2020年12月14日
アイデアよもやま話 No.4825 世界電子政府ランキングに見える日本政府のDX化の遅れ!

9月11日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界電子政府ランキングについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

時期総理大臣の最有力候補とされる菅官房長官(番組放送時)の掲げている政策の1つがデジタル庁の創設です。

デジタル化が進んでいる国のランキング、すなわち世界電子政府ランキング(出所 国連 詳細はこちらを参照)を見てみると、日本は14位でトップ10には入っていません。

ちなみに、トップ10は以下の通りです。

1位 デンマーク

 2位 韓国

 3位 エストニア

 4位 フィンランド

 5位 オーストラリア

 6位 スウェーデン

 7位 イギリス

 8位 ニュージーランド

 9位 アメリカ

10位 オランダ

 

なお、1位のデンマークや2位の韓国には既にデジタル庁のような組織が存在しています。

番組では世界の最新事例を取材しました。

 

菅官房長官(番組放送時)は9月10日放送の当番組で次のようにおっしゃっています。

「今回のコロナで浮き彫りになったのがデジタル化の問題だったと思っています。」

「今は(データが)いろんな役所に分散していますから、それを一つにします。」

「デジタル庁に言えば、全てのデジタル関係が分かるようなかたちにしたいと思っています。」

 

このデジタル庁、実は世界では既に多くの国が創設しています。

デジタル化ランキングで世界2位の韓国は先進的な取り組みを進めている国の1つです。

今回、韓国版デジタル庁とも言える政府機関、情報化振興院にテレビ東京のカメラが入りました。

文龍植(ムン ヨンシク)院長は次のようにおっしゃっています。

「デジタル化を進める事業への経験が豊富で、品質も管理出来る人たちが働いている。」

 

パソコン画面に向かう職員たちはデジタル分野の専門家集団で、民間企業の出身者も多く、700人ほどいる職員のうち半数はデータ処理やネットワークなどの分野で博士号などの学位を取得するエリートです。

サムスングループやLGなどの民間企業とも連携して韓国政府のシステム開発を一手に担っています。

20年ほど前から行政のデジタル化に取り組む韓国では、この組織が中心となって新たなサービスを次々と生み出しているのです。

 

韓国では、地下鉄の駅や病院の施設などにある機器が設置されています。

この機器で住民票などさまざまな証明書を発行することが出来るのです。

住民登録番号を入力して、指紋認証をするだけで、住民票や納税に関する証明書から兵役の記録などをその場で受け取ることが出来ます。

引っ越しをした際には、政府のポータルサイトで転入手続きをすると、同時に運転免許証や健康保険証、学校の転学手続きまで一度に済んでしまうほど、システムの一元化が進んでいます。

更に韓国政府が今導入を準備しているのがモバイル身分証明書です。

韓国行政安全省では、モバイル身分証明書を導入してサービスを革新し、来年には運転免許証などに拡大していくといいます。

 

一部の民間サービスでは、既にモバイル免許証の活用が始まっています。

韓国政府は今後カード型の免許証と同じ法的効力を持つようにしていく方針です。

こうしたデジタル行政の取り組みは今回、新型コロナウイルスへの対応でも威力を発揮しました。

韓国政府は5月に日本の10万円給付に当たる緊急災害支援金を世帯ごとに最大約9万円支給、この際も申請はスマホやパソコンから名前や携帯電話番号、住民登録番号などを入力するだけで、翌日には入金が完了するという速さです。

ある一般男性は次のようにおっしゃっています。

「スマホのアプリで申請したが、5分ほどで終わった。」

「非常に便利です。」

 

他にも薬局のマスクの在庫状況を政府が持つ情報を使い、リアルタイムで確認出来るようにするなど、デジタル行政の仕組みをフル活用してきました。

丁世均(チョン セギョン)首相は次のようにおっしゃっています。

「これまで着実に築いてきた電子政府の基盤は新型コロナ危機の中で明るい光を放っている。」

 

韓国では、省庁の枠を超えて情報化振興院がデジタル行政を統括することで、迅速な対応が可能になっているといいます。

文院長は次のようにおっしゃっています。

「新技術を活用する際に、官僚や公務員は民間の技術発展のスピードに追い付くことが出来ない。」

「韓国情報化振興院は専門的な技術の部分を支える役割を持っている。」

 

今の日本の内閣(番組放送時)にもデジタル化を担当する大臣はいますが、その肩書を見て見ると、全く違う5つの分野(*)を兼任しています。


* 情報通信技術(IT)政策担当

  内閣府匿名担当大臣

 (クールジャパン戦略

   知的財産戦略

   科学技術政策

  宇宙政策)

 

デジタル庁について、竹本直一IT政策担当大臣(番組放送時)は9月11日の会見で次のようにおっしゃっています。

「(独立した庁をつくるべきという主張があるが、今の体制で十分かという問いに対して、)それは好みの問題というか、その方が効率がいいとか、効果がいいというのなら当然つくっていいと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

現在、日韓関係はギクシャクしており、No.4806 ちょっと一休み その748 『自国に甘く日本に厳しい韓国の文在寅大統領!』でもお伝えしたような内容を知れば、韓国に対して悪い印象を持つ日本人は少なからずいると思います。

しかし、その韓国は20年ほど前から国を挙げて行政のデジタル化に取り組み続けているといいます。

一方、日本は菅政権になってようやくDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて本格的に動きだしました。

実に韓国に比べて20年遅れです。

ここでとても残念に思うことがあります。

安倍内閣の長期政権では政策の方針として、“3本の矢”(参照:アイデアよもやま話 No.2918 成長戦略をリードするのは企業!)を打ち出しましたが、その一つは成長戦略でした。

そして、“3本の矢”政策を打ち出して時点で、既にデジタル化の重要性は一般的に認識されていたのです。

ですから、この成長戦略の一環として、政府のデジタル化を打ち出していれば、その後の日本経済、および国民の暮らしは今とはずいぶん違っていたと思うのです。

残念ながらこうした流れに出来なかったことが、電子政府ランキングで世界14位という結果をもたらしているのです。

また、コロナ禍における給付金の配布に時間と役所の労力をとても要してしまったのです。

そして、今後給付金の配布が必要になる際にもやはり時間や労力を要してしまいます。

 

このように考えると、確かに安倍政権は株価の上昇や失業率の低下という成果は残しましたが、これからの時代の経済のみならず社会のあり方を大きく左右するデジタル化への取り組みにおいては負の遺産を残してしまったと言わざるを得ません。

 

遅ればせながらですが、菅政権はDXに本格的に取り組むということなのでこれまでの遅れを取り戻し、先行している国々の先を行くような行政システムのみならず社会全体のインフラとなるようなシステムを構築していただきたいと願います。


 
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