2021年11月06日
プロジェクト管理と日常生活 No.718 『ウイグル人の人権を巡る国連での米中支持の驚くべき割合!』
6月24日(木)放送の「国際報道2021」(NHKBS1)でウイグル人の人権を巡る国連での米中支持の割合について取り上げていたのでご紹介します。

中国のウイグル人への人権侵害を非難する声明にオーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、日本、アメリカなど、40ヵ国以上が参加し、カナダが代表して声明を読み上げました。
「新疆ウイグル自治区では100万人以上が恣意的に拘束され、ウイグルなど少数民族は監視され、基本的自由やウイグル分化が制限されているとの報告があがっている。」

一方、中国の立場を支持する声明には60ヵ国以上が参加、人権問題で評価の低いベラルーシの大使が「人権を口実に他国に干渉するべきではない」と指摘しました。

こうした状況について、番組キャスターで前ワシントン支局長の油井秀樹さんは次のようにおっしゃっています。
「(中国の人権問題を巡って、国連人権理事会の場でも米中双方が激しく争っている状況について、)各国を巻き込むかたちで対立が鮮明になったのです。」
「人権理事会で中国政府を批判する共同声明を発表したのが45ヵ国になります。」
「アメリカ、ヨーロッパの大半の国々とアジアからは日本が参加しました。」
「声明ではウイグルと香港、それにチベットの状況に強い懸念を表明したのです。」
「これに対して、ウイグル、香港、チベットは中国の内政問題だとして、逆に中国政府を支持する共同声明を発表する国がありました。」
「その数は中国政府によりますと65ヵ国なんですね。」
「ただこの65ヵ国の国名は明らかにされていないんですね。」
「実は去年も国連人権理事会の場では中国政府を支持する同様の共同声明が発表されています。」
「その時は中国を含め46の国と地域で、中東やアフリカの国々に加えてアジアではカンボジアやヤンマーが中国支持を表明したのです。」
「今年65の国という数字が中国政府の言う通り本当であれば、この1年で中国支持に回った国が更に20ヵ国近く増えたことになります。」
「国際社会では近年自由や人権を尊重する民主主義国家の数が減少傾向にあります。」
「こうした中で中国政府は共産党1党支配という自らの強権支配に自信を強めていまして、人権という価値観は今世界の中で危機的な状況にあると感じざるを得ません。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容のポイントを以下にまとめてみました。
・中国の人権問題を巡って、国連人権理事会の場で中国のウイグル人への人権侵害を非難する声明にオーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、日本、アメリカなど、45ヵ国が参加した
・一方、中国政府によれば、中国の立場を支持する声明には65ヵ国が参加したといい、これが本当であれば、この1年で中国支持に回った国が20ヵ国近く増えたことになる
・国際社会では近年自由や人権を尊重する民主主義国家の数が減少傾向にある
・こうした中で中国政府は共産党1党支配という自らの強権支配に自信を強めており、人権という価値観は今世界の中で危機的な状況にある

こうしてみると、私もその一人ですが、多くの方々は大きな違和感とともに、将来の国際社会の行方にとても不安を感じるのではないでしょうか。

少なくとも日本人の多くは自由、平等、そして人権の尊重は守られるべきであると考えていると思います。
ところが、国際社会においては、今や中国の人権問題を巡って、中国を非難する国よりも擁護する国の方が多いのが現実なのです。
こうした事実を目の当たりにすると、前回もお伝えしたように、中国の国連に対する支配戦略が功を奏していることが理解出来ます。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.666 『国連の専門機関の支配権を強める中国!』

しかし、よくよく考えてみれば、中国のこうした戦略以外に途上国の中にはまだまだ独裁政権の色彩が色濃く残る国々があるのです。
そこでネット検索したら、世界には独裁国家が20ヵ国あると記事がありました。(こちらを参照)
また、中国はアフリカ諸国を中心に途上国に対して積極的に開発支援を進めています。
同時に一対一路政策でも参加国への影響力は当然強まります。
更に数年以内には経済力、軍事力の面でもアメリカを追い抜くという予測もあります。

しかし、習近平国家主席が率いる中国共産党政権は自由や人権を尊重せず、世界制覇に向けて国際的なルールは一切無視し、目的を達成しようとしているのです。
見方を変えれば、その目的はともかく習近平国家主席は今の国際社会において非常に優れた戦略家とも言えます。
ですから、今の状況からすれば、近い将来、気が付いたら民主主義陣営の国は国際社会から孤立してしまうリスクさえ感じてしまいます。
こうした中国に立ち向かうには、前回、プロジェクト管理と日常生活 No.717 『将来の世界を暗示させる香港の現状』でもお伝えしたように、民主主義陣営の国はアメリカを中心に結束して真剣に中国に対峙していくことが求められるのです。

なお、今回は現状をデータに基づいて把握することの大切さを身に染みて感じました。
それにしてもアメリカ中心の民主主義陣営が45ヵ国、対する中国を中心とする独裁国家や中国の影響力の強い陣営は65ヵ国という数字は想定外で将来の国際社会を嫌でも暗示させます。

大げさではなく、今や民主主義の危機が大きくなりつつあるということに対して民主主義陣営の国々は真剣に向き合うべきなのです。

民主主義国家、共産主義国家、あるいは独裁国家というように、どんな形態の国家においても自由、平等、人権の尊重といった要件は人が人らしく暮らしていくうえで守られなければならないのです。
そしてこうした要件は自然に用意されるのでなく、自らが勝ち取らなければ手に入らないのです。
そして国どうしの関係においても同様のことが言えるのです。

 
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