これまで台風でも発電可能な風力発電について、アイデアよもやま話 No.3334期待される台風でも発電可能な風力発電!、およびアイデアよもやま話 No.3369 ”町工場”の逆襲!でご紹介してきました。
そうした中、10月23日(火)放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)でその近況について取り上げていたのでご紹介します。
太陽光と並ぶ再生可能エネルギーの風力、しかし日本ではほとんど普及していません。
実は強い風に弱いという問題があるのです。
強風にあおられると風車が暴走してしまうのです。
こうなると手が付けられません。
台風が多い日本は風力発電には不向きとされてきました。
それを打ち破る画期的な技術を使った風力発電の開発が進んでいます。
この装置、台風の力で発電しようというものです。
風力発電というと、一般的に風車のようなかたちをしていますが、世界初の画期的な風力発電に挑むベンチャー企業、番組では3年前からこの企業に密着してきました。
今年7月、沖縄地方に大型台風が接近していました。
そうした中、7月10日、南城市で台風の接近を待っていたのは株式会社チャレナジー社長の清水 敦史さん(39歳)です。
垂直軸型マグナス風力発電機という、実用化されれば世界初となる夢の製品です。
清水さんは次のようにおっしゃっています。
「プロペラがないんですよ。」
「プロペラのない風力発電機なので、台風の中でも発電が出来ます。」
「(台風の中では)プロペラ風車は止めちゃうんですよね。」
「(なのでプロペラ風車では台風が来ると)ものすごい風のエネルギーが捨てられているわけですね。」
「何にも使われてない。」
「僕らの風車は風が強い時が稼ぎ時になる。」
番組では3年前から清水さんに密着して開発の様子を追ってきました。
この円筒が止まっていると風を当てても何も動きません。
しかし円筒を回転させると全体が回り出すのです。
仕組みは、円筒部分をまずはモーターで回転させます。
そこへ風を当てると自然界の原理、マグナス効果により回り出します。
回っている円筒に風が当たると、その回転方向に沿って流れる風が速くなります。
一方、反対側は円筒の回転に邪魔されて風の流れが遅くなります。
すると装置全体を回す力が生まれ、発電出来るのです。
この装置の強みはプロペラ風車のように暴走しないことです。
強風の中では、円筒の回転数を抑えます。
そして弱い風では逆に円筒の回転数を上げるのです。
こうすることで、どんな風でも発電出来るのです。
2013年にマグナス効果を利用した垂直軸型マグナス風力発電機で特許を取得した清水さんはそれまで勤務していたキーエンスを退職し、自ら株式会社チャレナジーを立ち上げたのです。
台風も多く、日本で普及が進まない風力発電、清水さんはそこに風穴を開けたいといいます。
「もしプロペラ風車の置けない場所に置ける風車を作れたら市場を自分たちで創り出せるわけですね。」
「原発だってなくせるかもしれない。」
「可能性はあるわけです。」
「その可能性に賭けたいんですよね。」
5月、滋賀県東近江市にある栗本鉄工所の工場に清水さんの姿がありました。
そこにあったのは3本の巨大な円筒です。
量産タイプに近い試作機を作り、この夏に本物の台風で実証実験をすることにしたのです。
設置まであと2ヵ月、全国の工場で部品製造が急ピッチで進められていました。
およそ10社の町工場連合で2000もの部品を作り上げます。
町工場の高い技術力が“台風発電”を支えます。
7月上旬、沖縄県石垣島、ここが実証実験の舞台です。
設置する試作機は出力10kwで5世帯ほどの電力を賄えます。
設置には1ヵ月かかりました。
あとは台風を待つばかりです。
それから2ヵ月後の9月28日、ようやくその時がやってきました。
静岡に大停電をもたらすことになる台風24号、台風シーズンも終わりかけ、失敗は出来ません。
午後5時、台風が最接近する前に実験用の発電装置が止まってしまうというのです。
更に発電装置から鈍い音が聞こえてきました。
円筒のカバーが強風で剥がれ、本体にぶつかっていたのです。
この日の夜、石垣島では最大32mの風速を観測、しかしほとんど実験になりませんでした。
翌朝、発電装置をチェックすると他にもいくつか破損がありました。
その直後、南の海上に台風25号が発生、24号と同じ経路をたどるという警報でした。
今度こそ最後のチャンスです。
壊れた円筒は直しましたが、装置が止まってしまう原因はまだ分かっていなかったのです。
台風が目前にまで迫ったその時、原因は意外なものでした。
発電機の電圧を計るモニターが、正常であればきれいなかたちになりますが、ある瞬間でギザギザ状態になっており、ノイズが発生していることが分かったのです。
これが安全装置を作動させ、風車を止めていたのです。
こうして解決策が見え、暴風の中、急いで不具合を修正し、何とか台風のピークを迎える前に間に合いました。
そして午後9時、実験開始、台風の中でも暴走することなく風車は回り続けていました。
出力を抑えた実験でしたが、3000wあまり発電しました。
無事に実験を終えた清水さん、小さな成果ですが、大きな一歩です。
そして意外な場所から助けを求める声が上がりました。
フィリピンの首都マニラに降り立った清水さん、台風銀座と呼ばれるフィリピン、清水さんの挑戦に国営のエネルギー会社が興味を持ちました。
この日は契約への第一歩、今後の試験結果がよければ購入を検討してくれるといいます。
国営のエネルギー会社の責任者は次のようにおっしゃっています。
「正式な契約を交わして、少しでも早く計画を進めましょう。」
フィリピン側が特に期待しているのは、台風で頻繁に停電する離島での発電です。
タブタン島では、来年量産型の発電機を設置して実験を行うことが決まりました。
台風からエネルギーを生み出す逆転の発想、清水さんの挑戦は続きます。
番組の最後に、清水さんは次のようにおっしゃっています。
「今は僕らもね、10kwで喜んでいるけど、それって電力会社から見たらすごく塵のような電力なわけですよ。」
「僕らの風力発電で原発を無くそうなんて言ったら笑われますよね。」
「子どもとか孫の時代をどうしたいかなんですね。」
「だからやる価値がある。」
この夏、日本各地で大規模な停電が起こり、電力の大切さを思い知ることになりました。
原発は少なくして再生可能エネルギーを主な電源へと拡大し、それが国の方針ということですが、取り組みには課題が山積みです。
私たちの暮らしに欠かせない電力、身近な問題としてその動きには目を向ける必要がありそうです。
なお、太陽光、風力、水力の他にも様々なかたちで電力を生み出そうと研究開発が進められています。
例えば発電床は足踏みだけで発電します。
このパネルの中には振動や圧力で発電する特殊な素材が入っています。
それを踏むと電気が発生するという仕組みです。
例えばこれを階段などに設置しておけば、災害などで停電になっても歩くことで発電して明かりをつけることが出来ます。
またプロペラを付けて海の中に入れ、海流を利用して発電する水中浮遊式海流発電です。
日本近海には黒潮をはじめとする海流が一年中流れています。
この装置は海の深いところにも設置出来ます。
海面の状態に左右されずに発電出来る方法として注目されています。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
以前お伝えしたように、太陽光や風力など多くの再生可能エネルギーは天候などの諸条件により発電量が不安定です。
ですから、再生可能エネルギーを主電源にするためには、一つの再生可能エネルギーに依存するのではなく、より多くの再生可能エネルギーを適材適所で組み合わせていくという方式が必要なのです。
そうした中、今回ご紹介した“台風発電”は台風でもこれまでのように風車が壊れるということもなく、更には発電出来るというメリットがあります。
現状では地球温暖化は更に進み、それにつれて台風も大型化されると見込まれています。
そうした中、“台風発電”は風力発電の救世主的な存在になり得ると大いに期待出来ます。
ですから出来るだけ早く実用化して、国内のみならず世界展開し、風力を通した再生可能エネルギー発電の普及に貢献していただきたいと思います。