2024年04月12日
アイデアよもやま話 No.5867 アメリカの経済と外交の司令塔を長年務めてきた重鎮の唱える中国への向き合い方!
昨年12月18日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアメリカの経済と外交の司令塔を長年務めてきた重鎮の唱える中国への向き合い方について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

今日まで開かれていた日本とASEAN、東南アジア諸国連合の特別首脳会議では安全保障協力を強化していくことでも一致しましたが、その念頭にあるのは、影響力を強める中国の存在です。
中国とどう向き合っていくのか、アメリカの経済と外交の司令塔を長年務めてきた重鎮に訊きました。

2000年代、アメリカのブッシュ政権で通商代表や国務副長官を歴任、更には世界銀行の総裁も務めてこられ、今はブランズウィック・グループ上級顧問のロバート・ゼーリックさんは、当時、中国を大国として扱う代わりに責任あるステークホルダー=利害共有者と呼び、国際社会で責任を果たすよう、求めていました。
ゼーリックさんは次のようにおっしゃっています。
「(東アジアで中国の軍事的脅威感が増す中、何か起きた時にアメリカはどのくらい関与するのか注目されているが、)アメリカは日米韓の枠組みにコミットしている。」
「地域と世界の安定にとって重要だからだ。」
「アメリカは同盟国との抑止力の確立に注目している。」
「台湾を巡り、困難な状況を生み出さないためだ。」
「台湾総統選の結果が非常に重要になるだろう。」
「中国政府は非常に神経質になっている。」
「総統選の結果、台湾の発言や行動がどう変わるかに神経をとがらせている状態だ。」

一方で、その中国は今、経済が大きな不安要素になっていると強調します。
「中国はインフラなどへの投資と輸出に依存して成長してきたが、今は深刻な問題を抱えている。」
「経済的に豊かになる前に高齢化が進んでいて、過去6年で出生数と婚姻数は大幅に減少した。」
「この変化は徐々にではなく、急速にやってくる。」
「(中国が経済の構造的な問題に直面するこの機会が、アメリカ、および同盟国が体制を立て直す機会に成り得るという理解でいいのかという問いに対して、)そうすることが西側諸国にとっていいだろう。」

こうした中、ビジネスの面では中国とどう向き合っていけばいいのか、ゼーリックさんは、日本企業の強みが生かせると指摘します。
「多くの企業が中国市場を手放しはしないが、中国市場への更なる投資は控えている。」
「他の市場に目を向けているからだ。」
「代替としてベトナムやインドなどにチャンスがある。」
「そして、日本企業はこれらの国で有利な立場に立つことが出来る。」
「私の30年以上の仕事の経験からも日本企業はこれらの地域で尊敬されている。」

解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「(ゼーリックさんは長年、経済と外交を一体的に見てきた方ですが、)今回のインタビューでも、共和党と民主党の垣根を超えた。言わば国際派の面目躍如を感じましたよね。」
「中国については、追い詰め過ぎるのは禁物だと言ってるんですけども、一方でアメリカは同盟国と足並みを揃えて対処すべきだと言ってますよね。」
「この辺がスタンス、基本的なところだと思います。」
「(先ほど、日本、ASEANの特別首脳会議の話もこの番組で取り上げましたが(参照:アイデアよもやま話 No.5866 アジアの“脱炭素”でカギを握る日本企業!?)、日本がASEANとの関係をここまで深めている理由も日米側の仲間を増やそうという取り組みの一環ではという問いに対して、)はい。」
「典型的な例を一つ取り上げたいんですけど、やっぱり日本とフィリピンの関係なんですよね。」
「今や同盟とほぼ同じくらいに関係が深まってるんです。」
「ここは注目したいですよね。」
「もう一つ、日本の対応は経済合理性があって、しかも法の支配を重んじてますよね。」
「その辺のところをベースにして、関係を構築していくことが重要だと思うんです。」

更に我々、来年のアメリカ大統領選挙についてゼーリックさんに訊きましたが、トランプ前大統領が再び選ばれる可能性について、こんな答えが返ってきました。
「アメリカが後退したり、間違いを犯したりしても、日本は効果的に行動する機会がある。」
これについて、滝田さんは次のようにおっしゃっています。
「日本の役割は非常に重要だということなんですが、例えばTPPありますよね。」
「環太平洋経済連携協定なんですけども、トランプさんが抜けた後でも、日本が残った国をまとめてTPPを実現させたわけですよね。」
「ま、アメリカの一種、現実派っていうか、良識派が日本に期待するのはその辺のとこだと思いますね。」
「(日本の世界における役割は大きいという指摘に対して、)そんな感じですね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、いつ頃までアメリカは中国をステークホルダーとして扱ってきたかについては添付を参照下さい。

番組を通して、アメリカの経済と外交の司令塔を長年務めてきた重鎮、ロバート・ゼーリックさんへのインタビュー結果について以下にまとめてみました。
・ブッシュ政権時代に、中国を大国として扱う代わりに責任あるステークホルダー=利害共有者と呼び、国際社会で責任を果たすよう、求めていた
・東アジアで中国の軍事的脅威感が増す中、何か起きた時に備えてアメリカは日米韓の枠組みにコミットしている
 -地域と世界の安定にとって重要だからである
 -台湾を巡り、困難な状況を生み出さないためにアメリカは同盟国との抑止力の確立に注目している
・一方で、その中国は今、経済が大きな不安要素になっている
 -中国はインフラなどへの投資と輸出に依存して成長してきたが、今は深刻な問題を抱えている
 -経済的に豊かになる前に高齢化が進んでいて、過去6年で出生数と婚姻数は大幅に減少したが、この変化は急速にやってくる
・中国が経済の構造的な問題に直面する今は、アメリカ、および同盟国が体制を立て直す機会に成り得る
・こうした中、ビジネスの面では中国を巡り、日本企業の強みが生かせる
 -多くの企業が中国市場を手放しはしないが、中国市場への更なる投資は控えており、他の市場に目を向けているからである
・代替としてベトナムやインドなどにチャンスがあるが、日本企業はこれらの国で有利な立場に立つことが出来る
・中国については、追い詰め過ぎるのは禁物である
・トランプ前大統領が再び選ばれる可能性について、アメリカが後退したり、間違いを犯したりしても、日本は効果的に行動する機会がある
 -例えばTPPについて、トランプ大統領(当時)が抜けた後でも、日本が残った国をまとめてTPPを実現させた(滝田さんの指摘)


なお、解説キャスターの滝田さんは以下のように指摘しています。
・日本がASEANとの関係をここまで深めていることは日米側の仲間を増やそうという取り組みの一環である
・典型的な例として、日本とフィリピンの関係は今や同盟とほぼ同じくらいに関係が深まってる
・日本の対応は経済合理性があり、しかも法の支配を重んじている

要するに、当初、アメリカは中国をステークホルダーとして扱ってきたのですが、中国は経済成長を遂げて、アメリカに対抗する力が増すにつれて、覇権主義を振りかざして南シナ海や東シナ海で国際法を無視した動きをしているのです。
一方、今、中国は経済的に豊かになる前に高齢化が進んで、深刻な問題を抱えているのです。
そうした中、日本の中国に対する向き合い方として、ビジネスの面では中国において、あるいは代替としてベトナムやインドなどにチャンスがあり、日本企業の強みが生かせるというのです。
また、アメリカが後退したり、間違いを犯したりしても、日本は効果的に行動する機会があるというのです。
ですから、ゼーリックさんは、今や、日本はアメリカに“おんぶに抱っこ”状態ではなく、世界における役割を果たすだけの力が備わっていると指摘しているのです。
TPPの実現はその一例だというわけです。
また、前回お伝えしたように(参照:アイデアよもやま話 No.5866 アジアの“脱炭素”でカギを握る日本企業!?)、東南アジアの9ヵ国とオーストラリアで作る“脱炭素”を進める枠組み「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体 こちらを参照)」も日本が主導しているのです。

ということで、日本政府には、誰がアメリカの大統領になろうとも、あるいは習近平国家主席が覇権主義を唱えても、独自の観点で、日米の強い絆を柱に民主主義陣営の強化を果たし、中国やロシアの覇権主義に対する軍事的な抑止効果を維持し続けていただきたいと思います。


添付)

いつ頃までアメリカは中国をステークホルダーとして扱ってきたか?
ChatGPT
アメリカが中国をステークホルダーとして扱ってきた期間は、一概に特定の時期に絞り切ることは難しいです。アメリカと中国の関係は、歴史的にさまざまな局面を経てきました。
1960年代から1970年代にかけて、アメリカと中国の関係は緊張した状態にありました。冷戦時代において、アメリカはソビエト連邦との対立を中心に外交政策を展開しており、中国との関係はそれほど重視されていませんでした。
しかし、1970年代初頭にリチャード・ニクソン大統領と中国の周恩来首相、毛沢東主席との交流が開始され、1972年にはニクソン大統領が中国を訪問し、アメリカと中国の関係が正常化されました。この時期以降、アメリカと中国の経済や政治、文化などの関係が着実に深まっていきました。
特に、1979年の中国の経済改革開放以降、アメリカと中国の経済関係が急速に拡大しました。中国はアメリカの重要な貿易相手国となり、アメリカ企業も中国市場への進出を進めました。また、アメリカは中国を国際社会での重要なパートナーとして位置付け、多くの分野で協力関係を築いてきました。

ただし、近年ではアメリカと中国の関係が緊張しており、両国の間に経済や安全保障、人権などの懸案が存在しています。したがって、アメリカが中国をステークホルダーとして扱ってきた期間は、過去数十年にわたるものであり、その関係は変化し続けています。

 
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