2021年10月30日
プロジェクト管理と日常生活 No.717 『将来の世界を暗示させる香港の現状』
6月23日(水)付けネット記事(こちらを参照)で将来の世界を暗示させる香港の現状について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全てネット記事掲載時のものです。

・香港で6月24日、また一つ「自由の炎」が消える。『蘋果日報』(Apple Daily)の廃刊である。日本では、「リンゴ日報」の愛称で知られている。
・『蘋果日報』は1995年、香港の著名な富豪の黎智英(Jimmy Lai)氏が創刊した。1948年広州生まれの黎氏は、12歳の時、反右派闘争や大躍進運動、3年飢饉で中国国内が大混乱に陥る中、密航船に乗って香港に渡ってきた。成人して、艱難辛苦の末にアパレルチェーン『ジョルダーノ』を立ち上げて成功させ、立志伝中の人物となった。
・『蘋果日報』は相手が北京政府だろうが香港の財閥だろうが、平気で噛みつく。
・昨年時点で、紙版10万部、ネット版購読61万部という香港最大部数を誇っていた。
・『蘋果日報』は中国では「所持していただけ」で取り調べ受けてしまう
・昨年2月28日、黎智英氏が香港警察に逮捕された。まもなく釈放されたが、4月18日に再逮捕された。
・香港国家安全維持法が施行された後の昨年8月10日には、『蘋果日報』編集部に、200人以上の捜査員が家宅捜索に入った。
・6月17日には、『蘋果日報』の5人の幹部が逮捕された。そしてついに、「香港の表現の自由の象徴」が息絶える日が来たのだ。
・『蘋果日報』以外の大手香港紙は、すでに「親中派」に寝返っている。
・リンゴ日報幹部の逮捕・同紙の廃刊に関して、香港当局の対応を批判する外国政府に対し「国家安保を脅かす行動を美化している」と香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は反論した
・『蘋果日報』の元幹部によれば、習近平政権が目指すのは「強国強軍」であり、香港を「第二の新疆ウイグル族」とみなして弾圧に乗り出したという
・また、この元幹部は「私自身は、1997年に香港が中国に返還された時、北京政府が「一国二制度」を約束した50年のうち20年、すなわち2017年の時点で、起こっているだろうことを3点、予測していた」と言う。第一に、中国大陸が強大になり香港を早期に吸収合併しようとする。第二に、中国大陸と香港市民の心理的不一致が拡大し、強く対立するようになる。第三に、その結果として、香港から脱出しようとする人が増える。この「3つの予測」は、現時点ですべて当たった。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

こうして見てくると、あらためて習近平国家主席の目指す“偉大なる中国の復興”、そして覇権主義の世界展開におけるとても強い意志を感じます。

なお、1999年に中国で出版された「超限戦」(こちらを参照)ですが、「超限戦」とは一言で言えば「戦争とはルールのないものだ」という意味です。
要するに“目的のためには手段を択ばず”という考え方なのです。
ちなみに、この本の著者は喬良、王湘穂の二人で、喬良は当時空軍大佐でしたが、今は人民解放軍の空軍少将で国防大学の教授も務めているといいます。

この本の趣旨に照らすと、これまでの以下のような中国の一連の動きがとても理解出来ます。
・国連に対する支配力の強化(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.666 『国連の専門機関の支配権を強める中国!』
・南シナ海で着々と進める実効支配(こちらを参照)
 南シナ海における中国の権利主張を否定した常設仲裁裁判所の判決から今年で5年になるが、受け入れを拒否する中国はこの間、国際社会からの批判をよそに着々と実効支配を進めてきた
・一対一路政策(こちらを参照)による途上国などへの支配力の強化
・国家安全維持法の施行による、香港に言論の自由などを保障してきた一国二制度(こちらを参照)の無視
一国二制度はイギリスから中国に香港が返還されたときの国際公約でもあり、香港の憲法ともいわれる「香港基本法」にも掲げられている
・中国、台湾の統一を狙った台湾への軍事的な圧力
・新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、自国に不利な発言をしたオーストラリアへの経済的な圧力(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.688 『オーストラリアへの経済制裁に見る中国の脅威とその対応策!』
 なお、現在も中国は新型コロナウイルスの感染源に関連するデータは対外的に隠し通そうとしている

ですから、これまで何度となく繰り返しお伝えしてきたように、アメリカを始めとする民主主義陣営の国々は真剣にこうした中国の強い意志に向き合い、早期に一丸となってこうした中国の動きを抑制することが求められるのです。
その際、勿論、習近平国家主席は自国の経済成長の継続こそが自国民による中国共産党への支持基盤ですから他国との貿易の激減は無視出来ません。
なので、中国の経済成長に大きな影響を与えるような様々な施策を実施することも考えられます。
しかし、この方法では影響を与える側の民主主義陣営の国々も同様に影響が出てきます。

では他にどのような方法があるでしょうか。
そこでヒントの一つは中国がプライドをとても大切にしていることです。
なので、来年開催予定の北京冬季オリンピックの集団的なボイコットです。
その裏付けですが、そもそもオリンピックは「平和の祭典」と言われているように、平和を希求しています。
それに反して現在の中国は南シナ海において常設仲裁裁判所の判決を無視した行動を続け、台湾への軍事的な圧力を強めています。
更に新疆ウイグル自治区での強制労働に対して国際的に非難を浴びています。

果たしてこうした中国がオリンピック開催国として相応しいのでしょうか。
こうしたことから北京冬季オリンピックに参加予定のより多くの国々はボイコットすべきだと思います。

もう一つ思い浮かぶのは中国共産党内にも反習近平国家主席の勢力もいるはずです。
こうした勢力と手を結んで現在の中国共産党の動きを軌道修正するという方策も考えられます。

また、アメリカは一部の国々と軍事的な協力関係を結んで中国に対抗しようとしていますが、民主主義陣営という枠組みで中国の軍事力を明らかに凌駕するほどの軍事パワーを持つことも中国との軍事的な衝突の抑止力となり得ます。
しかし、今やアメリカ陣営と中国陣営の国々が戦争に至ることはあまりにも被害が大きく、“人類の自殺行為”と言えます。

ですから、先ほどご紹介した「超限戦」でいうところの戦略に則り、戦争行為を除くあらゆる手段を使って習近平国家主席率いる中国の暴走を食い止めることが必要なのです。
中国リスクは今後徐々に高まっていき、民主主義陣営の国々の対応が不十分であり続ければ取り返しのつかない状況になってしまうと認識しなければならないのです。

 
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