これまで火星移住計画についてはアイデアよもやま話 No.3471 火星有人探査が2024年に実現!?などで何度かお伝えしてきましたが、この計画を進めているスペースXによる壮大な計画について2回にわたってご紹介します。
1回目は2月7日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通しての火星移住計画の最新情報についてです。
火星と地球との距離は、火星が地球に最も近づいた時でもおよそ5500万km、これは時速1000kmのジェット旅客機で行けたとしても6年以上かかるということです。
この遠く離れた火星に移住しようという壮大な計画が進んでいます。
その実現に向けて、放送日の2月7日に一歩前進しました。
日本時間午前6時前、アメリカのケネディ宇宙センターで打ち上げられたファルコンヘビー、全長は70mで現役のロケットでは世界最大の輸送能力を持ちます。
打ち上げたのは宇宙ベンチャーのスペースX、創業したのはイーロン・マスクCEO、アメリカの電気自動車(EV)メーカー、テスラの創業者でもある起業家です。
ファルコンヘビーは機体の一部を再利用して打ち上げのコストを抑える計画です。
打ち上げから数分後、エンジン部分が切り離されて地球に戻ってきました。
今回打ち上げられたファルコンヘビーに搭載されたのがマスクCEOの所有するテスラの真っ赤なスポーツカー、ロードスターです。
クルマの先端に付けられたカメラで映像が撮影されます。
乗っているのは人間ではなく、開発中の宇宙服を着た人形「スターマン」です。
宇宙空間では何が起こるか分かりません。
運転席には「DON`T PANIC!」(落ち着いて)という表示があります。
ロケットが向かうのは火星の軌道です。
今回の打ち上げは火星移住計画の第一歩です。
火星に迫るためのテストとも言えます。
マスクCEOは次のようにおっしゃっています。
「あなたが行きたいところに自由に行けるようになる。」
2016年に開催された国際宇宙会議で火星へのプロジェクトを高らかに宣言しました。
スペースXは火星への移住実現に向けて100人を乗せられる次世代ロケットの開発も進めています。
スペースXは2024年には火星への有人飛行を実現し、将来的には100万人規模で火星に送ろうと考えているといいます。
さて、火星の過酷さについては映画「オデッセイ」でも取り上げられていますが、実際の火星の過酷さは映画以上だと専門家は指摘しています。
千葉工業大学惑星探査研究センターの大野 宗祐上席研究員は次のようにおっしゃっています。
「火星の表面の写真ですが、一番重要なのは大気圧が非常に低いこと、空気が薄いということですね。」
「(大気圧は)地球の100分の1以下という薄い空気しかありません。」
「(大気圧が低い火星では地球上の生物は深刻な影響を受けるというが、)鶏のようなものを火星の環境に置いてしまうと、火星の気圧が非常に低いですので鶏の細胞などが壊れてしまって、場合によっては破裂してしまって非常に短時間で死んでしまうと想像されます。」
また、気温が−120℃ほどまで低下することもあるといいます。
大気のほとんどをCO2が占めているためドライアイスの雪が舞うこともあるといいます。
極めて過酷な環境なのに、なぜ火星が移住先として選ばれたのでしょうか。
大野さんは次のようにおっしゃっています。
「地球に近いということですね。」
「(地球からの)距離も近いということがまず一つですね。」
「もう一つは環境は非常に過酷ではあるんですが、それでも他の惑星と比べると地球にまだ近くて、人間が住める可能性が一番高いかなと・・・」
また今回スペースXがファルコンヘビーを打ち上げたのはある狙いがあるとみる専門家もおります。
野村総合研究所の上級コンサルタント、佐藤 将史さんは次のようにおっしゃっています。
「自分たちがリードしていく、それが多分ビジネスとしてだけではなくて、社会的、政治的なものも含めて・・・」
実はスペースX以外にも火星移住を目指す企業があります。
「マスクCEOより先に火星に降り立つ」と公言したのがアメリカの大手航空機製造会社、ボーイングのトップです。
スペースXのライバルのボーイングはNASAと共同でロケットを開発中で、2019年には火星に向けた有人飛行試験を目指すとしています。
対するスペースXのマスクCEOも「やってみろ、勝負だ」とツイッターで反応しています。
盛り上がる宇宙開発にトランプ大統領も次のようにおっしゃっています。
「月面に星条旗を立てて足跡を残すだけではなく、火星に向けての基礎を築く。」
更に、アラブ首長国連邦も国家プロジェクトとして火星に都市を築く計画を発表しており、国を挙げての競争となっています。
遠い未来の話にも思える火星移住計画が盛り上がっている背景にはITなど技術の飛躍的な進歩も大きく係わっているといい、野村総合研究所の佐藤さんは次のようにおっしゃっています。
「火星にいろいろな人が住んだり、工場が出来たりとかやっていくと、その間をつなぐ通信が絶対に必要になってくるんで、そのインフラをどう整えるかっていうのは結構重要になってくるのかなと。」
「ITの技術の進展、ITに限らずなんですけども技術革新がかなり高いレベルで進んで民間企業でもかなりハイレベルな技術を使えるようになったというのが大きいです。」
火星移住計画は実施の実現までどのくらいの時間がかかるのか分からないのでビジネスとして短期的に利益を回収することは出来ません。
それでも今取り組むのは自分たちが先行者メリットを取っていこうという発想だということです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
一方、2月7日(水)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)では、内閣府によると、日本でもスペースXがロケットを再び使う実験を始めたことなどを受けて、2014年の宇宙政策委員会で、次期基幹ロケット「H3」の次にくる2030年以降のロケットを検討する中で、再使用型は選択肢の一つとして研究するべきという見解がまとまったと報じています。
こうして見てくると、火星移住計画はSFの世界ではなく、遅くとも2020年代には実現される見込みが出てきました。
さて、アイデアよもやま話 No.3565 マイナス金利政策に見る資本主義からの脱却の必要性!でもお伝えしたように、資本主義は絶えず新たな投資先を求めてフロンティアを探し続けるという宿命を持っています。
そして、新たな投資先が見つからず、カネ余り状態が続くとマネーゲームなど実体経済とは無関係な世界にマネーが流れていくのです。
短期間で価値の変動幅のとても大きい今話題の仮想通貨もこうした流れの中の一つという側面があるように思います。
こうした中、火星移住計画は巨大隕石などの衝突により万一人類が地球上で生存出来なくなった場合のリスク対応策としての価値があります。
更に、番組でも指摘されているように、こうした計画は新たなテクノロジーの開発を伴い、それが新たなビジネスに結び付く可能性を秘めています。
更に、移住先の火星での食糧、水、エネルギーなどの調達をどうするかという課題の解決策は、地球上での“持続可能な社会”の実現という課題解決策としても適用出来ます。
こうした観点からすると、火星移住計画のような宇宙関連の技術開発は人類の好奇心も満たす、人類共通の課題としてとても理に適っていると思うのです。