2023年09月16日
プロジェクト管理と日常生活 No.835 『中国経済に低迷リスク』
8月14日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国経済の低迷リスクについて取り上げていたのでご紹介します。 

政府が8月14日に発表したのが海外経済の動向を分析した「世界経済の潮流 2023年 I」。
その中で言及されたのが「リスク要因は中国の不動産市場低迷による金融機関や地方政府の破綻」。
中国経済の低迷リスク。
中国では不動産最大手の碧桂園(へきけいえん)が販売不振を理由に約1兆円の最終赤字を計上すると発表(1〜6月期業績予想)、不動産市場の低迷があらためて意識されました。
また政府は米中貿易摩擦による影響などもリスク要因だと指摘しました。
この発表に先立ち、8月14日の東京市場で安川電機や日立建機、ソフトバンクGなど中国関連銘柄が下落、中国経済の先行き不安が日本にも影を落とし始めています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「ここへきて深刻になってきたのは、中国の地方政府が“打ち出の小槌”のように使っていた融資平台、プラットフォームと言われる仕組みなんですね。」
「融資平台は何なのかということなんですけど、要するに地方政府の隠れた借金をするための仕組みと言っていいと思うんですね。」
「つまり融資平台が中央政府の代わりに金融機関からお金を借りますでしょ。」
「その借りたお金を元手にして不動産やインフラ開発に充てていた。」
「そういう仕組みなんです。」
「(その融資平台の負債規模について、)IMFの試算によると債務残高は約1300兆円というからとんでもない規模なんです。」
「で、しかも問題は今の不動産関連のインフラ投資なんですけども不採算なものが多いんですよね。」
「しかもですよ、不動産価格が値下がりしてますでしょ。」
「要するに実情はまさに“火の車”ということになってるわけですよ。」
「そこで、どういうふうにしようかといいますと、中央政府は地方政府に対して融資平台の債務の中で約20兆円分は引き取りなさいということを言うようになるだろうと言われています。」
「(1300兆円のうち20兆円というと、)1.5%ですよね。」
「要するに、そのくらいの一種“飛ばし”ですよね。」
「“焼け石に水”なんですよ。」
「(そうなると融資平台が債務不履行というか、破綻することになるのかという問いに対して、)世界経済の潮流の中の「今後は融資平台のデフォルトが発生するか、その場合一部にとどまるか、全国に伝播するか(中略)注視する必要がある」という文章が重要なんですね。」
「内閣府が公式の文書の中で外国の政策運営についてデフォルトというようなストレートな表現を使うことは普通ありません。」
「そのくらい日本政府としても事態を重視しているということだと思います。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

また8月18日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でも同様のテーマ について取り上げていたのでご紹介します。 

中国の不動産大手、恒大集団は経営再建のさ中だったんですけれども、8月17日、アメリカで破産を申請しました。
ただ、経営難に陥る企業は他にも現れていて、不況が長引く中国の不動産市場ではバブル崩壊を懸念する声も上がっています。
この不況は日本にも広がるんでしょうか。

かつては世界トップレベルの売上げを誇った中国の不動産会社、中国恒大集団、8月17日ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用を申請しました。
2021年と2022年の決算を単純合算すると、5800億元、日本円で約11兆6000億円の最終赤字、負債総額は約48兆円(2022年末時点)に上ります。
破産申請を受け、中国の景気悪化の懸念から8月18日の東京株式市場では百貨店などインバウンド関連株が大きく下落しました。
中国恒大集団では「会社が未曽有の困難に直面している」と表明しています。
経営難が表面化したのは、一昨年、中国政府が不動産会社の財務規制を強化したことで資金繰りが悪化。
債務不履行、デフォルトに陥ったのです。
その後、経営の立て直しを目指す中での今回の破産申請。
中国経済に詳しい東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は次のようにおっしゃっています。
「海外のビジネスに関しては破産申請して、これ以上出血しないように止めるのが今回の全体の背景なんです。」

破産申請することでアメリカにある資産が強制的に差し押さえられるのを防ぐことが出来るといいます。
8月、経営再建について、債権者への説明会を開く予定の恒大集団は、資産を保全したうえで債権者との交渉を優位に進めたいとの考えがあると見られます。

経営危機に陥っているのは恒大集団だけではありません。
中国の不動産最大手、碧桂園、景気減速に伴い、マンション販売が不調に終わり、今年上半期の業績が約1兆円の赤字になるとの見通しを発表しました。
資金繰りの悪化から建設工事は中断、再開のめどは立っていないといいます。
北京市内にある碧桂園が今建設しているマンションの看板の前にはテントがあり、物件の保有者が抗議のために集まっています。
テントの前には真っ赤な文字で「物件購入者の権利を守る」と書かれています。
既に3ヵ月以上わたり、この場所で抗議活動を続けているといいます。

こうした抗議活動は中国各地で起きています。
頭金として既に大金を投じた購入者たちの怒りが爆発しているのです。
ロイター通信によりますと碧桂園はドル建て社債2250万ドルの利息を8月6日の期限までに支払えなかったということで、今後30日間の猶予期限内に利払いが出来なければデフォルト(債務不履行)に陥ることになります。
こうした不動産大手の経営悪化が連鎖することで懸念が高まるのが価格上昇を続けてきた“不動産バブル”の崩壊です。
柯さんは次のようにおっしゃっています。
「恒大ショックは“氷山の一角”と見ていいと思います。」
「デフォルトが次から次へと出てくる可能性があって、30年前の日本よりも今回の中国のバブル崩壊のダメージの方がうんと大きいと思います。」

更に日本への影響も甚大だといいます。
「日本の経済と企業はいずれも中国の市場に依存しているがために実体経済へのインパクトが大きい。」
「中国経済の減速によって日本経済が再び息切れする心配をしておかなくてはいけない。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

以上、2つの番組を通して中国経済の低迷リスク、および日本経済への影響について以下にまとめてみました。
・中国経済の低迷リスクの背景として、一昨年、中国政府による不動産会社の財務規制の強化で不動産会社の資金繰りが悪化したことが指摘されている
・リスク要因
 -中国の不動産市場低迷による金融機関や地方政府の破綻
 -米中貿易摩擦による影響
・不動産最大手の碧桂園が販売不振を理由に約1兆円の最終赤字を計上すると発表(1〜6月期業績予想)した
 -資金繰りの悪化から建設工事は中断、再開のめどは立っていない
 -こうした抗議活動は中国各地で起きている
・不動産大手の恒大集団は経営再建のさ中だったが、8月17日、アメリカで破産を申請した
 -負債総額は約48兆円(2022年末時点)に上る
・経営難に陥る企業は他にも現れていて、不況が長引く中国の不動産市場ではバブル崩壊を懸念する声も上がっている
・今回の中国のバブル崩壊は30年前の日本のもダメージよりもうんと大きいと見られている
・融資平台(地方政府の隠れた借金をするための仕組み)の負債規模がIMFの試算によると債務残高は約1300兆円という
・しかも今の不動産関連のインフラ投資は不採算なものが多く、不動産価格が値下がりしている
・融資平台のデフォルトが発生する可能性が高まっている
・リスク対応策
-中央政府は地方政府に対して融資平台の債務の中で約20兆円分は引き取るように要請することになると言われているが、“焼け石に水”である
・日本経済への影響
 -恒大集団によるアメリカでの破産申請を受け、中国の景気悪化の懸念から8月18日の東京株式市場で中国関連銘柄が下落した
 -日本経済と企業はいずれも中国の市場に大きく依存しているので日本への影響も甚大である
 -融資平台がデフォルトする場合、どのようなかたちで発生するか、日本政府は事態を重視している
 -中国経済の減速によって日本経済が再び息切れしないように対策を講じることが求められる

なお、中国経済の低迷リスクとして上記以外にも以下の要因があげられます。
・少子高齢化の進行
・若者の失業率の20%超え(参照:アイデアよもやま話 No.5673 中国の若者の失業率が過去最悪の20%超え!
・習近平政権は“まず中国共産党ありき”という方針から、あいまいな法律を盾に状況に応じて習近平政権にとって都合のいいように解釈して、突然政策変更がなされること
 -中国への進出企業は常にあいまいな法律の解釈の適用や政策変更に対峙することが求められること

ということで、日本企業に限らず、中国に進出している企業は、中長期的にみて中国に比べてこうしたリスクの少ないインドや東南アジアなどへのシフトが見込まれます。

 
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