2024年02月03日
プロジェクト管理と日常生活 No.855 『2024年の世界の10大リスクの日本への影響』
前回、1月10日(水)付けネット記事(こちらを参照)を通して、世界の今年の10大リスクについてお伝えしました。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.854 『2024年の世界の10大リスク』
今回は、今年の世界の10大リスクの日本への影響について内容の一部をご紹介します。(こちらを参照)

(概要)
・ユーラシア・グループのリポート「2024 年 10 大リスク」は、米国、中国、ロシアなど世界の主要プレーヤーや、インフレ、AI、重要鉱物など大きなトレンドから何が予想されるかについての洞察をもたらすものだ。
・挙げられたリスクには、日本により大きな影響を与えるものもある。特に No.1(米国の敵は米国)と No.10(分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク )は、米国と経済・安全保障上で緊密な関係にある日本にとって大きい。
・中国は日本にとって最大の貿易相手国であるため No.6(回復しない中国)も重要だ。
・インフレと台湾に関連するその他のリスクも、最も縁起が良いともいわれる辰年を迎えた日本に大きな影響を与える可能性がある。

(リスク No.1(米国の敵は米国)の影響)
⚫ リスク No.1は、日本にとってもトップリスクだ。
・1853年にマシュー・ペリー提督が東京湾に来航して以来、米国は日本人の心の中に大きな存在感を示してきた。
・そして戦後、米国ほど日本の経済、政治、安全保障、ポップカルチャーに影響力を持ってきた国はない。
・ということは、米国の政治システムに問題が生じれば日本にとってのリスクも大きいということだ。
⚫ 日本の政治・行政の中心である永田町や霞が関は、2024 年の米国大統領選挙をめぐっ
てすでにざわついている。
・話題は、ドナルド・トランプ前大統領の再登板があるのかということだ。
・安倍晋三元首相は、黄金のゴルフクラブを贈ったり、ノーベル平和賞候補に推薦したりと、トランプをおだてることにたけていた。しかし、安倍はもうこの世にいない。
・そこで東京では、岸田文雄首相(あるいは将来の指導者)が安倍と同じようにトランプをうまく扱えるのかということが切実な問題となっている。
・今日、日本には安倍に匹敵する「トランプへのささやき役」がいないというコンセンサスがある。
・そして、それは、東京を非常に、非常に不安にさせている。
⚫ 安倍でさえ、トランプが日本からの鉄鋼とアルミニウムの輸入に関税をかけるのを止められなかった。
・米国はまだ日本に対し貿易赤字が大きく(2022 年には 680 億ドル)、第2次政権では貿易赤字を嫌うトランプの怒りを買うだろう。
・日本は他の国々とともに、再び関税の対象となる可能性がある。また、日本は現在、2027 年までに防衛費をGDP の 2%に引き上げる方向で動いているが、トランプはこれに満足せず、さらに引き上げるよう圧力をかけるだろう。
・しかし、日本にはトランプに影響力をもつ道があるかもしれない。トランプは中国に対して非常に強硬な姿勢を取るだろうから、日本のような重要な同盟国が役立つと考える可能性がある。

(リスク No.10(分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク )の影響)
⚫ 日本は米国に対する最大の直接投資国である(2022 年で 7000 億ドル以上)。また、米国を拠点とする日本の製造企業は、50 万人以上の米国人労働者を雇用している。その結果、リスク No.10は、日本にとって非常に重いものとなる。
・全米で事業を展開する日本企業は、州ごと(カリフォルニア州やテキサス州など)に大きく異なる政策や規制に対処しなければならなくなる。政治的な二極化もあり、今年は難しい年になるだろう。
・1980 年代〜1990 年代の日米貿易戦争の後、日本企業は政府の支援を受けながら、関税の対象になるのを避けるために対米投資を急速に拡大した。当時は賢明な行動だったが、今マイナスとなっている。
・日本企業は米国の国内政治の対立に巻き込まれる恐れがある。

(リスク No.6(回復しない中国)の影響)
⚫ 米国に次いで、日本の経済と安全保障に影響力を持つのが中国だ。日本経済の活力は中国経済にかかっている。したがって、リスク No.6は日本にとって大きな意味を持つ。
・中国が世界経済成長の主要な牽引役でなくなることから副次的に、日本の輸出に対する中国の需要は 2024 年も弱いままとなる。
・中国経済からのデカップリングという選択肢はないが、日本企業や投資家は今年、より魅力的な新興国市場に投資を移す必要に迫られることが増えるだろう。
⚫ 日本にとって朗報のひとつは、米中危機が2024年に起こる可能性は低いということだ。
・リポートでは「リスクもどき」に入れられた。日本と中国の関係については、岸田が 11月に習近平国家主席と会談し、2024 年の関係安定に向け成果を得た。
・とはいえ、1 月13 日に台湾総統選が行われ、独立派の頼清徳候補が当選すれば、対立が激化するだろう。この選挙は、米大統領選に次いで日本が最も関心を寄せる選挙だ。
・リポートにあるとおり、頼は「米国の危険な『友人』」の一人であり(残り 2 人はウォロディミル・ゼレンスキー大統領とベンヤミン・ネタニヤフ首相だ)、2024 年に拡大した紛争に日本を引きずり込む可能性がある。
・頼が勝利すれば、中国による台湾への経済的圧迫や軍事的威嚇が高まることは否定できない。
・しかし、たとえ頼が勝利し、他の課題(米国と中国がこの地域で軍事的に接近遭遇するなど)が生じたとしても、米中関係は比較的安定したままであろう。両国関係は徐々に悪化していくが、双方はその関係を慎重に管理していくだろう。
⚫ リポートは、現在進行中の世界的なインフレが、多くの国々にとって政治的・経済的な足かせであり続けると指摘している。
・かつて世界経済の悪化に対するセーフティーネットであった中国の成長が弱いままであるため、世界は低成長に見舞われるだろう。
・このリスクは、人口減少のためにすでに堅調な成長に苦労している日本経済にも大きな影響を与える。

(リスク No.8(インフレによる経済的逆風)の影響)
・インフレ率は他国に比べて比較的低いが、特に食料品やエネルギーの輸入コストが高いため、日本人は数十年ぶりの物価水準の上昇を目の当たりにしている。
⚫ インフレの悪化は、2023 年後半の岸田内閣の低支持率の一因となり、国民は岸田内閣
の経済政策に不満を高めた。
・日銀は利上げに踏み切る構えで、昨年すでにその方向へ歩み出した。
・しかしこの動きは、経済成長を抑制し、日本が抱える膨大な債務の返済を困難にする可能性があるため、政治的にも大きな影響を与えるだろう。
・防衛費増額など岸田が優先する他の支出にも影響が出るかもしれない。
・世界的な低成長が予想されるため、リスク No.8のタイトル(原文:No room for error=失敗は許されない)は、2024 年の日本の経済政策立案者の悩みを的確に表現している。

(リスク No.5(ならず者国家の枢軸)の影響)
⚫ 北朝鮮がロシアやその他のならず者国家と安全保障上の協力関係を構築しつつあることは、日本にとって重要な意味を持つ。
・北朝鮮のミサイル発射実験は、2022 年に記録的なペースで行われた後、2023 年には控えめとなった。
・しかし、リスク No.5の一員である北朝鮮とロシアとの連携は、日本にとって懸念材料だ。
・欧米諸国とともに厳しい経済制裁を加えた後、隣国ロシアは日本にとっても脅威となった。これに対してロシアは、日本周辺での軍事演習を強化している。
・ロシアの支援は北朝鮮の軍事力と偵察能力を高めると見られ、2024年の日本にとって歓迎できるものではない。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

その後の動きも加味して、ネット記事の内容を以下にまとめてみました。

(概要)
(リスク No.1(米国の敵は米国)の影響)
・今年11月に行われるアメリカの大統領選挙では、トランプ前大統領の再選が有力視されている
・トランプ前大統領の第2次政権の意向は貿易赤字を嫌う、日本の防衛費を引き揚げるといったことから圧力が強まることが見込まれる
・一方、こうした第2次政権に対して、安倍前総理のようにトランプ前大統領に対して、うまく立ち回れる日本の総理はあまり期待出来ない

(リスク No.10(分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク )の影響)
・日本は米国に対する最大の直接投資国であり、米国を拠点とする日本の製造企業は、50 万人以上の米国人労働者を雇用しているので、リスク No.10は、日本にとって非常に重いものとなる
・日本企業は米国の国内政治の対立に巻き込まれる恐れがある

(リスク No.6(回復しない中国)の影響)
・米国に次いで、日本の経済と安全保障に影響力を持つのが中国で、日本経済の活力は中国経済にかかっている。従って、リスク No.6は日本にとって大きな意味を持つ
・中国が世界経済成長の主要な牽引役でなくなることから副次的に、日本の輸出に対する中国の需要は 2024 年も弱いままとなる
・1 月13 日に台湾総統選が行われ、独立派の頼清徳候補が当選したので、中国と台湾の対立が激化し、中国による台湾への経済的圧迫や軍事的威嚇が高まることは否定できない
・かつて世界経済の悪化に対するセーフティーネットであった中国の成長が弱いままであるため、世界は低成長に見舞われるだろう
・このリスクは、人口減少のためにすでに堅調な成長に苦労している日本経済にも大きな影響を与える

(リスク No.8(インフレによる経済的逆風)の影響)
・インフレ率は他国に比べて比較的低いが、特に食料品やエネルギーの輸入コストが高いため、日本人は数十年ぶりの物価水準の上昇を目の当たりにしている
・日銀は利上げに踏み切る構えで、昨年すでにその方向へ歩み出したが、この動きは、経済成長を抑制し、日本が抱える膨大な債務の返済を困難にする可能性があるため、政治的にも大きな影響を与えるだろう
・防衛費増額など岸田が優先する他の支出にも影響が出るかもしれない

(リスク No.5(ならず者国家の枢軸)の影響)
・北朝鮮がロシアやその他のならず者国家と安全保障上の協力関係を構築しつつあることは、日本にとって重要な意味を持つ
・リスク No.5の一員である北朝鮮とロシアとの連携は、日本にとって懸念材料だ
・欧米諸国とともに厳しい経済制裁を加えた後、隣国ロシアは日本にとっても脅威となった。これに対してロシアは、日本周辺での軍事演習を強化している
・ロシアの支援は北朝鮮の軍事力と偵察能力を高めると見られ、2024年の日本にとって歓迎できるものではない

こうして見てくると、やはり世界の10大リスクの中でも、日本と経済や軍事の面で密接な関係のあるアメリカ、および経済の面で密接な関係のある中国の動きは日本への影響が大きいことが分かります。
しかも、トランプ前大統領の再選による第2次政権誕生の可能性が高いこと、および覇権主義的な習近平国家主席に対峙することは、どちらも一筋縄ではいかず、日本の政府、および企業にとって大変な試練となります。

では世界のリスクへの中長期的な対応策ですが、私は以下のように考えます。
・アメリカ、あるいは中国と“Win-Win”の成果が期待出来ることを見つけ、積極的に両国に働きかけ、少しでもより良い関係の維持に努める
・大なり小なり日本と同様の立場にあるEUと共闘して、アメリカ、あるいは中国の動きに対峙すること
・より多くの途上国への積極的な経済支援を通じて、国連での日本の対場を有利にすること

 
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