきたいと思います。

いずれにしても日本の行政手続きのオンライン利用率がOECD加盟国中、最下位という情況が今後とも続くようであれば、日本は近い将来、二流国、あるいは三流国に転落してしまいます。
そういう意味で、デジタル庁がDXを進めるうえで、行政手続きのオンライン利用率がOECD加盟国の中で1位になるという目標を掲げてもいいのではないかと思います。
このくらいの覚悟でDXに臨まなければ、他国に行政のデジタル化で更に差をつけられてしまいます。
こうした目標設定はデジタル庁の所属職員が各々業務を遂行するうえでのやりがいにもつながると思うのです。


添付:

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