2月1日(月)放送の「グッド!モーニング」(テレビ朝日)の「池上彰のニュース検定」コーナーで菅総理の温室効果ガスゼロ宣言の背景について取り上げていたのでご紹介します。
バイデン大統領は就任してから早速地球温暖化防止の国際枠組み、「パリ協定」の復帰に動き出しました。
トランプ前大統領が「パリ協定」からの脱退を表明していたからです。
アメリカは大統領の交代によって180度方向転換したのです。
国際的な流れが大きく変化している中、菅総理も動きました。
昨年10月の所信表明演説で2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする方針を打ち出したのです。
この表明は産業界に衝撃を与えました。
安倍前総理は産業界に配慮して明確な方針を示していなかったからです。
経済産業省の官僚が政策づくりでリードしていた安倍政権では、数値目標を掲げると企業活動にマイナスになるという見方もあったのです。
しかし菅総理はこれまでのやり方を一変しました。
そのきっかけの一つとなったのは小泉環境大臣です。
小泉環境大臣は2019年12月、地球温暖化問題を話し合う国連の会議「COP25」に出席した際、“日本は無策だ”と集中砲火を浴びました。
帰国後、当時の菅官房長官に「世界では約120ヵ国と地域が2050年までに“温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする”目標を掲げている」と報告しました。
すると菅官房長官(当時)は「表明している国はそんなに多いのか」と驚いたといいます。
そして菅総理は2050年までに“温室効果ガスの排出量を実質ゼロ”という数値目標を掲げたのです。
環境は日本の技術力を生かせる有望な分野だと考えているのです。
更に研究開発を支援するため、2兆円の基金を創設し、雇用と成長を促す考えも明らかにしました。(参照::アイデアよもやま話 No.4924 政府が率先して取り組む環境投資への呼び込み!)
アメリカだけでなく日本も温暖化対策では大きく舵を切ったのです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容のポイントを以下にまとめてみました。
・安倍政権時代は、温室効果ガスの削減について産業界に配慮して明確な方針を示していなかった
・小泉環境大臣が「COP25」に出席した際、“日本は無策だ”と集中砲火を浴びたことを当時の菅官房長官に報告したことがきっかけで、菅総理は多くの国と同様に2050年までに“温室効果ガスの排出量を実質ゼロ”という数値目標を掲げた
要するに、安倍前総理も菅総理も、自ら率先して官僚の反対を押し切って強力なリーダーシップで地球温暖化対策に取り組むだけの強い意志は持ち合わせていなかったのです。
それだけ地球温暖化問題に危機感を持っていなかったということなのです。
その結果、他の積極的に取り組んでいる国々に比べて再生可能エネルギー発電や電気自動車(EV)の普及に後れを取って来たのですが、こうした状況に真剣に向き合い、世界各国の動きに合わせてようやく他国で設置した目標と同じ目標を設置し、取り組み始めたのです。
こうした後追いの政策では、今のような大変革期にはいずれ取り残されてしまいます。
これまで何度となく、“持続可能な社会”、あるいは“SDGs”、“DX(デジタルトランスフォーメーション)”をキーワードとした内容のブログを発信してきました。
世界各国は国と企業が連携して、今、こうしたキーワードを拠りどころに、いかにビジネスと結びつけていくか、真剣に取り組んでいます。
再生可能エネルギー発電の大量導入やガソリン車からEVへのシフト、あるいはデジタル化はその一例です。
今、世界各国はコロナ禍でその収束に向けた対応に躍起になっていますが、その一方でアメリカを始め、一部の国々は人類共通の目指すべき目標を掲げて社会の大変革を巻き起こそうとしています。
そうした中、日本国のリーダー、すなわち総理大臣には自ら日本の進むべき道を明らかにし、国民、そして官僚や企業にその想いを熱く語り、ワンチームとなって日本のあるべき姿の実現を目指し、一方で国際的にも注目されるようなリーダーシップを発揮していただきたいと思います。(参照:No.4056
ちょっと一休み その653 『時代のリーダーに最も必要な要件とは!』)