2016年12月05日
アイデアよもやま話 No.3565 マイナス金利政策に見る資本主義からの脱却の必要性!

ご存知のように、日本銀行(日銀)による景気刺激策としてマイナス金利政策が実施されています。

その効果として市中金利が低くなり、銀行からの借り入れがし易くなっていますが、それほどの効果はあまり出ていないように見受けられます。

そうした中で、特に株式など金融市場に借り入れ資金が流れ込んでいるといいます。

そこで、今回は以前読んだ「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野 和夫 著)を参考に、マイナス金利政策に見る資本主義からの脱却の必要性についてお伝えします。

 

そもそも銀行による貸し出し金利も原則として一般商品と同様に需要と供給で決定されます。

ですから、景気が上向いていくにつれて企業や個人からの借り入れ需要が高くなれば金利も高くなり、景気が悪化すればこうした需要が低くなり金利も低くなります。

日銀によるマイナス金利政策は、こうした原則を更に加速させて、銀行が企業や個人への貸し出しを積極的に進めることにより、企業や個人が銀行からの借り入れを一層し易い状況を作り出し、景気を刺激させるのが狙いなのです。

 

ところが先進国のように一般消費者の暮らしに必要な商品が一通り行きわたってしまうと、それまでの経済成長は期待出来なくなってしまいます。

その結果、借り入れ需要は減少し、それに連動して金利も低下するのです。

逆に言えば、金利の低水準が何年も続くことは経済が低成長時代に入ったことを示しているのです。

今の日本はまさにそうした状況にあるわけです。

 

ところが、一方どんな資金であれ、それを元手に利益を生まなくてはどんなビジネスも生まれず、従って資本主義は成り立ちません。

ですから、資金は少しでも短期間で投資効率の高い分野に向けて投資されます。

そこで、多くの資金が相対的に短期での投資効率の高い株式や為替などの金融市場に投入されることになります。

このような状況では実体経済は停滞してしまいます。

 

ではこうした状況の打開策は何かといえば、アベノミクスの3本柱の1つでもある成長戦略なのです。

残念ながらこの一番肝心な成長戦略がうまく機能していないために、いくら日銀がマイナス金利のような究極の政策ともいえる政策を打ち出しても金利は上昇しないわけです。

今、政府は様々なかたちで国として出来る限りの経済政策を打ち出していますが、経済学者。シュンペーターが唱えていたように、これまでの常識に囚われないベンチャー企業を中心に多くの企業が大きな需要を喚起するような画期的な商品やサービスを誕生させることこそが経済を活性化させ、雇用を創出し、金利上昇ももたらし、人々の暮らしもより豊かにしてくれると思うのです。

 

しかし、残念ながら特に先進国ではモノが溢れている様な飽和状態になっていますから、大きな需要を生み出すような画期的な商品やサービスが生まれる余地は非常に少なくなっています。

また、こうした画期的な商品やサービスが生まれたとしても、これらの多くはこれまで大なり小なり人手を介していた業務をロボットやAI(人工知能)、あるいはIoT(モノのインターネット)などのテクノロジーで代替しますから、労働市場の規模拡大はこれまでのようには期待出来ません。

更に、メーカーによる少しでも低賃金の途上国への生産のシフトの動きが止まりません。

ですから、以前お伝えしたように先進国の中間層の仕事が減ることにより低所得層への移行がどんどん進み、国全体の購買力が落ち込んでいるのです。

 

一方で、世界的に自動車などのシェアリングサービスが普及しつつあります。

例えば、カーシェアリングサービスが進めば、それだけ生産台数が減り、世界的な経済的影響は無視出来ません。

ですから、あらゆる分野でのシェアリングサービスが普及すればするほど資本主義は絶ちゆかなくなるはずです。

反面、シェアリングサービスが普及すればするほど地球上の様々な有限の資源を消費しなくて済むようになりますから、その分省資源、省エネになります。

従って、地球環境問題や地球温暖化問題、あるいは化石燃料の枯渇問題の解決に貢献出来ます。

 

ということで、資本主義に代わる新たな価値観を創造し、新たな価値観を持った社会を創ることが求められているのです。

これまで何度となく繰り返しお伝えしてきたように、そのアイデアは既存の要素の組み合わせであり、従ってアイデアは存在し、見つけるものなのですから、過去の価値観や常識に囚われない優秀な専門家などによって資本主義に代わる新たな価値観を少しでも早く見つけ出して欲しいと思います。


 
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