2022年01月23日
No.5172 ちょっと一休み その809 『北京オリンピック・パラリンピックの開催に見る人権との関係の有無』
プロジェクト管理と日常生活 No.725 『中国の女子テニス選手を巡る問題の行方』で中国の女子テニス選手を巡る問題についてご紹介しました。
その時以来、オリンピック・パラリンピックと人権との関係の有無について気になっていました。
そうした中、昨年12月14日(火)付けネット記事(こちらを参照)でこの件について取り組んでいたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・日本共産党の志位和夫委員長は13日、「中国に人権抑圧の是正と五輪憲章の順守を求めよ――五輪開会・閉会式への政府代表の不参加は当然」と題する声明を発表しました。
・来年2月の北京冬季オリンピックをめぐり、中国政府による重大な人権侵害・人権抑圧が世界であらためて注目されている。
・この間、中国政府によって行われてきた香港での民主化を求める勢力への弾圧は、「一国二制度」という国際公約に反し、一連の国際条約・取り決めにも反するものである。新疆(しんきょう)ウイグル自治区での少数民族への抑圧、強制収容などの人権侵害も、国際法の義務への重大な違反である。
・中国の政権党幹部から性暴力を受けたと告発した中国女子テニス選手の消息が不明になっている問題は、深刻な人権侵害であり、国際的な女子テニス協会(WTA)は、中国でのすべての試合開催の停止を声明している。
・これらの中国政府による人権侵害・抑圧は、中国政府自身も賛成してきた「世界人権宣言」(1948年)、国際人権規約(66年)、ウィーン宣言(93年)など国際的な人権保障の取り決めに反するものである。
・同時にそれは、オリンピックの目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」(根本原則第2項)とし、「憲章の定める権利および自由は…いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」(同第6項)と明記しているオリンピック憲章とも両立しえないものである。
・日本共産党は、中国政府に対して、オリンピックを開催する以上、自ら賛成してきた国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとることを厳しく求める。
・国際オリンピック委員会(IOC)は、中国政府に対して、オリンピック憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとり、オリンピック開催国にふさわしい責任を果たすことを求めるべきである。この点で、中国女子テニス選手の問題で、IOCが、実際上、中国を擁護し、真相の隠蔽(いんぺい)に加担するのに等しい行動をとっていることは重大である。
・国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章に反する事態が続いているもとで、大会の開会・閉会式に政府代表を派遣することは、中国での人権抑圧の黙認となりかねない。日本政府は、当然、政府代表を送るべきではない。そうした態度をとることは、大会運営には影響せず、政治によるオリンピックとスポーツへの介入にはあたらない。大会に向け懸命に準備してきた選手たちの参加は保証されなければならない。
・同時に、ことは、政府代表を送らないという対応だけですむ問題ではない。この間、日本政府は、中国政府による重大な人権侵害に対して、国際的な人権保障の取り決めを土台とした正面からの批判を行うことを回避する姿勢を続けてきた。
・北京冬季オリンピックへの対応が国際的に大きな問題となっている今こそ、日本政府は、中国政府に対して、従来の及び腰の態度をあらため、国際法にもとづく冷静な外交的批判によって、人権侵害の是正とオリンピック憲章の順守を正面から求めるべきである。

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

まず今回ご紹介した日本共産党の志位和夫委員長による声明について、中国共産党政権に対して好意的な内容だろうという先入観を持っていましたが、良い意味で見事に裏切られました。
そこで、あらためて声明の要旨を以下にまとめてみました。

(中国政府によるこれまでの度重なる一連の国際条約・取り決めへの違反行為)
・中国政府による香港での民主化を求める勢力への弾圧は、「一国二制度」という国際公約に反し、一連の国際条約・取り決めにも反するものである。
・新疆(しんきょう)ウイグル自治区での少数民族への抑圧、強制収容などの人権侵害、あるいは中国の政権党幹部から性暴力を受けたと告発した中国女子テニス選手の消息が不明になっている問題といった、中国政府による人権侵害・抑圧は、中国政府自身も賛成してきた「世界人権宣言」(1948年)、国際人権規約(66年)、ウィーン宣言(93年)など国際的な人権保障の取り決めに反するものである。
・同時にそれは、オリンピックの目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」(根本原則第2項)とし、「憲章の定める権利および自由は…いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」(同第6項)と明記しているオリンピック憲章とも両立しえないものである。

(中国政府の取るべき対応)
・中国政府はオリンピックを開催する以上、自ら賛成してきた国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとるべきである。

(IOCの取るべき対応)
・国際オリンピック委員会(IOC)は、中国政府に対して、オリンピック憲章を順守し、人権侵害の是正の措置をとり、オリンピック開催国にふさわしい責任を果たすことを求めるべきである。

(日本政府の取るべき対応)
・国際的な人権保障の取り決め、およびオリンピック憲章に反する事態が続いているもとで、大会の開会・閉会式に政府代表を派遣することは、中国での人権抑圧の黙認となりかねない。日本政府は、当然、政府代表を送るべきではない。
・北京冬季オリンピックへの対応が国際的に大きな問題となっている今こそ、日本政府は、中国政府に対して、従来の及び腰の態度をあらため、国際法にもとづく冷静な外交的批判によって、人権侵害の是正とオリンピック憲章の順守を正面から求めるべきである。

また昨年12月19日(日)付けネット記事(こちらを参照)でも同じテーマについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・中国外交部の汪文斌報道官による16日の定例会見で関連評論を要求された際に「北京冬季五輪は世界の冬季五輪選手とウィンタースポーツ愛好家の祝祭」とし、「スポーツを政治化するいかなる行為も五輪憲章精神に反する」と述べた。
・これに先立ち、岸田首相はこの日開かれた参議院予算委員会で北京冬季五輪に参加するかどうかに関する質問に「今、私自身の参加は予定されていない」と答えた。他の米国同盟国のように“外交的ボイコット”という表現は使わなかったが、首相の不参加を初めて言及したもので注目される。

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

中国外交部はいつもながら自国の取り組みにとって都合の悪い事実は全て“政治化すべきでない”、あるいは“内政干渉”の一言で片づけているのです。
まさに経済力や軍事力を背景とした大国意識で、他国からのどんな指摘も意に介さないという姿勢なのです。
一方、岸田総理の実質的な“外交的ボイコット”は妥当な判断と言えます。
なお、昨年12月24日、政府は北京オリンピック・パラリンピックに政府代表団を派遣しない方針を発表したと報じられています。

要するに、中国は様々な面で国際公約や一連の国際条約・取り決めに反する行為を繰り返し、一方で中国国内では人権侵害や抑圧を繰り返し行ってきている“国際社会の問題児”的な存在なのです。
更にオリンピック憲章にも反しているのですから、本来オリンピック・パラリンピックの開催国として相応しくないのです。
習近平国家主席はこうした世界の多くの国々が中国をどのように見ているかを真摯に受け止めて方針転換すべきなのです。
そのためには、まず“中国共産党ファースト”で憲法さえも中国共産党政権を維持するための手段という基本的な考え方で国際社会にまで展開しているこうした方針を改めるべきなのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』)
習近平国家主席がこの憲法さえも“中国共産党ファースト”の手段とする考え方を改めない限り、アメリカを中心とする民主主義陣営と中国を中心とする覇権主義国家陣営との武力衝突をもたらす懸念は増していく一方です。

こうした状況下において、北京オリンピック・パラリンピックは開催されようとしているのです。
残念ながら、IOCもオリンピック憲章を順守する立場にありながら、中国の意向をくんでオリンピック憲章に反する中国の行為に目をつむっている状況はとても由々しき問題です。

プロジェクト管理と日常生活 No.718 『ウイグル人の人権を巡る国連での米中支持の驚くべき割合!』でもお伝えしたように中国は国連においてもその支配力を強めています。
その延長線上で、今やIOCも中国の影響下に取り込まれていると言えます。
こうした状況について、IOCはきちんと国際社会に向けて弁明すべきなのです。

こうした大国だから許されるという現実に対して、日本は“大国と言えども誤りは是正されるべきである”というスタンスで国際社会に臨むことが日本にとっても本来の法治国家である国々にとってもとても重要なのです。
ちなみに中国も表面的には法治国家ですが、本来の法治国家とは異なる“似て非なる”法治国家なのです。
幸いにして、今のところ岸田総理はこうしたスタンスをお持ちのように見受けられます。

ということで、今回の北京オリンピック・パラリンピックの開催は仕方ありませんが、これ以降の中国におけるオリンピック・パラリンピックの開催は中国がオリンピック憲章を順守するまでは停止するというくらいの主張をIOCは本来すべきなのです。

こうしたIOCの本来取るべき対応、あるいはアメリカを中心とする民主主義陣営の国々による中国の人権無視など国際社会のルール違反に対する対応が中途半端であれば、間違いなく中国はいずれ世界制覇を果たすことになってしまうのです。
その結果、世界は自由にものが言えない、あるいは人権が無視されるといったような“暗黒の社会”となってしまうのです。

ということで、次の世代のためにも日本政府のみならず、国民一人ひとりがこうした中国の脅威に対して目を背けず、タイムリーに適切な対応をすることが求められているのです。

 
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