2017年07月30日
20170730 No.3768 ちょっと一休み その605 『九州北部から始まった日本各地の記録的豪雨 その2 豪雨災害に直面した時の行動のあり方!』

7月5日に発生した九州北部の記録的豪雨以来、日本各地で連日のように豪雨の被害が報道されています。

そこで、今回は7月9日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)からこうした状況、およびその背景について2回にわたってご紹介します。

2回目は、豪雨災害に直面した時の行動のあり方についてです。

                               

前回、No.3762 ちょっと一休み その604 『九州北部から始まった日本各地の記録的豪雨 その1 豪雨の原因はやはり地球温暖化!』でご紹介したように予測のつかない豪雨は毎年のように発生して大変な被害を及ぼしています。

いつどこで起きるか分からない豪雨災害に直面した時に、いったいどのように行動すればいいのでしょうか。

7月5日に発生した九州北部の記録的豪雨において、避難した人々の行動からその手がかりが見えてきました。

大規模な土砂崩れが発生した福岡県朝倉市の杷木地区で暮らすある夫婦は、雨が小康状態になった7月6日午前、近所の人たちと声をかけあって中学校に避難しました。

こうした住民たちが避難の参考にしたのが自主防災マップでした。

住民たちが2年前に協力して作ったものです。

杷木地区の川の流域で氾濫や土砂災害が起きる可能性の高い地域を色付けして示しています。

朝倉市が作成した「洪水ハザードマップ」は、大きな河川が氾濫した時の浸水域を示していますが、杷木地区を流れる小さな川については書かれていません。

豪雨に襲われた時、杷木地区はどこまで被害を受けるのか正確に知りたいと、住民たちは市と協力して独自に防災マップを作ったのです。

杷木地区では、このマップをもとに勉強会を何度も開き、災害に備えてきました。

 

杷木地区の住民たちが避難した数時間後、土砂が流れ込みました。

今も通行が出来ない状態が続いています。

 

一方、住民それぞれが異変に気付き、避難につなげた地域もあります。

大分県中津市では河川が氾濫寸前まで増水し、4000を超す世帯に避難指示が出ました。

旅館を営む女将、高橋 松子さん(80歳)は、避難指示が出る前に高台の公民館に避難しました。

そのきっかけになったのは、雨どいの音でした。

雨が雨どいから溢れ出るほど降ったので、これはただ事ではないと思ったのです。

この時、高橋さんが思い出したのが5年前に大きな被害をもたらした九州北部豪雨でした。

この地区でも河川が氾濫し、150軒以上が水没しました。

その時の恐怖がまだ忘れられないのです。

 

同じように異変に気付いたのは、地区長の都甲 哲男さん(73歳)です。

この地区では九州北部豪雨の後、高さ4mの堤防が作られました。

しかし、都甲さんは堤防だけでは安心出来ないと川の見回りを続けていました。

そして、今回の豪雨では水がいつもと違い茶色で濁っていることから、都甲さんは上流で激しい雨が降っている可能性が高いと考えました。

更に、川の中央にある岩が水に隠れるまで増水したことから、危機が迫っていると感じました。

そこで、都甲さんは地区の高齢者に非難を呼びかけました。

こうして地区の高齢者全員が呼びかけから1時間半で避難を完了、5年前の記憶が速やかな行動に結びついたのです。

 

こうした住民の対応について、東京大学大学院の片田特任教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「今回は降り始めからもの凄い雨でしたから、これが中々降りやまないという状況の中で避難のタイミングを取るのが非常に難しかったんだろうと思うんですね。」

「そんな中でも、特にいろんな情報が出るようになっておりますね。」

「例えば気象情報でも特別警報、これも最近のことですね。」

「それから河川の危険情報も出るようになっていますね。」

「それか土砂災害警戒情報だとか、様々な情報が出るようにはなっているんですけども、これをどう生かしていくのかっていうことの難しさがあるように思うんですね。」

「今の2つのケースの場合、いずれも5年前の九州北部豪雨の時の教訓を生かして、例えば地域防災マップを作って、自分たちの地域の危険を自分たちで把握してみんなで逃げようという行動を取っておられること、それからみんなで声を掛け合うということと地域の状況をよく見ていて、もうこれは逃げなきゃということでみんなで声を掛け合っているという特徴があるように思うんですね。」

「私、これまで各地の災害の事例を見てきまして感じることは、様々な情報があっても今まさに自分が当事者なんだって中々思えない。」

「まだ大丈夫だろうとか、もう少し雨がやんでからとか、いろんなことを思いながら中々避難のタイミングを個人でとることに難しさがあるように思うんですね。」

「ただ、今の2つのうまくいったケースは、地域のことをよくみんなで観察し、みんなで防災マップにまとめ、そしてみんなで約束事を決めて、声を掛け合ってみんなで逃げるという、言わば前回の災害経験を地域のみんなで助かるための仕組みに役立てているということ、そしてそれが機能してみんなで声を掛け合ってみんなで逃げるというかたちまで前回の教訓を持ち込んでいることに大きな特徴があるんだろうと思います。」

「これからも様々な情報の中で、我々がその情報をどう生かして自分の安全につなげるかということも重要な課題ではあるんですけども、中々個人ベースでの難しさがあるように思うんですね。」

「どうか、今の事例を見れば分かるように、地域のみんなで前回の教訓だとか各地の教訓を生かして、地域での仕組みを考えていくことが重要じゃないかなと思いますね。」

 

「(避難されている方々の抱えている大きな不安について、)自宅はどうなっているか、地域はどうなっているかと不安の中におられると思います。」

「大変心配なことは、今気をはっておられるという状況ですので体がもっていると思うんですけど、ご高齢の方も多い、そしてこの暑さの中、徐々に疲れが溜まっていくと思うんですね。」

「どうか今の避難生活を少しでも体力を温存し、ご心配でしょうけども何とか健康を保持出来るように努めていただきたいなと思います。」

「それから、今回あまりにも被害が大きい、そして地域が大変な被害に遭っております。」

「いつか復旧出来る、復興出来ることを信じて頑張っていただきたいと思うんですけども、ただ現実も少し直視しなきゃいけない部分もあるように思うんですね。」

「どうやってもこの事態が落ち着いたとしてもすぐに家に帰ることが出来ないと思います。」

「復旧には少し時間がかかると思うんですね。」

「そうした時に、少し避難生活が長期化することを見据えた対策が今求められているんじゃないかなと思います。」

「熊本地震の時もそうでした。」

「地域のことが心配ですから中々離れたくないし、その地を離れてどこかに逃げるということまで被災者の方々は考えが及ばないと思うんですね。」

「ただしばらく戻れないという現実もあり、そして体力がどんどん弱っていく、その中でどうにもならなくなってこの地を離れるのであれば、現段階で少し体を休めるような所に一時的でも離れていただく。」

「そのためには、周辺の広域的な支援の中でしばらく体を休めていただけるようなところに一度退避していただくというようなことが必要じゃないかなと思いますし、今後の復旧・復興に向けてある程度時間がかかるということを見据えた避難計画の策定、対策が必要になっているんじゃないかと思います。」

「熊本地震でもそうですけども、ここ最近の大きな災害を見る時にほぼ避難生活は長期化するということ、そうなりますと借り上げ住宅ですとか、そういった広域的な対策の中で対処していただきたいなと思います。」

 

「(そして、二次災害を出さないということについて、)今まだ非常に危険な状態にあります。」

「そして、避難生活を送る場合に、今回は山間の地域ですので、洪水というよりも土砂災害というかたちなんだろうと思います。」

「避難として身を寄せておられる場所が土砂災害に対して大丈夫なのか、特に土石流というようなものに対して大丈夫なのかということをしっかり見据えた上で安全な場所での避難生活を送っていただきたいなと思います。」

 

「(今回の豪雨のような気象の動きは各地で起こり得るというご指摘があったが、私たちが出来る備えにはどのようなものがあるかという問いに対して、)地球温暖化と言われております。」

「地上にいても暑いと感じることが多いと思うんですけども、海洋気象の方は一足先に温暖化が進んでいて、かなり海水温が高い状態が定常的になってきているということが言われています。」

「今回も膨大な水蒸気が舞い上がり、そしてそれがひとたびつながるともの凄い雨量になってくる。」

「そうしますと、今回のような山間の地域ですと、土砂災害を併発するような、ほとんど洪水なのか土砂災害なのか分からないような状態になってきますね。」

「これからもこういった事態は起こるんだということを認識し、我々は備えていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。」

 

なお、豪雨から5日目の7月9日、福岡県と大分県では合わせて1700人以上が避難生活を余儀なくされています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通して理解した、豪雨災害に直面した時の行動のあり方について以下にまとめてみました。

・過去の災害時対応から得られた教訓の継承

・現実に即した自主防災マップの作成

・避難生活が長期化すること、あるいは二次災害を見据えた避難計画を検討しておくこと

・正確な災害状況の把握

・近所の人たちとの相互の声掛け

 

このようにまとめてきて、「てんでんこ」という言葉を思い出しました。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.402 『日本各地の記録的な豪雨にみる地球温暖化のリスク管理の必要性』

いつどのような状態で災害に遭うか誰も分かりません。

最後に頼るべきは自分自身の判断なのです。

ですから、日頃から自分の生活空間の中で、どのような災害が起こる可能性があるのか、そして起こる可能性のある災害に応じた避難マップをしっかりと頭に入れておくことが自分の命を守るカギとなるのです。

とりあえず、目の前の災害から避難することが何より求められるのです。


 
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