2021年07月18日
No.5010 ちょっと一休み その783 『世界の富裕層の割合から見えてくる格差社会』
これまで何度となくと“富の集中”、あるいは“格差社会”についてNo.4020 ちょっと一休み その647 『揺らぐ世界 その7 世界が直面する“行き詰まり”!』などでお伝えしてきました。
そうした中、6月23日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界の富裕層の割合から見えてくる格差社会について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

クレディ・スイスが6月22日に発表した世界の家計資産に関する報告書によりますと、100万ドル(約1億1000万円)以上の純資産(資産から負債を控除したもの)を持つ世界の富裕層は5600万人と、1年前に比べて520万人増えました。
世界の総資産は新型コロナウイルスの影響で昨年1月〜3月で17兆ドル減少しましたが、その後の株高などにより前年比で28兆ドル増加しました。

日本についてはどうかというと、富裕層は370万人で、前年比で40万人増えました。
これはアメリカ、中国に次いで3番目の人数で、しかも前年比で人数も増えています。
ちなみに、純資産5000万ドル(約55億円)以上では4670人で、前年比で1580人増えました。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「アメリカのイエレン財務長官が典型なんですけど、高圧経済といって、経済の圧力を高めて失業している人を救おうじゃないかと。」
「パウエルFRB議長もそれに乗っかってるんですけども、冷静に考えてみると、雇用対策をやっている一方で、資産価格が上がりますから、お金持ちは増々豊かになるという雇用と格差の問題、これは頭が痛い問題ですよね。」
「(だから格差是正のために富裕層課税の話も出てくるというのが現実ではという指摘に対して、)そうなんですね。」
「その税制をも含めて全体の議論を今しなきゃいけない局面に入っているかもしれませんね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、特に非正規雇用者の方々はその余波を受けて雇止めや労働時間の短縮などで大変な状況が続いています。
また、長い目で見ると、バブル経済の崩壊以降、中国やアメリカが経済成長を遂げている一方で日本経済はいまだに米中に比べると停滞状況が続いており、賃金の最低保障額もほとんど増えていません。
そうした中、株高もあり、富裕層は昨年比でも増えているというのです。
今後ともAIやロボットなどの技術によるDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むにつれて、こうした格差の拡大は構造的に増々進むと見込まれます。

では、そもそもなぜ格差拡大が問題なのでしょうか。
富裕層と言えども一通り身の回りのモノを手に入れれば、消費で使うにはあまりにも保有するお金が多過ぎます。
また株式などに投資をするにしても多額のお金は金庫の中や預金として眠ってしまうのです。
一方で、非正規雇用者を中心とする低所得者層は安定した暮らしを望むことは出来ず、子どもの教育や一般的な消費に回す資金は限られてきます。

要するに、格差社会においては、富裕層の所有する高額のお金が眠っており、一方で低所得者層は不安定でつましい暮らしを強いられているのです。
こうした状況は健全な社会とは言えません。

ではこうした状況を打開するためにどのような対策があるのでしょうか。
大きく2つあると私は考えます。
・ベーシックインカムの導入(参照:アイデアよもやま話 No.3401 ”仕事がない世界”がやってくる その3 新たな生活保障制度の必要性!
・税制改革(ベーシックインカムの運用に必要な財源の確保)

なお、税制改革については、「“法人税の最低税率15%以上”で130の国と地域が大枠合意」と報じられていたように一歩前進しました。(詳細はこちらを参照)
この流れで、富裕層の最低税率も引き上げ、これらで得られる税金を財源にしてベーシックインカムを運用するというわけです。
でななぜ、国際的な枠組みで最低税率を合意する必要があるかということですが、そうしないと最低税率の低い国へと企業や富裕層のお金が移ってしまうからなのです。

ということで、世界的な格差社会化の進行を阻止するためには世界的な枠組みで取り組むことがとても重要なのです。

 
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