2016年05月27日
アイデアよもやま話 No.3401 ”仕事がない世界”がやってくる その3 新たな生活保障制度の必要性!

3月15日(火)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)で”仕事がない世界”の到来について取り上げていました。

そこで、3回にわたってご紹介します。

3回目は、新たな生活保障制度の必要性についてです。

 

スイスでは”仕事がない世界”の到来の先を見据えた議論が始まっています。

街中を走る1台のクルマには“ベーシックインカム”と書かれています。

“ベーシックインカム”とは、国や自治体などが働く、働いていないに係わらず全ての人に毎月必要最低限の生活費を支給する制度です。

4年前、“ベーシックインカム”の導入を求める署名活動を始めたエノ・シュミットさんは12万人の署名を集めたことで、今年6月に国民投票が行われることになりました。

シュミットさんは、成人一人当たり毎月およそ30万円、未成年には約7万円を支給するよう訴えています。

国民投票で、賛成が過半数を超えるなどすれば、連邦議会は“ベーシックインカム”の導入に向けた法整備を行うよう求められます。

シュミットさんは、勉強会の場で次のように訴えています。

「あと20年で雇用は半分になりますよ。」

「皆さんどうするつもりですか。」

 

シュミットさんは、年間およそ25兆円の財源の4分の3を税金で、残り4分の1は社会保障費の見直しで捻出出来るとしています。

しかし、この勉強会に参加した人たちからは、増税により働く人の負担が増すのではないかと懸念する声が上がりました。

働こうとする人が誰もいなくなるのではないかという声も上がりました。

これまでのところ、反対する意見が多いのが現実です。

しかし、シュミットさんは、収入のために働くという前提自体を考え直す必要があると次のようにおっしゃっています。

「今私たちは、これまでの資本主義からテクノロジーの時代への過渡期にいます。」

「新たな時代に求められているのは、新しい収入のあり方なのです。」

 

こうした状況について、番組ゲストの千葉大学法政経学部教授の広井 良典さんは次のようにおっしゃっています。

「(ベーシックインカムは資本主義と言えるのかという問いに対して、)これは突飛なアイデアのように見えるんですけども、これまでの資本主義の流れを振り返ると、ある種必然的に浮かび上がってくる方向のようにも言えるかと思うんですが、400年ぐらいの資本主義の流れを大きく見た場合、最初は東インド会社が1600年頃できて資本主義の勃興期、この時今の生活保護にあたる制度が出来た。」

「それから(18世紀半ばに)産業革命が起こって、今度は社会保険というかたちで生まれてきて、更に(1929年に)世界大恐慌が起こって、今度はケインズ(理論)が政府が公共事業とか社会保障を拡充して雇用そのものを作っていくと。」

「これは何が示されているかというと、資本主義が進化していく中で、それに順次修正が加えられてきたと。」

「より積極的なかたちで公的部門が介入して、資本主義を修正しながら何とか成長を維持してきた。」

「それが更にITやAI技術により根本的な、一方で失業が増えて成長がままならぬという状況になってきて、かなり資本主義の400年の流れの根本的な転換期に来て、そこで出て来ているのがベーシックインカムということになると思います。」

「(資本主義を維持していくうえでは、あらかじめみんなが生活できるだけのお金を配ることが議論されるようになったのかという問いに対して、)そうですね。」

「(これまでの資本主義の流れを見ると、)面白いことに事後的な対応からだんだん(問題が生じる前の)前倒しの対応に変化しているんですね。」

「最初からお金を給付することで、より人々が自由になって経済にもプラスになる、平等も実現される、そういう考え方なんだと思います。」

「(賃金と働くことの関係について、今後どうなっていくのかという問いに対して、)面白いことに、お金に換算出来ない価値といいますか、お金に換算出来ないような働くことへのモチベーションみたいな、それが資本主義が進化していった結果として、ある意味で資本主義と矛盾するような要素が出て来て、それをどう発展させていくかと。」

「あと、日本は人口減少社会ということで世界の中で新しい社会のモデルといいますか、それを率先して示していくようなポジションにもあるので、これまでとはかなり違う根本的に新しい発想で考えていく必要があるんではないかと思います。」

 

お金に換算出来ない価値が深まっていく、そういう時代にどう働くのかが今問われているというのです。

 

以上、番組の内容についてご紹介してきました。

国や自治体などが働く、働いていないに係わらず全ての人に毎月必要最低限の生活費を支給する制度、“ベーシックインカム”についていきなり言われると、「そんなバカな」と思います。

しかし、これまでの資本主義の修正の流れを理解し、その延長線上でみれば、新たな生活保障制度“ベーシックインカム”も何となくうなづけるような気分になってきます。

しかし、こうした制度を維持していくためにはそのための財源が必要です。

“打ち出の小づち”でもあれば別ですが、短期的には法人税、あるいは高額所得者の所得税や消費税の増税しかなさそうです。

しかし、長期的にみると、いかにリーマンショックなどのような金融恐慌とは無縁な経済空間を見出すかが大きな課題だと切実に感じます。

 

以上、3回にわたって来るべき”仕事がない世界”についてご紹介してきました。

最後に、”仕事がない世界”に対応した今後実施されるべき対策として、あらためて私の思うところも加えて以下の3つを挙げたいと思います。

1.新技術を身に付ける生涯教育(恒常的な技術革新への対応力、および創造力を強化する)

2.ワークシェアリング(少ない就業機会を分かち合う)

3.恒常的な生活保障制度(仕事がなくてもごく普通の暮らしを可能にする)


 
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