1月10日(水)付けネット記事(こちらを参照)で今年の世界の10大リスクについて取り上げていたので内容の一部をご紹介します。
・米国の調査会社ユーラシア・グループは1月8日、2024年の「世界の10大リスク」を発表 した(添付資料表参照)。
・同社は、著名な国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務め、1998年以来、年初に当該年の世界政治や経済に深刻な影響を及ぼす地政学リスクを予測している。
・1位には、大統領選挙を控えて米国の政治的分断が一層深まるとして「米国の敵は米国」が挙げられた。2位はイスラエルとハマスの衝突が続く「瀬戸際に立つ中東」、3位はロシアによる「ウクライナ分割」だった。
(1位の「米国の敵は米国」について)
・米国の分極化と党派対立は歴史的な高水準にあり、「政治システムの機能不全は先進工業民主主義国の中で最もひどい」とし、大統領選挙がこの政治的分断を悪化させると指摘した。
・また、現在、2大政党である民主党と共和党の大統領候補者として有力視されているジョー・バイデン大統領、ドナルド・トランプ前大統領はそれぞれ、高齢であること、訴追を受けていることなどから「大統領に不適格」とし、米国民の大多数はいずれの候補者も大統領に望んでいない、と痛烈に批判した。
(2位の「瀬戸際に立つ中東」について)
・イスラエルとハマスの衝突は今のところガザに封じ込められているとしつつも、イスラエルによるレバノンのイスラム教シーア派政治・武装組織ヒズボラへの攻撃などによって今後エスカレートしていくリスクがあると指摘した(注1)。
・また、イエメンの武装組織フーシ派の紅海での商船への攻撃が(2023年12月25日記事参照)、貨物保険料の高騰、サプライチェーンの混乱、原油価格の上昇などにつながり、米国を含む世界経済にとってのリスクになるとした。
(3位の「ウクライナ分割」について)
・ロシアが現在占領しているクリミア半島に加え、ドネツク、ルガンスクなどウクライナの領土の約18%の支配権を維持し、ウクライナは2024年に事実上分割される、と指摘した(注2)。
・またウクライナは、現時点でも米国からの支援低下によって打撃を受けている上、米国民の戦争への賛否が分かれていること、共和党議員の多くが追加援助に反対していることなどから、2024年以降は、米国のウクライナへの大型支援が難しいとの見通しを示した。
以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。
また、1月9日(火)放送の「国際報道2024」(NHKBS)でも同様のテーマについて取り上げていたので内容の一部をご紹介します。(こちらを参照)
・「ユーラシア・グループ」は、「ウクライナの領土が事実上、ロシアに割譲される」という見方を明らかにした
-ロシアが戦場での主導権を掌握している
-欧米によるウクライナ支援が停滞している
-兵士の人数やミサイル・砲弾の数でロシアが物的に優位に立っている
-こうした問題を解決できなければ、ウクライナは早ければ来年にも戦争に敗北する可能性があると指摘した
・さらに、「ユーラシア・グループ」は、今回の10大リスクの中で「アメリカの危険な“友人”」として以下の3人をあげ、3人の行動次第では、アメリカが戦闘に巻き込まれるリスクがあるとした
-ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦況が悪化すればそれを好転させるために、ロシア国内への攻撃を増やし、アメリカを巻き込もうと考えるリスクがある
-イスラエルのネタニヤフ首相は、首相の座を維持し収監を逃れるために、ヒズボラなどへの攻撃を拡大し、アメリカを広範な中東戦争に巻き込むリスクがある
-さらに、台湾の頼副総統が今週末の総統選挙で勝利すれば、台湾海峡の不安定な現状がすぐに試練を迎える可能性があるというリスクも指摘している
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
こうしてみてくると、2024年の世界の10大リスクの上位の1位「米国の敵は米国」、2位「瀬戸際に立つ中東」、3位「ウクライナ分割」は、世界秩序への影響力を弱めるものの、世界第一の大国、アメリカの国内の更なる2極化、イスラエルとハマスの衝突、およびイスラエルによるレバノンのイスラム教シーア派政治・武装組織ヒズボラへの攻撃などのエスカレート、そして、ロシアによるウクライナの分割といったリスクがあります。
こうした状況は、イスラエル、あるいはウクライナという国の意向によって戦況の拡大をもたらし、アメリカの戦闘参入をもたらす可能性があります。
そうした中、台湾有事は10大リスクに入っていませんが、こうした間隙をぬって、台湾の頼副総統が総統選挙で勝利した現在、中国が台湾進攻を実施に移す可能性が高まっています。
なお、こちらには以下の記述があります。
ウクライナ、イスラエル、台湾は米国の主要な同盟国であり続けるだろう。しかし、これらの国の指導者たちは、国益を追求し、時には個人的な利益も追求し、米国を拡大する紛争に巻き込む可能性があるのだ。
このように現在の国際社会は沢山のリスクを抱えており、まるで何次にもわたる方程式の解を解くようにとても複雑な様相を呈しているのです。
ですから、こうした状況においては、誰が各国の指導者になっても、こうしたリスクの適正な対応策を検討することはとても困難です。
それでも、各国の指導者には、“自国ファースト”ではなく、世界規模での最適解を求めて、国内外を問わず、それぞれの政策に取り組んでいただきたいと願います。
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