2021年07月03日
プロジェクト管理と日常生活 No.700 『香港「リンゴ新聞」を廃刊に追い込んだ中国の横暴さ!』
6月24日(木)放送の「国際報道2021」(NHKBS1)で香港「リンゴ新聞」を廃刊に追い込んだ中国の横暴について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

「リンゴ日報」が6月24日に販売される新聞を最後に発行を停止すると発表しました。
1995年に創刊した「リンゴ日報」は娯楽ニュースや犯罪報道に焦点を当て、人気大衆紙としての地位を確立、徐々に政治のニュースも取り上げ、中国政府に批判的な論調を展開しました。

地元メディアは創業者の黎智英さんについて次のように伝えました。
2014年、黎さんは雨傘運動と呼ばれた大規模な反政府デモを強く支持、2019年には容疑者の中国本土への身元引き渡しを可能にする条例に反対する抗議デモで黎さんはデモ参加者に雨傘運動を象徴する黄色い傘を無料で提供しました。

しかし、昨年、香港国家安全維持法が施行されると状況は一転します。
香港国家安全維持法施行から約1ヵ月後、黎さんら幹部たちが逮捕されたのです。
香港の民主派などから“言論の自由を守る最後の砦”として支持されてきた「リンゴ日報」、警察に資金が凍結されて資金繰りが厳しくなるなどして発行の停止を判断したものと見られます。
香港政治の専門家で立教大学の倉田教授は、“政府批判の鋭い声が消えてしまうのは大きなインパクトがある”としたうえで、反発がより激化する可能性もあると次のように指摘します。
「民意のガス抜きの手段としての言論の場がなくなってしまうということになりますと、これが香港の政治的安定に本当に寄与するのかというのは疑問だと思います。」
「抗議活動ではなくて、より激しいものが発生する可能性も長い目で見ればあるとは思います。」

「リンゴ日報」のニュースサイトは記事の閲覧が出来なくなり、次のようなメッセージが表示されています。
「香港の人たちの変わらぬご支援に感謝します。」
「お元気で ここでお別れです。」

NHKの若槻真知香港支局長は次のようにおっしゃっています。
「こちらでは今も社員たちに感謝の気持ちを伝えたいという市民たちが集まっています。」
「今日未明に発行された最後の朝刊は、普段は新聞を買わない人も言論の自由の歴史を手元に残したいと買い求め、すぐに売り切れとなりました。」
「市民にとって「リンゴ日報」が特別な存在だったとあらためて感じます。」
「(中国共産党に盾突く者は許さないという香港当局の姿勢が感じられるが、「リンゴ日報」の停止は市民の生活にどのような影響を及ぼすかという問いに対して、)「リンゴ日報」は香港国家安全維持法の施行後、抗議活動が抑え込まれ、選挙も自分たちの代表を選ぶことも出来なくなったと考える市民にとって残された数少ない心の拠り所となってきました。」
「だからこそ今回大切なものを奪われたと感じている人たちは多く、市民の間には怒りと喪失感が入り混じった感情が広がっています。」
「そして最後まで「リンゴ日報」に対する取り締まりの手を緩めなかった当局の厳しい姿勢は異なる意見を発表しようという人たちを一層委縮させることになるかも知れません。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、6月25日(金)放送の「モーサテ」(テレビ東京)でも同様のテーマについて取り上げていたのでご紹介します。 

香港の民主派系新聞「リンゴ日報」が廃刊に追い込まれたことを巡る国際社会からの批判の声について、中国外務省は6月24日、「いかなる国も香港についてとやかく言う権利はない」として強く反発しました。
これに先立って加藤官房長官は「重大な懸念」を示していた他、アメリカのバイデン大統領も6月24日、「香港と世界の報道の自由にとって悲しい日だ」と述べました。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

そもそも中国共産党は”まず中国共産党ありき”で、憲法より上位に位置付けられているといいます。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』
ですから中国では憲法はあくまでも中国共産党の統治手段であり、一般的な法治国家にとっての憲法とは“似て非なる”存在なのです。
そして中国共産党にとって不都合な個人や組織には、法に基づく体裁を取りながら、一見して難癖とも思われる手段で行動を抑え込むという方法で中国共産党による一党独裁を維持しているのです。
以下は「リンゴ日報」を廃刊に追い込んだ香港国家安全維持法に基づく中国当局の具体的な手段です。
・国民や組織の行動を規制するための法律の施行
・幹部の逮捕
・資金の凍結
・デモなどの規制
・関連サイトの閲覧規制

なお、こうした中国共産党による横暴に対する他国からの非難に対する外交当局の常套句は“内政干渉”の一言です。(参照:No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』
同時にこうした中国への内政干渉をした国に対しては、関税引き上げなどで個別攻撃も展開しているのです。

こうした中国の最近の横暴は歯止めが効かない状態です。
では国際社会としてどのような対応をすべきかですが、大きく2つあると考えます。
1.あくまでも国際法違反を盾に国連参加国としての立場から中国の行為を強く非難する(参照:No.4956 ちょっと一休み その774 『中国による“内政干渉”の一言で物事が進んでいいのか?』
2.中国共産党の覇権主義や人権弾圧に対しては、そのアキレス腱とも言える経済の成長を阻止するような打撃をアメリカを中心とするより多くの国連参加国が一致団結して加える

いずれにしても、現在の習近平国家主席の率いる中国共産党の覇権主義は歯止めが利かない状態なので、香港や台湾への弾圧、あるいは東シナ海や南シナ海への軍事的な展開を阻止することが日本にとっては国家安全保障上とても重要なのです。
なぜならば、日本政府が適切な対応を取らなければ、香港や台湾への弾圧が一段落した後には尖閣列島や沖縄に対しても領有権を主張してくることは明らかだという専門家の声も上がっているからなのです。

 
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