ご存知のように、先週始めからほぼ1週間にわたって台風と記録史上かつてないほどの豪雨により、日本列島は大変な被害がもたらされました。
特に、茨城県や宮城県では河川の堤防が決壊し、住宅地などに大量の水が流れ込みました。
多くの家屋が水の中に取り残された状況をテレビで見ていて、東日本大震災の津波の被害を思い出しました。
それほど今回の被害はひどく感じられました。
その後すぐに思ったことがあります。
それは、地球温暖化のリスク管理の必要性です。
これまで地球温暖化についていろいろと報じられてきましたが、その影響はしばらく先のことで、今一つ切羽詰ったような危機感はありませんでした。
ところが、今回の集中豪雨の被害で、あらためてそのリスクが現実のものとなりつつあることがはっきりしたのです。
考えてみれば、地球温暖化が進めば、海水温も上昇し、大量の海水が蒸発して雲となり、豪雨や巨大台風の発生をもたらします。
また、海水温の上昇は海面上昇につながります。
一方では、陸上でも海抜の高い地域の氷河が溶け出し、これも海面上昇につながります。
こうした状況が相まって、豪雨や津波のような高潮により大きな被害がもたらされるのです。
更に、竜巻の発生件数も増加傾向にあるようです。
しかも、こうした大災害は地球温暖化の進行とともに規模が大型化し、頻度も増えるので被害も加速化されていくのです。
こうしたことから、日本国内だけに限ってみても、戦争勃発や原発事故発生のリスクよりも豪雨や巨大台風、あるいは竜巻の発生するリスクの方がはるかに高くなっていくように思います。
そして、今回の大災害でも堤防の決壊という“想定外”の状況が被害を大きくしたようです。
そこで、東日本大震災の時に報じられていた“てんでんこ”という言葉を思い出しました。
“てんでんこ”とは東北地方の方言で各自を意味し、海岸で大きな揺れを感じた時は、津波が来るから肉親にもかまわず、各自てんでんばらばらに一刻も早く高台に逃げて、自分の命を守れという意味です。
なお、この古くから東北地方に伝わる教訓に基づき、片田敏孝・群馬大教授(災害社会工学)の指導で津波からの避難訓練を8年間重ねてきた岩手県釜石市内の小中学校では、東日本大震災の大津波の時に全児童・生徒計約3千人が即座に避難しました。
そして、生存率99・8%という素晴らしい成果を挙げて「釜石の奇跡」と呼ばれています。
地球温暖化の進行とともに、今後とも“想定外”の大災害が発生することは避けられないのです。
ですから短期的な災害のリスク対応策としては、日頃から災害時の避難場所、そして避難経路を確認しておき、いざ豪雨などの発生時には“てんでんこ”の教訓を生かし、各々で避難することが最も有効な対応策だと思います。
では、長期的なリスク対応策ですが、それは豪雨などの発生の根本原因である地球温暖化の進行を阻止することしかありません。
そのためには、世界各国が協力しあって、CO2排出量の削減をするしかありません。
具体的な取り組みとして、地球温暖化問題に取り組む世界的な機関によるCOP(国連気候変動枠組み条約締結国会議)が毎年開催されていますが、先進国と途上国との利害関係などからなかなか思うような成果が出されていないようです。
ところが、こうした状況にはお構いなく地球温暖化はどんどん進んでいきます。
ですから、もっともっと真剣に世界各国は自国の利益に囚われずにCO2排出量の削減に取り組むことが求められるのです。
この問題は一部の国だけが一生懸命に取り組んでも解決出来ないのです。