プロジェクト管理と日常生活 No.827 『国内初「レベル４」ドローンの試験配送、および課題！』で物流問題の課題についてお伝えしました。
そうした中、昨年９月４日（月）放送の「ワールドビジネスサテライト」（テレビ東京）で人手不足の建設業界の切り札、３Ⅾプリンターについて取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。
建設業界では来年４月から時間外労働の上限規制が適用されることで人手不足に拍車がかかると予想されています。
この、いわゆる建設業界の２０２４年問題が迫る中、今、建築各社が力を入れているのが３Ⅾプリンターの活用です。
５５０万円で購入することが出来る３Ⅾプリンター住宅も登場するなど、建設の新たな可能性として広がる３Ⅾプリンターの最前線を取材しました。
大手ゼネコンの清水建設が９月４日に公開した施設、「温故創新の森 ノヴァーレ」（東京・江東区）。
清水建設の鳥越一平さんは次のようにおっしゃっています。
「（この施設について、）こちらは１分の１のモックアップ（模型）になります。」
「工事現場の、その場その場の瞬間を切り取ったかたちで再現しております。」
清水建設が約５００億円かけて造った、イノベーションと人材育成などの拠点「ノヴァーレ」を建設。
こちらでは建設中の建物やマンションの内装などを実物大で再現。
床の構造や配管などを社員が学ぶことが出来ます。
更に、まだ建設途中だという、こちらの空間について、鳥越さんは次のようにおっしゃっています。
「こちらは建設現場で働くロボットを実証実験していくスペースになります。」
「自動搬送ロボットであったり、床を工事する施工ロボットであったり、更には人の代わりに天井を施工するロボットなどが、この中で実証を行う予定です。」
「（新たな建設ロボットや材料開発など、最新技術の研究施設、その一画に置かれていたものについて、）３Ｄプリンターとなっておりまして、実際に建物の壁を印刷することが出来るようになっております。」
壁や柱といった構造物を自動で造る建設用の３Ｄプリンター。
こちら、高さ約５ｍ、幅２０ｍの壁は３Ｄプリンターによって造られたのです。
また、こちらの駐車場の屋根も３Ｄプリンターによるもの。
強度が高い専用のコンクリートが使用されています。
清水建設の井上和幸社長は次のようにおっしゃっています。
「３Ｄプリンターでいろいろなかたちのものを自由に非常に幅が広がってきたなというふうに思っておりますので、その辺はこれから、もっともっと研究して用途を広げていきたいなというふうに思っております。」
就業者の数がピークの時と比べ、２００万人以上減少するなど、人手不足が深刻な建設業界、その課題解決のカギを握ると言われる３Ｄプリンター建築の研究が企業の間で急加速しています。
こちらは今年４月に大手ゼネコンの大林組が造った「３ｄｐｏｄ」と名付けられた建物。
セメント系材料を用いた３Ｄプリンターによる建築物として、国内で初めて建築基準法に基づく、国土交通大臣の認証を取得しました。
大林組 技術本部の坂上肇さんは次のようにおっしゃっています。
「鉄筋や鉄骨を使わずに建築物を造るということで、特殊な曲面状のかたちとか、そういったものを作ることが出来る。」
作製の様子を見てみると、建物が立っている場所に３Ｄプリンターを設置、高さが低い部分から順番に一段ずつコンクリートの層を積み上げていく様子が分かります。
従来の工法では難しかった曲線や凹凸など、複雑なデザインでも表現出来るのが特徴です。
また、建設にかかる期間を従来の半分程度に抑えることが出来、職人の人数や労働時間も減らせるといいます。
坂上さんは次のようにおっしゃっています。
「人手をかけずに建物や土木構造物を造る技術、そういったものが求められていますので、これからは、この３Ｄプリント技術をお客様に積極的に提案をしていきたいと。」
更に３Ｄプリンターの活用は私たちにとって身近な分野にも広がっています。
スタートアップ企業のセレンディクス株式会社（愛知・小牧市）が開発したのは個人向けの住宅です。（こちらを参照）
広さ５０�屐�夫婦の活用を想定したこの家、価格は５５０万円。
セレンディクスの飯田國大ＣＯＯは次のようにおっしゃっています。
「工場でロボット化したものを最後、現場で職人の方が短時間で造ることを徹底することによって、大幅にコストを下げることが出来ます。」
大型の３Ｄプリンターを使うことで、建設期間は壁の出力に１週間と現場での組み立てに２日ほどだけ。
通常、住宅建設には半年ほどかかるため、大幅な建設コストの削減が可能で、人手も約９７％ほど減らせるのだといいます。
８月末から６棟限定で販売したところ、既に完売。
高齢を理由に賃貸契約を結ぶのが難しい６０代以上の世代などから問い合わせが殺到しているといいます。
３Ｄプリンターで造った家となると、耐震性などの強度が心配になりますが、飯田ＣＯＯは次のようにおっしゃっています。
「日本は地震国ですから、耐震性に関しては、阪神淡路大震災（クラスの地震）に耐え得るように設計しております。」
モルタルと鉄骨・鉄筋で造られていますが、阪神淡路大震災並みの耐震性と約７０年の耐久性があるのだといいます。
今後の目標について、飯田ＣＯＯは次のようにおっしゃっています。
「私たちは「住宅産業の完全ロボット化」を目指しています。」
「私たちとしては、２０２６年までに、まずは３０００棟を超えるところまで持っていきたいと考えております。」
この３Ｄプリンター、建設現場で今後広がっていく可能性について、デザイン性は勿論ですが、具体的には型枠や鉄筋コンクリートを造っていくような人の手を代替するのが可能になっていくのではないかといいます。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組の内容を以下にまとめてみました。
（建築業界の課題解決のカギ、３Ｄプリンター）
・就業者の数がピークの時と比べ、２００万人以上減少するなど、人手不足が深刻な建設業界、その課題解決のカギを握ると言われる３Ｄプリンター建築の研究が企業の間で急加速している
（清水建設の事例）
・約５００億円かけて造った、イノベーションと人材育成などの拠点「ノヴァーレ」では建設中の建物やマンションの内装などを実物大で再現している
・こちらでは壁や柱といった構造物が３Ｄプリンターにより自動で造られている
・強度が高い専用のコンクリートが使用されている
・３Ｄプリンターでいろいろなかたちのものを自由に非常に幅が広がってきており、これから更に研究して用途を広げていきたいという
・一方、「ノヴァーレ」には建設現場で働くロボットを実証実験していくスペースもあり、今後、自動搬送ロボットなどの実証を行う予定である
（大林組の事例）
・「３ｄｐｏｄ」と名付けられた建物では、セメント系材料を用いた３Ｄプリンターによる建築物として、国内で初めて建築基準法に基づく、国土交通大臣の認証を取得した
・鉄筋や鉄骨を使わないので特殊な曲面状の建物も建てることが出来る
-従来の工法では難しかった曲線や凹凸など、複雑なデザインでも表現出来る
・建物が建っている場所に３Ｄプリンターを設置、高さが低い部分から順番に一段ずつコンクリートの層を積み上げて建てていく
・建設にかかる期間を従来の半分程度に抑えることが出来、職人の人数や労働時間も減らせる
（スタートアップ、セレンディクスの事例）
・個人向けの住宅を開発した
-広さ５０�屐�夫婦の活用を想定したこの家、価格は５５０万円である
-工場でロボット化したものを現場で職人が短時間で造ることを徹底することによって大幅なコスト削減が図られる
-大型の３Ｄプリンターを使うことで建設期間は壁の出力に１週間と現場での組み立てに２日ほどだけである
-通常、住宅建設には半年ほどかかるため、大幅な建設コストの削減が可能で、人手も約９７％ほど減らせるという
-８月末から６棟限定で販売したところ、完売した
・高齢を理由に賃貸契約を結ぶのが難しい６０代以上の世代などから問い合わせが殺到している
・モルタルと鉄骨・鉄筋で造られており、阪神淡路大震災並みの耐震性と約７０年の耐久性がある
・「住宅産業の完全ロボット化」を目指している
ということで、中でもセレンディクスの事例は注目に値します。
３Ｄプリンターの活用により広さ５０�屬侶�物が１０日ほどで完成し、しかも価格は５５０万円というのです。
更に阪神淡路大震災並みの耐震性と約７０年の耐久性があり、人手も約９７％ほど減らせるというのですから、まさに人手不足の建設業界 の課題解決のトップランナーと言えます。
更に３Ｄプリンターの特徴として、どんな複雑なかたちでも簡単に造ることが出来ますから、用途の可能性は無限にあると言えます。
建物に限っても、将来的には個性あふれる建物が百花繚乱で立ち並ぶ世の中になっているかもしれません。
ただし、建物には鉄骨・鉄筋が使用されているということなので、大林組のように鉄筋や鉄骨を使わない建物の建設が更なる課題と言えます。
そういう意味で、大林組はセメント系材料だけを用いた３Ｄプリンターによる建築物として、国内で初めて建築基準法に基づく、国土交通大臣の認証を取得していることから、こうした技術のフロントランナーと言えます。
ちなみに、３Ｄプリンターは１９８０年代にその基本的なアイデアが初めて提案され、技術が進歩してきて現在に至っています。（添付参照）
ですから、３Ｄプリンターのアイデアが生まれて４０年ほどで急速に開花し始めたということになります。
それにしても３Ｄプリンターのコンセプトを1980年代初頭に提案したChuck Hullは大変なアイデアマンだと思います。
添付）
３Ｄプリンターの誕生について
ChatGPT
３Ｄプリンターは、1980年代にその基本的なアイデアが初めて提案され、その後急速に発展しました。以下は、３Ｄプリンターの歴史についての主要なマイルストーンのいくつかです。
1.初期のアイデア（1980年代）: ３Ｄプリンターのコンセプトは、1980年代初頭にChuck Hullによって提案されました。彼は光硬化ポリマー（stereolithography）を使用して物体を層状に構築する方法を開発し、これが後の３Ｄプリンター技術の基礎となりました。
2.ステレオリソグラフィア（SLA）の発明（1986年）: Chuck Hullは、SLAと呼ばれる３Ｄプリンティング技術を発明し、1986年に特許を取得しました。この技術は、液体の光硬化樹脂をレーザー光で硬化させ、物体を層状に構築するものでした。
3.ファイリング法（FDM）の導入（1988年）: Scott Crumpは、熱可塑性材料を使用して物体を層状に構築するFused Deposition Modeling（FDM）と呼ばれる３Ｄプリンティング技術を開発し、1988年に特許を取得しました。これは、現在でも一般的に使用されている技術の一つです。
4.３D Systemsの設立（1986年）: Chuck Hullは３D Systemsという会社を設立し、３Ｄプリンターの商業化を進めました。この企業は、３Ｄプリンティング技術の先駆者として知られています。
5.オープンソースの登場（2000年代）: 2000年代に入ると、３Ｄプリンター技術がオープンソースとして広まり始めました。RepRapプロジェクトなど、コミュニティベースでの共同開発が行われ、３Ｄプリンターの普及が進みました。
6.産業用途への拡大（2010年代以降）: ３Ｄプリンターは、産業用途での採用が広がり、製造業や医療分野などで活用されています。特に、カスタムプロトタイプの製造や複雑なデザインの作成において、３Ｄプリンターは重要なツールとなっています。
これらの要因が組み合わさり、３Ｄプリンターは今日では幅広い産業や個人ユーザーによって利用されています。
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